【写真】鄭亨植・憲法裁裁判官

 8人の憲法裁判官は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領を罷免する意見を「全員一致」でまとめたが、結論に至るまでには難航もあったという。

 裁判官らは弁論終結以降の38日間に数回の評議を行ったが、意見差が埋まらず激しい議論を行ったという。宣告直前まで結論に至らないところだったが、かろうじて枠組み合意がなされたという。憲法裁は1日に結論を出し、直ちに宣告日を公表した。

【表】数字で見る尹錫悦大統領の弾劾審判

 裁判官らは政治的な傾向に関係なく一致した結論を出した。保守系の鄭亨植(チョン・ヒョンシク)、趙漢暢(チョ・ハンチャン)の両裁判官はもちろん、韓悳洙(ハン・ドクス)首相の弾劾審判で保守寄りの意見を出した金福馨(キム・ボクヒョン)裁判官も尹前大統領が重大な憲法・法律違反を犯したと判断した。決定文は裁判長を務めた鄭亨植裁判官が主導して作成した。裁判官8人のうち唯一尹前大統領が直接指名・任命した裁判官だ。

 ただし手続き的側面では裁判官ごとに見解の違いが明らかになった。結論には同意するが理由を補う際に付ける「補充意見」が3件出た。いずれも手続きに関連する内容だった。

 李美善(イ・ミソン)、金炯枓(キム・ヒョンドゥ)両裁判官は弾劾審判の特殊性を考慮し、「伝聞法則」を緩和して適用すべきだという意見を出した。伝聞法則とは法廷外で話されたこと(伝聞証拠)を証拠として認めないというルールを指す。両裁判官は「大統領弾劾審判は国政の空白と混乱が非常に大きいので迅速に審理を行う必要性がある」とし、「伝聞法則を厳格に解釈すれば、憲法裁が多数の証人尋問を直接進行しなければならず、手続きが長期化する」と主張した。

 一方、金福馨、趙漢暢両裁判官は大統領弾劾審判の重大性、波及力、防御権保障を理由に伝聞法則を最大限厳格に適用すべきとの意見だった。両裁判官は「審判で直接証拠を調査し、意見陳述の機会を与えてこそ公正な裁判実現に寄与する」とし、検察の調書、国会の議事録などを証拠として使うことには限界があると指摘した。

 鄭亨植裁判官は、野党が脱法的に弾劾案を可決した点も指摘した。国会は昨年12月7日の常会の会期内に弾劾訴追案を採決できなかったため、1週間後の臨時会に改めて弾劾案を上程し可決させた。これについて、鄭亨植裁判官は「弾劾案を繰り返し発議することは『一事不再議』の原則を脱法的に避けて通り、その趣旨を没却し、政争の道具として悪用される恐れがある」と指摘した。

 元幹部裁判官は「保守系の裁判官は最後まで引っかかった手続き上の問題を補充意見として残したとみられる。分裂した世論をどうにか統合しようとする裁判官の意思が垣間見える結論だった」と述べた。

パク・ヘヨン記者、キム・ナヨン記者

ホーム TOP