萬物相
「科学技術の天才」を次々と輩出する中国【萬物相】
電気自動車(EV)世界最大手の中国企業、比亜迪(BYD)が5分間の充電で400㎞を走る革新的な充電システムを開発した。テスラよりも充電速度が2倍速い。同社創業者は「ガソリン車の給油時間と同じぐらい短くなった」と自慢した。ドイツのアーヘン工科大がテスラとBYDの電池を分解した結果、素材、形態、組み立て方式が全く異なっていたという。BYDの電池は安い素材を使っているにもかかわらず発熱が少ない半面、エネルギー密度が低いのが弱点だったが、既にそれも克服したものとみられる。
【写真】中国の「AI女神」羅福莉さん
3月初め、中国科学技術大がスーパーコンピューターより計算速度が1000兆倍速い105量子ビットの性能を持つ超伝導量子コンピューターを開発したというニュースが流れた。グーグルが昨年10月に公開した量子コンピュータよりも演算速度が100倍速い。米国が半導体製造装置メーカーASMLによる極端紫外線(EUV)露光装備の対中輸出を制限すると、中国清華大の研究チームは粒子加速器を活用し、極微細回路を刻むことができる新しい光源を模索している。このプロジェクトが成功すれば、中国独自の設備で最先端の半導体を作ることができるようになる。
中国の驚くべき科学技術の基盤は何か。秘訣は理工系の英才養成システムにある。小学校4年生で2000万人を対象に試験を実施し、0.5%をふるいにかけ、英才学校70校に送る。英才学校では4~5年間で数学、物理、化学を大学レベルまで教える。高校に進学する際、天才たちはもう一度ふるいにかけられる。北京大など6つの名門大学が天才1200人を「少年班」に選抜し、最高の頭脳を持つ学生に理工系科目を学ばせる。それ以外に北京大など名門大学が入学生のうち上位20%による「天才学科」を設置し、理工系人材を育成するプログラムもある。
低コスト、高性能AIモデルを開発し、世界を驚かせたディープシーク創業者の梁文鋒氏(40)は浙江大の天才学科出身だ。韓国科学技術院(KAIST)の金楨浩(キム・ジョンホ)教授は「ディープシークは既存の技術を組み合わせて数学的に最適化したモデルだ」と説明する。エヌビディアのGPUの代わりに優れた頭脳でやり遂げた成果というわけだ。ドローン世界最大手の深セン市大疆創新科技(DJI)、ヒューマノイドメーカーの杭州宇樹科技(ユニツリー・ロボティクス)、半導体設計企業の寒武紀(カンブリコン)の創業者も天才養成プログラムが輩出した人材だ。
梁文鋒氏はスタートアップがどうやって超エリート人材を集めたのかという質問に「最高の人材が最も惹かれるのは世の中で最も難しい問題を解決することだ」と答えた。秀才たちが難題に挑戦せずに安穏な医師の道を選択する韓国が「科学技術の天才」を次々と輩出する中国に敵うだろうか。お先真っ暗だ。
金洪秀(キム・ホンス)論説委員