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 ウクライナ軍に捕虜として捕らえられた北朝鮮軍兵士が朝鮮日報とのインタビューで語った派兵の実態と北朝鮮の現実はまさに凄惨(せいさん)としか言いようのないものだった。10年の服務期間、1回も親に会えず、しかも家族は派兵の事実さえ知らないという。軍では精神的、肉体的に苦しめられ、金正恩(キム・ジョンウン)総書記の治績用工事現場ではマイナス30度の酷寒の中で強制労働を強いられた。いつ死ぬか分からない戦場に送り込まれる際には「海外での訓練」「留学」などとだまされた。「捕虜(になること)は変質」と洗脳され、重傷であっても自爆用手りゅう弾を手にしていた。戦場では頭が吹き飛んだ北朝鮮軍兵士たちを何度も目にしたという。すでに北朝鮮軍兵士の半分近くが戦死し、あるいは障害を負っている。文字通り現世の地獄がまさに北朝鮮だ。

 派兵された1万人以上の北朝鮮軍兵士の誰もがこのような奴隷の立場に置かれている。捕虜の一人は「韓国に行きたい」と語ったが、これについて国連の北朝鮮人権特別報告官は「捕虜となった北朝鮮軍兵士を(北朝鮮に)送還すれば人権侵害となる危険性が高い」と指摘し、米国の元北朝鮮人権特使は「韓国で北朝鮮捕虜を収容するのが適切」と述べた。北朝鮮軍兵士は捕虜であっても憲法上は大韓民国の国民だ。韓国政府はもちろん、国際社会も北朝鮮軍の派兵問題に懸念を示している。ところが他国でもない韓国の多数党である共に民主党はこの問題で沈黙を続けている。

 韓国の情報機関である国家情報院が「北朝鮮軍がウクライナでの戦争に送り込まれた」と発表した直後、共に民主党は「北朝鮮が否定している。確実でない情報で危険な火遊びをするな」と批判し「証拠を出せ」とも言ってきた。米国も派兵を認めた際には「遠い地の他国の戦争になぜ口出しするのか」と抗議した。捕虜となった北朝鮮軍兵士を訊問するため国家情報院が担当者の派遣を検討すると、共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表は「拷問技術を伝えに行くのか」と抗議した。

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は北朝鮮の若者を弾よけとしてロシアの侵略戦争に送り込み、統治資金と韓国に対する攻撃兵器を手にしようとしている。北朝鮮は戦場でも「ウクライナのドローンは大韓民国軍の兵士が操縦している」と兵士らにうそを言い、敵対心を高めているという。これが遠い他国の戦場で起こっている現実だ。それでも韓国とは何の関係もないことと本当に信じているのなら、そんな人間は安全保障に影響を及ぼす政治や政策は絶対にやってはならない。

 北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長が「ビラ禁止法でも作れ」と語った際には、共に民主党は直ちにビラ禁止法を一方的に成立させた。しかしこの法律は後に違憲との決定が下された。北朝鮮人権法が制定されてから9年が過ぎたが、共に民主党は今も北朝鮮人権財団の理事を推薦していない。李在明代表は北朝鮮に賄賂を提供する目的で訪朝を試みた容疑で今も裁判を受けている。共に民主党は親北、親金正恩という泥沼から今も抜け出せていないのだ。

 奴隷のような形で戦場に送り込まれ、九死に一生を得て捕虜となった北朝鮮の若者と、彼らの口を通して伝えられる金氏王朝の惨状。共に民主党がこれらから顔を背けるのなら、なぜ、何のために政治をやるのか問いたださないわけにはいかない。李在明代表は突然「共に民主党は中道保守だ」「合理的かつ健全な保守の領域も、共に民主党がやる」と発言したが、これはまた一体どういう虚言なのか。

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