▲慶尚南道山清郡で発生した大規模な山火事が4日目を迎えた3月24日午前、消防ヘリが徳川江で水を淡水化している。/NEWSIS

 専門家は韓国の山林の構造的問題として、①林道の著しい不足②ヘリなど山火事消火装備が不十分なこと③木の種類が燃えやすい針葉樹中心であること――の3点を挙げた。

【早わかり】華蔵山と大雲山の山火事 明暗分けた林道の有無

■消防車を投入するための林道の不足

 林道は消防車が入ることができる車道のことで、山火事に備えて整備される。林道のない山は消防車が登れないため、ヘリで消火作業を行わなければならないが、効率が低い。ヘリは安全上、夜間に飛行できない上、昼間も煙やほこりが濃ければ活動できない。このため、山林当局は今回の山火事の鎮圧に苦労した。ヘリを総動員して鎮火しても、夜間に再び延焼した。山林庁は「林道がある山は消防車が森の中に深く入り、夜でもホースで放水ができ、山火事の鎮火効率が5倍以上高い」とした。同庁関係者は「林道から1メートル離れるごとに、山火事の被害面積が1.55平方メートル増加するという調査結果もある」と話した。林道は続く山火事の延焼を阻止する「防火線」の役割も果たす。

 しかし、韓国は他国に比べて林道の数が少ない。韓国の山林1ヘクタール当たりの林道は4.1メートルで、ドイツ(54メートル)日本(24.1メートル)より短い。国土全体に占める山林の割合が韓国と似ているフィンランドは5.8メートルだ。山林庁によると、今回の山火事で大きな被害を受けた慶尚北道義城郡の防火林道は710メートルだった。安東市と慶尚南道には防火林道がない。

 今回山火事が発生した蔚山市蔚州郡は林道の有無によって明暗が分かれた。3月25日に山火事が起きた蔚州郡の華蔵山には幅3メートルの林道があり、昼だけでなく夜間も消火作業ができた。消防車92台と隊員1240人が徹夜で放水した。その結果、火災発生から20時間で火の勢いを抑えることができた。一方、同じ蔚州郡でも林道がない大雲山は22日の山火事発生後、鎮圧に至ったのは128時間後の28日のことだった。

 国立山林科学院は2020年、「山林特性を考慮した林道密度目標量算定研究」で「韓国の山には1ヘクタール当たり少なくとも6.8メートルの林道が必要だ」と指摘した。そのためには、林道1万6000キロを追加で整備しなければならない。問題は予算だ。山林庁は今年、防火林道91キロの整備に1574億ウォン(約160億円)がかかると試算した。

 山が私有地である場合、地権者の同意を得なければならず、環境団体の反対もクリアしなければならない。ソウル大グリーンバイオ科学技術研究院のカン・ホサン教授は「特別法をつくり、山火事が起きやすい地域は地権者の同意なしで林道を整備できるようにすべきだ」と指摘した。

■大量放水可能な大型ヘリの拡充を

 崇実サイバー大消防防災学科のパク・チェソン教授は「大規模な山火事を効果的に消すためには、一度に多くの水をまくことが重要だ」とし、「少しずつ水をまいても山火事の延焼を阻止するレベルにしかならない」と話した。5000リットル以上の水を積んで飛行できる大型ヘリが必要だとの指摘だ。

 現在、山林庁が保有している消火ヘリ50機のうち、容量が5000リットル以上の大型ヘリは7機だ。容量が1000~5000リットルの中型ヘリが32機で最も多く、11台は1000リットルも積み込めない。

 大型ヘリ7機は、米国製シコルスキーS-64(容量8000リットル)だ。ところが、2機は整備中であり、今回の山火事では5機しか投入できなかった。山林庁の主力ヘリであるロシア製のカモフ(容量3000リットル)は、29機のうち消火現場に投入されたのは16台だけだった。8機はロシア・ウクライナ戦争の影響で部品の供給が止まり、飛行できなくなっているという。

 今回は地方自治体や軍が保有しているヘリも動員したが、これらのヘリは容量がさらに少ない。このため、慶尚南道山清郡には在韓米軍の輸送ヘリ「ブラックホーク」「チヌーク」が投入された。

 山林庁は昨年公表した「2023年春季全国同時多発山火事白書」で「全国各地で発生する山火事を防ぐためには、容量5000リットル以上の大型ヘリが少なくとも24機必要だ」との判断を示した。全国の山林を12区域に分け、2機ずつは割り当てる計算だ。しかし、今年山林庁が追加導入したのは中型ヘリ2機にとどまる。

 山林当局関係者は「大型ヘリは1台当たりの価格が500億ウォン(約51億円)を超える上、発注しても導入まで3年以上かかる」と話した。例えば、シコルスキーS-64は1機505億ウォンに達する。大型ヘリの生産国も米国、ロシア、フランスなど少なく、物量不足問題が深刻だ。

 高玘演(コ・ギヨン)韓国山火事学会長は「大型ヘリを十分に導入するまで一時的に軍のヘリを改造して使う方策を考えるべきだ」と提言した。山火事の被害が多い米カリフォルニア州は、州防衛軍に「消防専門チーム」を設けて待機している。山火事が頻繁に発生する時期には、ブラックホークやチヌークを山火事消火用に使う。

 山火事の際に消防隊員として現場に投入される山火事監視員の専門性不足を指摘する声もある。毎年短期雇用で募集しているため、高齢者の働き口になっている。2022年現在で韓国の山火事監視員の平均年齢は61歳だ。又石大消防防災学科のコン・ハソン教授は「山火事監視員に対する専門教育を強化し、勤務形態を無期契約職に変えれば、志願する青年が増えるだろう」と述べた。

■針葉樹を減らし広葉樹を増やそう

 針葉樹は油脂成分である松やにを含むため、山火事が発生すると、火をたきつける役割をする。松やにの主な成分は,燃えやすい炭化水素「テルペン」だ。松やには電気が発明される前はたいまつの燃料として使われたほど引火性が高い。国立山林科学院の研究結果によると、松は広葉樹に比べて1.4倍熱く燃え、火が持続する時間も2.4倍長い。

 韓国は針葉樹林が広い。山林庁によると、全国の山林(629万8134ヘクタール)のうち針葉樹林が占める割合は36.9%で、広葉樹(31.8%)より高かった。韓国は硬い花崗岩地盤が多く、昔から松のような針葉樹がよく育った。針葉樹は広く根を張り、硬い土地でも育つのに対し、広葉樹は柔らかい土地で育つ。根が下に深く延びる性質があるためだ。

 今回大きな被害を受けた慶尚北道義城郡と安東市も地盤が固い地域で、針葉樹が多い。山林庁関係者は「慶尚北道の山林に行くと、土を3~4センチだけ掘っただけで硬い地盤が出てくるほどだ」と話した。安東市の針葉樹林の割合は52.9%で、全国平均より16ポイント高く、義城郡も針葉樹林が51.4%を占める。

 専門家は今回焼けた地域について、広葉樹に木の種類を変更する方策を探るべきだと指摘する。

 さらに、間伐作業も重要だと助言した。間伐は木を間引くことを指す。山林当局関係者は「山林が過度に密集すれば山火事が早く広がる。間伐をすれば雑木が減って消火作業も容易になる」と話した。山清郡の山火事では、木と茂みが絡み合い、消火に時間がかかったという。

 江原大山林科学部のチェ・ヒムン教授は「文化遺産が近隣にあるか、山火事の危険が高いところでは、間伐で木の間隔を空け、日本のように防火林を設けなければならない」と話した。日本では山火事の被害を減らすため、燃えにくい樹種を選んで防火林を設置する。防火林としては主にアベマキ、カシワ、ブナなどを多く用いる。針葉樹の間にこうした防火林を混ぜて植林しても効果があるという。

パク・チンソン記者、キム・ヨンウ記者、蔚山=キム・ジュヨン記者

ホーム TOP