「先生、質問があります。『ホウキ』って何ですか?」
これは、ソウル市内の私立大学史学科で教えているA教授が数日前、新入生オリエンテーションで学生と話していたときに受けた質問だ。「蜂起(ほうき)」とは「虫のハチ(蜂)」に「起こる」と書いて、「ハチの群れのように大勢の人々が一斉に反乱などの行動を起こすこと」という意味だ。「歴史学科に志願しておきながらそんなことも知らないのか」と注意しようとしたが、周..
続き読む
「先生、質問があります。『ホウキ』って何ですか?」
これは、ソウル市内の私立大学史学科で教えているA教授が数日前、新入生オリエンテーションで学生と話していたときに受けた質問だ。「蜂起(ほうき)」とは「虫のハチ(蜂)」に「起こる」と書いて、「ハチの群れのように大勢の人々が一斉に反乱などの行動を起こすこと」という意味だ。「歴史学科に志願しておきながらそんなことも知らないのか」と注意しようとしたが、周りの学生たちもみんな分かっていなさそうな顔をしていた。
■漢字知らず歴史学専攻する大学生
学生がよく分かっていない歴史用語はこれにとどまらない。朝鮮王朝時代、学識があり官僚を輩出するソンビという階層が受けた政治的迫害を意味する「士禍」、志を同じくする人々が集まった団体を意味する「朋党(ほうとう)」、西洋勢力が起こした事変を意味する「洋擾(ようじょう)」…。深刻な例では、戦争で大勝したことを意味する「大捷(たいしょう)」という言葉を、単に大きな戦争を意味する「大戦」と同じだと勘違いしている学生も多かった。
その単語を構成している漢字を知っていればすぐに意味が分かるはずなのに、教科書にはハングル文字だけが書かれているため、意味も分からないまま丸暗記に精を出していたというわけだ。A教授は「だからといって、戊午(ぼご)士禍を『戊午年(1494年)にソンビが迫害された事件」、丙寅(へいいん)洋擾を「丙寅年(1866年)にフランスが朝鮮に侵攻してきて起こった戦争」のようにいちいち解釈して話すわけにはいかない」と話した。
■意味の解釈できず英単語のように丸暗記
歴史科目だけではない。数学でも「等号」や「帯分数」という用語を初めて習うとき、漢字も一緒に習って「互いに等しいことを示す符号」「整数が分数を帯びているもの」という意味であることを知れば、はるかに理解しやすいはずだ、と学者たちは指摘する。
理科も漢字が分かれば、両生類は「陸地でも水の中でも生息できる生き物」、齧歯(げっし)類は「歯で物を齧(かじ)る生き物」、樹枝状細胞の「樹枝状」は「木の枝の形」の意味だとすぐに理解できる。だが、漢字を知らなければ単語を逐一丸暗記しなければならない。
全国漢字教育推進総連合会の資料によると、高校教科書の索引に出てくる用語中、漢字語の割合は韓国史96.5%、社会92.7%、生物87.2%、物理76.2%、化学64.5%だったという。中学校の教科書では理科76.2%、数学81.1%、道徳91.4%だった。
高麗大学漢文学科のキム・オンジョン教授は「漢字を漢文の授業だけで教えている現行の教育課程では、全科目の教科書で語彙(ごい)のほとんどを占める漢字語を、英単語を覚えるのと同様、表音文字と意味を結び付けて覚えるしかない」と話す(アルファベットもハングルも表音文字であるため、文字を見て読むことはできるが、意味までは分からない)。仁済大学のチン・テハ碩座(せきざ)教授(寄付金によって研究活動を行えるよう大学の指定を受けた教授)は「そのほとんどが漢字語からなる知識用語を、ハングルで表記して学習するだけでは、耳学問による聞きかじりの知識になってしまう。その結果、話すときも自信が持てないし、文章を書いても正確さに欠ける」と指摘した。
■国語辞典を引くと余計に分かりにくい?
「よく分からない単語は辞書を引けばいいじゃないか」という一般的な意見に対しても「現在出版されている辞書を見ても、余計に混乱することが多い」という反論が聞こえてくる。成均館大学中国文学科のチョ・グァンジン教授は「新しい単語が出るたびに国語辞典を引く学生でも、辞書を見るともっと分からなくなることが多い」と語った。
例えば、地理の授業に出てくる「海溢(かいいつ)」(津波の意)という言葉の意味を国立国語院の「標準国語大辞典」で引くと、「海底の地殻変動や海上の気象の変化により突然、海水が大きく波立ち、陸地に流れ込むこと。またはそのような現象」となっている。辞書の説明を読むよりも、「海溢」という漢字の意味が「海が溢(あふ)れる」だという基本的な情報を知っている方が意味が理解しやすいことが分かる。
また、数学の教科書に掲載されている「楕円(だえん)」という単語を辞書で引くと、「平面上の二つの定点からの距離の和が常に一定な点の軌跡。定点と定直線からの距離の比が一定な点の軌跡で、この2定点を楕円の焦点と言い、定直線を準線と言う」と、まるで暗号のような説明になっている。しかし、「楕円」の「楕」が「細長い円」という意味だと知っていれば簡単だ。結局、漢字語の意味をきちんと教わっていないために遠回りしてやっとのことで理解に至るのだ。
兪碩在(ユ・ソクチェ)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
Copyright (c) Chosunonline.com