▲イラスト=UTOIMAGE ▲イラスト=UTOIMAGE

 尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領弾劾審判事件の憲法裁判所判断決定を前に、韓国最大野党・共に民主党は崔相穆(チェ・サンモク)大統領権限代行を相手取り、「憲法裁判官候補者の馬恩赫(マ・ウンヒョク)氏を任命せよ」を連日要求している。共に民主党出身の禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長もこれに加勢している。

 共に民主党は「崔相穆代行が馬恩赫氏を任命しないのは違憲・違法だ」と主張し、その根拠に「馬恩赫氏の任命保留は国会権限の侵害だ」という憲法裁判所の決定を挙げている。つまり、憲法裁判所の決定に従えという圧力をかけているわけだが、憲法裁判所が違憲・憲法不合致との決定を下したのにもかかわらず、国会が該当の法律条項を放置している事例は少なくない。

 崔相穆代行は昨年12月31日に国会で選出された憲法裁判官候補の趙漢暢(チョ・ハンチャン)氏・鄭桂先(チョン・ゲソン)氏・馬銀赫氏のうち、馬恩赫氏については与野党の合意が確認できていないとして任命を保留した。それを受けて禹元植国会議長は憲法裁判所に権限争議審判を請求し、憲法裁判所は先月27日、馬恩赫氏の任命保留は違法だと判断した。

 共に民主党が崔相穆代行に対して馬恩赫氏を任命するよう圧力を強めたのは、今月8日に尹大統領が裁判所の拘束取り消し決定で釈放されて以降のことだ。政界と法曹界の一部から「尹大統領の釈放は憲法裁判所の弾劾審判にも影響を与える可能性がある」との見方が出ている中、「弾劾決定の定足数(裁判官6人以上の賛成)を満たすため、自分たちが推薦した馬恩赫氏を任命させ、尹大統領弾劾審理に投入しようとしているのではないか」との声もある。

 「憲法裁判所の判断に基づき馬恩赫氏を任命せよ」という野党の攻勢に対し、政界からは「国会が違憲・憲法不合致の決定に従わなかった事例は数え切れない」という声も上がっている。憲法裁判所は2019年4月、刑法に定められている「堕胎(人工妊娠中絶)罪」に対して憲法不合致決定を下し、国会の法改正期限を2020年12月と定めた。しかし、憲法裁判所が提示した立法期限から4年も過ぎているのにもかかわらず、関連法条項の改正は行われていない。

 また、2002年に憲法裁判所で憲法不合致決定が下された薬事法条項も20年以上改正されなかった。さらに、夜間の屋外デモを禁止した「集会およびデモに関する法律」の条項は09年に憲法裁判所が憲法不合致決定を下した。憲法裁判所は当時、10年6月30日までに法を改正するよう指示したが、15年間にわたり改正されていない。

 このように放置されている違憲性法律条項は35件(違憲18件、憲法不合致17件)に上る。政界の関係者は「共に民主党も批判と無関係ではないのに、馬恩赫氏の任命に関して『憲法裁判所の決定に従え』と言うのはつじつまが合っていないと思う」と言った。

 しかも、「共に民主党は憲法裁判所の決定趣旨に反する立法を推進している」という議論もある。同党は「『常任委員2人体制』で主要案件を議決して、放送通信委員会法などに違反した」として、李真淑(イ・ジンスク)放送通信委員長を弾劾訴追したが、憲法裁判所は今年1月に棄却決定を下した。ところが、共に民主党の李楨文(イ・ジョンムン)議員は先月、「常任委員2人体制」の放送通信委員会の議決権を事実上無力化する内容の放送法改正案を発議した。与党・国民の力は「憲法裁判所の判断を無視した荒唐無稽な法案だ」と批判している。

イ・ミンソク記者

ホーム TOP