▲尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が昨年6月、「浦項の迎日湾沖に最大140億バレル規模の石油・ガスが埋蔵されている可能性が高い」と自ら発表した時の様子。写真=news 1 ▲尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が昨年6月、「浦項の迎日湾沖に最大140億バレル規模の石油・ガスが埋蔵されている可能性が高い」と自ら発表した時の様子。写真=news 1

 「大王クジラ(シロナガスクジラ)プロジェクト」と呼ばれる東海深海ガス田開発事業の第1回ボーリングの結果は失望すべきものだった。韓国政府は「ガスの兆候が一部あったことを確認したが、経済性を確保できる水準ではなかった」と発表した。政府は今回確保した試料を詳しく分析した上で、外国企業と協力して残り6つの有望構造で追加ボーリング作業を推進する考えだ。有望構造とは、石油・ガスが存在すると予想される地質構造のことだ。

 以前開発に成功した東海ガス田も11回目のボーリングの末に成功し、ノルウェーの北海油田は33回目のボーリングで油田を発見した。今回の第1回ボーリングの結果はある程度予想できたものだといえる。よって、その結果をめぐって成功だの失敗だのと言うのは性急すぎる。それにもかかわらず、既に「詐欺だ」という非難の声が上がっている。第1回ボーリングの結果だけで「詐欺だ」と言うなら、世界のほぼ全ての油田が詐欺だったことになる。

 こうなった最大の理由は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領がこのボーリングを政治問題化したからだ。韓国石油公社が物理探査資料を基に石油発見の可能性を期待してきた大王クジラプロジェクトは、同公社と韓国産業資源部(省に相当)の次元でじっくり進めればいいものだった。ところが昨年6月、尹大統領が突然、国民に対してサプライズで発表した。その発表内容も「最大140億バレル」「可能性が非常に高い」などと誇張されていた。その上、産業資源長官までもが「最大埋蔵量はサムスン電子の時価総額の5倍」とさらに盛った。だが実際のところは、油田があってもボーリング成功率が低いのが油田開発事業で、「可能性が高い」「時価総額」うんぬんは政治的レトリック(修辞)に近かった。すると、最大野党・共に民主党は「国会議員総選挙の敗北と支持率下落による局面を切り替えるための切り札だ」と批判した。事実、そうした面があると言わざるを得なかった。

 情けなくて嘆かわしいのは、このようにあらゆることが政治上の争いに帰結する国で何ができるのかということだ。これをやればあの党が反対し、あれをやればこの党が反対する。李明博(イ・ミョンバク)政権が海外資源開発を推進したものの、朴槿恵(パク・クンヘ)政権・文在寅(ムン・ジェイン)政権が突然、「積弊(前政権の弊害)」だとして断罪し、苦労して続けてきた資源開発プロジェクトがほとんど失敗に終わってきたという経緯がある。 その後、レアアース(希土類)の価格が高騰し、後々まで悔やまれた。

 資源開発はわずかな可能性に希望をかけ、多くの失敗を経てこそ実を結ぶ可能性がある分野だ。今の東海ボーリング事業も、ボーリング成功率は最大で20%程度ということで、少なくとも5つのボーリング孔を掘ることを前提に始めた事業だった。専門家らは、第1回ボーリングで確保した試料や地質データが今後のボーリング過程において不確実性を引き下げる情報として利用できる点などを挙げ、「無意味な失敗ではない」と話している。国家的事業は政治から切り離し、科学と経済論理だけで推進してほしいものだ。

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