19日未明に逮捕状が発付された尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の容疑は内乱首謀および職権乱用だった。ソウル西部地裁の車恩京(チャ・ウンギョン)部長判事は「被疑者が証拠隠滅する恐れがある」と簡単な理由だけを記載したが、違憲・違法な非常戒厳令宣布、戒厳布告令発令など、問題の重大性などを考慮すれば逮捕状の発付は予想できたというのが法律に詳しい多くの専門家の見方だ。

 しかし一部では「同じく戒厳に加担し逮捕・起訴された共犯らの陳述などすでに証拠の大部分は確保されたため、逃亡の恐れがない現職大統領を逮捕まですべきか」との指摘も相次いでいる。

■スマートフォンの機種変更、テレグラムからの脱退などを考慮か

 尹大統領の令状審査は今月18日に当直だった車恩京部長判事が担当し、翌日発布された。令状審査は平日は専門の担当判事が行うが、18日のように週末の場合には民事・刑事部の判事が交代で行う。

 車恩京部長判事は尹大統領が非常戒厳令前後にスマートフォンの機種を変更しメッセージアプリのテレグラムを脱退した点、尹大統領側が大統領室や漢南洞公邸の家宅捜索を拒否した点などを指摘した高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の主張を受け入れた。尹大統領の弁護団は「非常戒厳令は大統領の政治的判断であり、司法審査の対象ではない」と反論したが、受け入れられなかった。

 これに加えて法律に詳しい専門家は「尹大統領が身柄拘束当日の今月15日を除いて公捜処の取り調べに応じず、犯罪容疑を全面的に否定した点などを車恩京部長判事は証拠隠滅の要因と判断したのだろう」との見方も示している。元判事のある弁護士は「尹大統領は職務が停止されているが、今もその影響力で国務委員(閣僚)を懐柔できる点などが考慮されたのだろう」と説明した。

■現職大統領をどうしても逮捕すべきなのか

 ただしこれらの点を考慮しても、現職大統領を逮捕してまで捜査すべきかについては激しい議論が起こっている。刑事訴訟法上の逮捕状発布の前提は「被疑者が罪を犯したと疑うに足る相当な理由があるかどうか」だ。さらに住居地が一定でないとか、証拠隠滅あるいは逃走の懸念があるか、犯罪の重大性や再犯の危険性があるかなども考慮される。

 別の専門家からは「先月3-4日に6時間にわたり非常戒厳状況が全国民にライブ中継され、戒厳令に加担した韓国軍と警察の幹部がすでに尹大統領の指示内容などを詳しく陳述した」「尹大統領は戒厳令後にソウル市竜山区漢南洞の大統領公邸に事実上とどまり、隠滅する証拠も逃走する可能性も特にない」などの指摘が相次いでいる。ある専門家は「弾劾審判されている現職大統領をあえて逮捕し捜査すべきか疑問だ」「尹大統領も司法手続きに沿って捜査に協力すれば、このような混乱はなかったはずだ」との見方を示した。

■わずか15文字、李在明代表の時は600字

 今回、車恩京部長判事が尹大統領を逮捕した際に明らかにした「被疑者が証拠隠滅する恐れがある」とする15文字の理由も論議を呼んでいる。別の法律専門家は「この短い令状発布理由だけを見れば、ほぼコソ泥レベルだ」「容疑に対する疏明などをもう少し明確にした方がよかった」と指摘した。

 過去に公開された重要人物の逮捕状審査結果で今回のように短いものはない。2017年3月に裁判所は収賄など13の容疑のあった朴槿恵(パク・クンヘ)元大統領を逮捕する際「主な容疑が疏明され証拠隠滅の恐れがあるため、逮捕の理由と必要性、相当性が認められる」とする35文字の理由を挙げた。2023年9月に野党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表の逮捕状を棄却したソウル中央地裁の劉昌勲(ユ・チャンフン)令状担当判事は棄却理由を600字で説明した。その内容は「偽証教唆の容疑は疏明されるが、逮捕の理由と必要性があるとは言い難い」「政党の現職代表として公職の監視と批判の対象になる点を勘案した」というものだった。

 与党・国民の力は同日「李在明代表も容疑が確認されれば(尹大統領と)同じように逮捕し、法の原則を守るべきだ」と批判したが、これに対して共に民主党は「事案の重さが異なる。なぜ内乱事態と比較するのか」と反論した。

ユ・フィゴン記者、パク・カンヒョン記者

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