コラム
理解できない国・韓国【コラム】
先日話をしたある外国人ジャーナリストによると、彼は本国の読者から「韓国のニュースは理解できない」という抗議が相次ぎ頭を抱えているという。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が12月3日夜に突然非常戒厳令を宣布したが、それを国務委員(閣僚)や与党議員はもちろん、安全保障上の同盟国である米国も事前に把握していなかったこと。また野党第1党である共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表が前科4犯で、今も五つの裁判が進行中だが、それでも次の大統領として最も有力視されていること。さらに野党が国務総理(首相)に続き「大統領権限代行の代行」である経済副首相に対する弾劾訴追案を提出したことなど。このジャーナリストはこれらを本国で詳細に報じたそうだ。すると読者から「これは本当のことか。記者は事実関係を理解せず書いたのではないか」と抗議を受けたという。ジャーナリストから「韓国には常識外れの事態が何度も起こり、私自身も理解できない」と聞いた時、これにドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトが提唱した「異化効果」を適用すると、理解できないことばかり起こる韓国の現実の別の側面が見えてくる。
今回、嶺南(慶尚南北道)で起こった山火事で犠牲になった消防隊員や消防ヘリのパイロットらはいずれも70歳前後の高齢者だった。実効性のある山火事対策や消火作業のためには、消防設備の老朽化や隊員の高齢化問題を早期に解決すべきとの声が以前から出ていたが、韓国政府も地方自治体もこれまで何か対策を進めてきたのだろうか。共に民主党は今年の予算案を独断で採決し、災害対策の予算を1兆ウォン(約1000億円)削減したが、その後京畿道で豪雪、務安で済州空港事故、嶺南で大規模な山火事などが相次いだ。共に民主党はこれらに少しでも責任を感じているのか。市民の命を奪ったソウル市内の陥没事故もそうだ。事故発生前から現場では地面に亀裂が生じていたが、なぜ直ちに対応しなかったのか理解できない。
国を守るため犠牲になった英霊の前でも与野党は分かれる。3月26日に開催された哨戒艦「天安」爆沈事件15周年の追悼式に与党・国民の力は執行部全員が出席したが、共に民主党執行部は所属議員約50人と共にソウル高等裁判所前に並んで李在明代表の裁判を見守った。共に民主党の第22代国会議員の中には天安爆沈を否定し陰謀論を主張して暴言を吐き、遺族らから激しく非難された人物も複数いる。爆発で破壊された天安を彼らが実際に目にしたのか疑問だし、また韓国海軍の名誉を必死で引きずり下ろそうとする理由も理解できない。
18年ぶりに見直された国民年金制度はMZ世代(1980-2010年ごろ生まれ)がより多く支払い、586世代(1960年代生まれで80年代の民主化闘争に関わった現在の50代)がより多く受け取る形に変わった。人口ピラミッドと逆の形になっていることもあり、若者たちは激しく反発しているが、政界はこれを「改革」と主張している。政府が昨年、医学部の定員増を最初に発表した時になぜ「2000人」としたか理解できないが、それを理由とする今年入学した医学部生による授業ボイコットには共感できない。所属事務所と裁判で争ったNewJeans(ニュージーンズ、現NJZ)が国会国政監査の証人となったこと、MBC放送気象担当だった故オ・ヨアンナさんに関する国会聴聞会が開かれなかったこと、オマーンとヨルダンに勝てなかったサッカー韓国代表の無気力と大韓サッカー協会の鄭夢奎(チョン・モンギュ)会長の4期連続会長就任、あまりにずさんだったセマングムでのジャンボリーで責任逃れをした全北自治道がソウルを抑え2036年のオリンピック開催候補地に選ばれたこと、戦闘機が民家に爆弾を落とした事故など…。これらについてはただ「理解できません」としか言いようがない。
共に民主党の李在明代表は公職選挙法違反の控訴審で無罪が宣告された。判決内容を何度もじっくり読んでみたが「政治家のうそは単なる意見表明に過ぎない」とする裁判長の解釈だけは全くもって理解の範囲外だ。この判事に担当してもらえず偽証罪で処罰を受けた政治家たちをなぐさめてやりたい。「ガリバー旅行記」の作家ジョナサン・スウィフトが「法とはクモの糸のようなもので、小さなハエはひっかかるが、スズメバチは破って通り過ぎる」と語ったように、170議席を持つ巨大野党のトップである李在明代表は控訴審を無罪で通過し、次の大統領選挙に向けて突き進んでいる。宗教裁判にかけられやむなく天動説を認めたものの 「それでも地球は回っている」と語ったガリレオのように、一介の新聞記者に過ぎない私はただ一人で「理解できない」と口にするしかない。
ヤン・ジヘ記者