社説
韓国憲政史上初の現職大統領逮捕、今こそ皆が法律を守るべきだ【1月16日付社説】
非常戒厳宣布から43日を経た1月15日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は内乱の容疑で高位公職者犯罪捜査処(公捜処)に逮捕された。現職大統領が逮捕され、被疑者として取り調べを受けるのは韓国史上初めてだ。尹大統領は「流血の事態を防ぐために、違法な捜査ではあるが、公捜処への出頭に応じることにした」と語った。しかし、逮捕状執行のために警察の逮捕チームが大統領官邸に投入され、バスを並べて作った壁を越え、大統領が公捜処に到着する様子は全世界に中継された。戒厳軍の国会進入と衝突、官邸周辺での連日の弾劾賛成派・反対派デモ衝突、現職大統領逮捕という映画のような事態が、わずか43日という短期間で連鎖的に発生した。悲惨なことだ。それでも、流血の事態が起きなかったことは不幸中の幸いだった。
今の事態は、尹大統領のだしぬけの非常戒厳が引き起こした。しかし、これを正そうとする国会、司法府、そして捜査機関が例外なく政治の論理を優先させたり法を無視したりして、混乱を深刻なものにした。尹大統領は、逮捕後に公開されたコメントで、戒厳を行った理由は「不正選挙」があったからだと主張した。当初の非常戒厳宣布時にはなかった内容だ。尹大統領は「不正選挙の証拠は非常に多い」と語った。ならばその多くの証拠を速やかに憲法裁判所と検察、警察などの捜査機関に提出し、事実であるかどうかを確認すべきだ。実際に不正選挙が確認されたら、全てが覆るだろう。そうでなければ、大統領がユーチューブのデマに惑わされて大事件を起こしたことになる。
韓国政界は、国の未来は気に留めず、政治的得失ばかり計算している。大統領選を早くやろうと焦る進歩(革新)系最大野党「共に民主党」は、大統領弾劾訴追の核心事由として掲げていた内乱罪を撤回し、韓国国民を当惑させた。韓悳洙(ハン・ドクス)大統領権限代行の弾劾に続いて崔相穆(チェ・サンモク)代行代行にも弾劾の脅しをかけている。内乱特検に外患容疑を追加して、韓国軍トップの活動にすら鎖をかけようとしている。保守系与党「国民の力」は、民主党が占領軍のように振る舞って世論の逆風に遭うや、戒厳を擁護しようするそぶりまで見せている。
憲法裁判所は政界の圧力に振り回されず、双方とも首肯し得るように、非の打ちどころのない弾劾審判を行わなければならない。韓悳洙代行の弾劾や国会の定足数問題も急いで整理する必要がある。裁判所は、選挙法違反事件の控訴審を含む李在明(イ・ジェミョン)民主党代表の裁判を正常に進めなければならない。さもなくば、尹大統領と李代表とで司法の対応が違う不公正さへの反発が大きくなることは避けられない。今こそ皆が法を守らなければならない。あんなことがあっても韓国はまともに動いているということを国際社会に示せる道は、これだけだ。