著書『帝国の慰安婦』で日本軍慰安婦被害者の名誉を毀損(きそん)したとして起訴され、その後、無罪が確定した朴裕河(パク・ユハ)世宗大学名誉教授(67)。その朴名誉教授が、民事訴訟でも「慰安婦被害者らに賠償する責任はない」という判決を受けた。学問的記述は裁判所ではなく学界・社会が評価する領域であって、学者の表現の自由は幅広く認められなければならない-という趣旨だ。

 ソウル高裁民事12-1部(裁判長:張晳朝〈チャン・ソクチョ〉部長判事)は22日、故・李玉善(イ・オクソン)さんなど慰安婦被害者と遺族13人が朴名誉教授を相手取って起こした損害賠償請求訴訟の控訴審で「朴教授は9000万ウォン(現在のレートで約980万円)を賠償せよ」と命じた一審の判断を覆して原告敗訴の判決を下した。

 2013年8月に出版された『帝国の慰安婦』は、慰安婦問題を巡る従来とは異なる記述で論争になった。慰安婦被害者のハルモニ(おばあさん)たちは翌14年6月、自分たちを「自発的売春婦」「(日本軍と)同志的関係」などと罵倒したとして損害賠償請求訴訟を起こした。一審は16年に「朴教授が虚偽事実を適示して慰安婦被害者の名誉を毀損し、人格権を侵害した」として賠償責任を認めたが、控訴審はこれを覆した。

 裁判部は「著書に記載された表現は学問的主張ないしは意見」だとしつつ「朴教授の見解が多くの支持を受けないということはあり得るが、学界・社会の評価および討論の過程を通して検証することが望ましい」と判示した。その上で「違法行為責任を安易に認定したら、自由に見解を表明する自由を過度に萎縮させかねない」と指摘した。朴教授が虚偽「事実」を適示したわけではなく、学者の「意見」を述べたのであって、名誉毀損には該当しない、というわけだ。朴教授は、名誉毀損だとして起訴された刑事事件でも23年10月に大法院(最高裁に相当)で無罪の趣旨の判決を受け、破棄差し戻し審を経て昨年4月に無罪が確定した。

 裁判部は、慰安婦被害者の人格権も侵害していない、と判断した。裁判部は「慰安婦被害者が多少感情的な影響を受けたとしても、学問の自由を保障する憲法的価値と比較した場合、受け入れ得る限度を超えて朴教授が慰安婦被害者らの人格権を侵害したとは見なし難い」とした。判決の言い渡し後、朴教授は知人らに「10年もかかった。その間、とても苦労した。ありがとう」と述べた。

パク・ヘヨン記者

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