先月25日午後、英国ロンドン市内のトラファルガー広場近くにあるスターバックスを訪れた。30代のある女性が1杯のコーヒーを受け取ると、窓際の席に座ってかばんから1冊の本を取り出した。経済誌の「ハーバード・ビジネス・レビュー」だった。女性は記者に「最近は社会科学関連の本や雑誌、小説などを月に4冊ほど読みます」と話してくれた。しばらくすると別の席に20代の男性が座り、ヘミングウェーの小説を読み始めた。..
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先月25日午後、英国ロンドン市内のトラファルガー広場近くにあるスターバックスを訪れた。30代のある女性が1杯のコーヒーを受け取ると、窓際の席に座ってかばんから1冊の本を取り出した。経済誌の「ハーバード・ビジネス・レビュー」だった。女性は記者に「最近は社会科学関連の本や雑誌、小説などを月に4冊ほど読みます」と話してくれた。しばらくすると別の席に20代の男性が座り、ヘミングウェーの小説を読み始めた。スターバックスの店員によると、客のおよそ3分の1はコーヒーを飲みながら読書をするそうだ。
同じ時間、ソウル都心のスターバックス武橋洞店には99人の客がいた。そのうち25人はスマートフォンをいじり、8人はノートパソコンで何かをしていた。20代とみられる男性が1人本を読んでいたが、よく見るとそれは漫画だった。
大韓民国が本を読まない国に変わりつつある。統計庁が昨年発表した「生活時間調査・2014年度版」によると、韓国人の1日平均の読書時間は6分で、本を1日10分以上読む人の割合は全体のわずか10%だった。昨年、韓国国内における成人の読書率は65%だったが、同じ調査が始まった1994年は86.8%だった。また当時は1年に本を1冊も読まない成人は10人に1人だったが、今はこれが10人に3-4人にまで増えている。国際的な世論調査機関「NOPワールド」が世界30カ国の3万人を対象に「国民1人当たりの1週間の読書時間」を調査(2005年)したところ、韓国は3時間6分で最も短かった。韓国で本を読まない実情から考えると、今同じ調査をしても韓国はおそらく最下位にランクされるだろう。
この国の将来を支える子供たちはどうだろうか。経済協力開発機構(OECD)が行っている学習到達度調査(PISA)=2009=によると、韓国の児童生徒は読解部門で2位だったが、教科書や学習参考書を除く読書量では16位だった。児童生徒の38.5%は勉強以外では1冊も本を読まないのだ。この数値は2009年のものだが、2000年に比べると本を読まない割合は8%も多くなっている。読書量だけを見れば、韓国は大人も子供も間違いなく本を読まなくなっているのだ。
本を読まなくなることは、創造性が求められる知識基盤の競争社会においては個人と国家の双方にとって致命的な問題だ。韓国経済研究院の報告書『読書の経済的影響』を見ると、ある国の年平均読書率(1年に本を1冊以上読む割合)は将来の成長率やグローバルな競争力に直結することが分かる。つまり読書率が高い国ほど、世界経済フォーラム(WEF)の「グローバル競争力指数」「経済的革新性指数」「グローバル起業家精神指数」のいずれにおいても高くなっているのだ。
現在、先進国では先を争って「読書革命」に乗り出している。米国は大統領が直接子供たちに本を読み聞かせ、英国では全国の子供たちに本をプレゼントする「ブックスタート運動」が広まっている。フィンランドでは移動図書館サービスが行われているが、これは本の方から人間を訪ねてくるわけだ。
アン・ソクペ記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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