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韓国でやったのと同じやり口…中国人スパイら、フィリピンの米軍基地でもドローンとスマホで情報収集

台湾人観光客に偽装した中国人5人が旧正月連休(1月25-30日)の直前、フィリピン西部のパラワン島でドローン(無人機)とスマートフォンを用いて軍事基地や海岸警備艇の写真を撮影した上、監視カメラまで設置していたことが分かり、フィリピンの捜査当局に検挙された。昨年は韓国でも、中国人らがドローンを用いて、釜山港に入港した米国の空母や韓国の情報機関である国家情報院(ソウル市瑞草区)を撮影したとして摘発され、スパイ法改正の必要性が提起されたが、それと同じことがフィリピンでも起きたというわけだ。
フィリピンは南シナ海のスプラトリー諸島(中国名:南沙諸島)の領有権を巡って2023年から中国と紛争中だ。フィリピン海軍はスプラトリー諸島内の「セカンド・トーマス礁」に座礁させた老朽軍艦の中に監視拠点を設置して領有権を主張している。パラワン島はこの拠点に物資を供給する海軍部隊やフィリピン軍西部司令部などがある軍事的要衝地だ。スプラトリー諸島から200キロほど離れている。
フィリピン当局は1月20日にも、フィリピン北部のルソン島付近の軍基地、発電所、警察署など各種のインフラ施設を偵察して3次元立体(3D)映像資料を収集した疑いで、中国人の鄧元清容疑者とフィリピン人2人を検挙したと発表した。中国がアジア・太平洋地域の至る所であらゆるスパイ行為を働いているという証拠が明らかになってきたのだ。
パラワン島での事件は、先月末にフィリピンのGMAニュースの報道によって初めて明らかになった。同メディアが報じた映像には、1人の中国人が海辺のリゾート地付近でフィリピンの海岸警備隊の船舶を撮影している姿が映っている。リゾート地に立ち並ぶヤシの木の間に監視カメラを設置する様子も捉えられた。メディアによると、ドローンを使ってパラワン島の海軍部隊や海岸警備隊の船舶、空軍基地、造船所なども撮影していたという。容疑者らはリゾート地に滞在している間、現地の住民らに「自分たちは台湾人観光客だ」と言い張っていたとのことだ。
住民からの通報を受けて捜査に乗り出したフィリピン国家捜査局(NBI)と軍当局は、1月24-25日にマニラ空港で2人を検挙し、マニラの別の地域で2人を逮捕した。残りの1人はフィリピン中部ネグロス島で身柄を確保した。容疑者5人の中にはフィリピンに2002年から居住している中国人も含まれているという。
中国人らはスパイ容疑を否認している。しかしフィリピンの捜査当局は、押収したドローンとスマートフォンから軍事基地や海岸警備艇などの写真が多数見つかったことを明らかにした。ハイメ・サンチアゴ国家捜査局長は記者会見で「容疑者らはドローンで、スプラトリー諸島に最も近い大きな島、パラワン島にある軍事基地や海岸警備艇などを撮影した」と説明した。フィリピン陸軍のロミオ・ブラウナー参謀総長は「この資料が他国の手に渡れば、軍事基地や警備艇の要員が危険にさらされるなど、国家の安全保障にとって大きなリスクとなると考える」と述べた。
フィリピン国家捜査局は先月20日にも、軍事基地や警察署などを偵察して写真などの資料を収集した疑いで、中国人の鄧元清容疑者とフィリピン人2人を逮捕したと発表した。鄧容疑者は中国人民解放軍の陸軍工程大学を卒業したコンピューターエンジニアで、5年以上フィリピンに居住していたという。
容疑者らは「自動運転開発車両」と表示した車を運転しながら、さまざまな資料を収集していたという。押収した車を捜索したところ、目標とするインフラ施設に関する3D画像生成プログラムやGPS(衛星航法システム)など、各種の情報収集機器が見つかったという。容疑者らはすでにルソン島地域の偵察を終えた状態で、その後、中部ビサヤ諸島や南部ミンダナオ島などへと偵察範囲を拡大する予定だったことが分かった。
鄧容疑者のスマートフォンからは、あるペーパーカンパニーに定期的に170-1200万ペソ(約450万-3200万円)を送金していた形跡が確認され、フィリピン国家捜査局は黒幕に中国のスパイ組織が存在しているとみて捜査を進めている。今回パラワン島の軍基地を撮影して検挙された中国人らと連絡を取っていた痕跡も見つかった。それぞれが別のグループではなく1つのグループとして動いていた可能性があるというわけだ。
フィリピン軍当局は、鄧容疑者がフィリピン国内の米軍基地を標的にしてスパイ活動を行っていたとみている。フィリピンは2014年、米軍の航空機や軍艦などを自国の軍事基地に配備できるようにする防衛協力強化協定(EDCA)を米国と締結したが、この協定に基づいて米軍が使用しているフィリピンの軍事基地が、スパイの情報収集の対象になったというわけだ。ロミオ・ブラウナー陸軍参謀総長は「地表の目印や地形を整理し、軍事目的で活用しようとしたようだ」と述べた。
ルソン島内のフィリピン空軍基地と海軍基地などには、南シナ海と台湾海峡で発生し得る衝突などの有事に備え、米軍が中距離ミサイル発射システム「タイフォン」の発射台などを配備してきた。クラーク空軍基地には米空軍のステルス戦闘機F22が配備されたこともある。
鄧容疑者の事件が明るみに出た直後、中国は敏感に反応した。中国外務省の毛寧報道官は先月22日の記者会見で「中国は海外に住む自国民に対し、現地の法律や法規を順守するよう一貫して求めてきた。フィリピンが根拠のない憶測に基づいて、(検挙された者たちを)中国のスパイだと大々的に宣伝する行為をやめるよう求める」と述べた。一方、パラワン島の事件については、これまで特に立場を示していない。
韓国、フィリピン、米領グアムなどを対象に、中国があらゆる方面でスパイ活動を行っている状況が次々と明らかになったことで、米国は懸念の声を上げている。米国務省の報道官は先月28日、米政府系放送「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」に寄せたコメントで「我々は米軍兵士の安全と安全保障の問題を深刻に考えている」と述べた。これは、中国によるアジア・太平洋地域でのスパイ活動を、米軍に対する脅威と見なしていることを意味している。
崔有植(チェ・ユシク)中国専門記者