▲グラフィック=イ・ジンヨン

 北朝鮮の指令を受け、韓国国内に地下組織をつくって活動した罪で起訴された「自主統一忠北同志会」のメンバー3人の実刑が13日、韓国大法院で確定した。2021年9月に起訴されて以来、3年6カ月を要した。

 国家保安法違反の罪などで起訴された忠北同志会委員長、S被告(51)は懲役2年、副委員長のY被告(54)、顧問のP被告(61)はそれぞれ懲役5年の刑が確定した。一審はS被告ら3人にいずれも懲役12年を言い渡したが、二審は犯罪団体組織罪を無罪と判断し、大幅に減刑された。大法院の判断も二審と変わらなかった。被告らが中国とカンボジアで北朝鮮工作員と会い、2万ドル(約296万円)の工作資金を受け取り、北朝鮮の指令で韓国の国内情勢を報告した点については有罪とされた。国会外交統一委員長の発言内容などを北朝鮮に伝えたとする国家保安法上のスパイ行為については、国家安全保障を害するほどの機密とは見なせないとの理由で無罪となった。

 文在寅(ムン・ジェイン)政権末期から北朝鮮に取り込まれて活動した韓国の国内組織が相次いで起訴されているが、大法院で有罪が確定したのは初めてだ。被告が使った「裁判遅延戦術」は他の国家保安法違反事件でも繰り返されている。「民主労総スパイ団事件」(水原)は二審の審理が行われており、「自主統一民衆前衛事件」(昌原)「ヒウッ・キヨク・ヒウッ事件」(済州)はまだ一審判決も出ていない。

■裁判官忌避申し立て5回で一審だけで2年5カ月

 S被告ら3人は、2017年から北朝鮮工作員の指令を受け、利敵団体を結成後、2万ドルの工作資金を受け取ったとして2021年に起訴された。検察は被告らが国家機密を探って収集し、北朝鮮工作員と指令文、報告文をやりとりしたとする罪も適用した。

 一審は昨年2月、「北朝鮮が被告らに随時指令を発し、被告らは北朝鮮を本社と呼び、規律違反者について北朝鮮に懲戒を求めるなど、指揮または命令、服従・統率の体系が整っている」とし、被告らにいずれも懲役12年の重い刑を言い渡した。一審は被告らが数回にわたって北朝鮮と接触し、工作資金を受け取った点、さまざまな情報を収集して北朝鮮に報告した点などを有罪とした。また、忠北同志会の結成が刑法が定める犯罪団体組織に当たるとし、その点も有罪と判断した。国家保安法事件で犯罪団体組織罪が認められたのは初めてだった。ただ、一審は「収集された情報が国家安全保障を害するほどの機密とは言えない」とし、国家保安法が定めるスパイ罪は無罪とし、忠北同志会を利敵団体と見なすこともできないと指摘した。

■二審「犯罪団体組織」無罪で大幅減刑

 ところが二審は昨年10月、S被告に懲役2年、残りの2人に懲役5年を言い渡した。一審で有罪とされた犯罪団体組織罪が逆転無罪となり、大幅に減刑された。二審は「忠北同志会が実質的に犯罪団体と見なせるほどの規模や体系を備えていたとは言えない」と指摘した。国家保安法が定めるスパイ罪については二審も無罪と判断した。大法院も「二審の判断に論理と経験の法則に違反し、自由心証主義の限界を逸脱したり法理を誤解したりした誤りはない」とした。

■裁判官忌避申し立て6回

 起訴以降、一審判決まで2年5カ月もかかったのは、被告らが「裁判遅延戦術」を駆使したためだ。S被告ら4人は一審だけで裁判官忌避申請を5回も提出した。被告人4人のうち3人は裁判所人事で裁判所が変わるたびに裁判官忌避を3回申請し、棄却されるや抗告と再抗告を繰り返した。残る1人は後から別途忌避申請を行う「分割」戦術も使った。裁判官忌避申請が出されると、大法院で最終判断が下されるまで裁判が中断される。被告らの一審は11カ月間ストップした。裁判が長引く間、身柄拘束状態で起訴された被告3人は保釈などで全員が釈放された。

 S被告らはそれ以外にも違憲法律審判申し立て、拘束執行停止申請、弁護人辞任などの方法で裁判を遅延させた。一審判決を2日後に控え、国連に第3国への亡命支援などを求めたが、認められなかった。

 S被告らは二審でも裁判官忌避申請を1回提出したが、大法院で最終的に棄却された。その過程で二審も3カ月間中断した。被告らと共に一審の審理を受けていた連絡係のP被告(54)は2023年10月に別途に提出した裁判官忌避申請に対する裁判所の判断が遅れ、裁判が分離された。 連絡係のP被告には昨年10月に懲役14年が言い渡され、現在二審が進行中だ。

 4人以降に起訴された「民主労総スパイ団」「自主統一民衆前衛」「ヒウッ・キヨク・ヒウッ」の各事件の被告らも同様の裁判遅延戦術を使っている。裁判官忌避申請、国民参加裁判申請などを繰り返す手法だ。起訴当時、拘束状態だった被告人全員が一審の審理途中で勾留期限満了などを理由に一時釈放された。

 法曹界は裁判所も裁判遅延の一因をつくったと指摘する。自主統一民衆前衛事件の場合、検察が2023年3月にメンバーをソウル中央地裁に起訴した後、2年間で正式な公判は2回しか開かれなかった。ソウル中央地裁は昨年4月、被告の求めを受け入れ、担当裁判所を昌原地裁に変更した。「集中審理が必要だ」との理由で被告の居住地に近い裁判所に事件を移管したわけだが、その後も争点・証拠の整理を行う公判前整理手続が4回開かれただけだ。裁判所忌避申請を大法院が審理中で一審裁判は止まっている。 ヒウッ・キヨク・ヒウッ事件も2023年4月に起訴されたが、1年11カ月にわたって一審の裁判が空転している。司法関係者は「裁判所は裁判遅延目的が明らかな被告人の申請を認めないか、早急に結論を出すべきだ」と話した。

兪鍾軒(ユ・ジョンホン)記者、イ・ミンジュン記者

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