社説
高位公職者犯罪捜査処は捜査が目的なのか、逮捕が目的なのか【1月15日付社説】 尹大統領の逮捕令状再執行
高位公職者犯罪捜査処(公捜処)と警察、大統領警護処は14日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の逮捕状執行を巡り協議を行ったが、合意には至らなかった。公捜処と警察は早ければ15日に逮捕状を執行するという。国家機関の衝突が再び起こり、それに伴う流血事態が強く懸念されている。
韓国大統領府の鄭鎮碩(チョン・ジンソク)秘書室長は「大統領に対する第三の場所での調査や訪問調査など全て検討可能」と述べた。これについて尹大統領の弁護人団は「事前に協議された内容ではない」としているが、現実的な代案と考えられるため検討の余地はありそうだ。しかし公捜処はこれをも拒否した。尹大統領側が先週「公捜処が起訴するなり、事前拘束令状を請求するなりすれば、裁判所での裁判に応じる」と提案した際にも公捜処は同様の反応を示した。
状況がここまで悪化した理由は、当初の約束に反して出頭に応じなかった尹大統領にも責任があるが、同時に内乱容疑の捜査権がない公捜処にも捜査をごり押しした責任がある。公捜処は戒厳令直後から検察や警察と先を争うように捜査に介入し、混乱を起こした。組織の存在感を誇示するため無理して権限のない捜査にこだわっているようだ。
逮捕は被疑者を取り調べるための手続きに過ぎず、取り調べが目的であれば現実的な対応策を幅広く検討すべきだ。ところが公捜処はあえて多くの警察官や機動隊を引き連れて逮捕を目指している。これは取り調べが目的ではなく、大統領に手錠をかけ官邸から引きずり出す様子を見せるという政治的な意図がより大きいと疑わざるを得ない。野党・共に民主党議員らは公捜処に対し「棺を持って出てくる血気を示せ」と圧力をかけた。目的を果たせなければ、自分たちが作った公捜処を閉鎖することもちらつかせた。公捜処の一連の行動が共に民主党の圧力が理由であれば、取り調べのための逮捕ではなく「逮捕のための逮捕」に過ぎない。
崔相穆(チェ・サンモク)大統領権限代行は「国家機関同士の暴力使用はあってはならない」と重ねて呼びかけた。すでに内乱容疑の関係者はほとんどが身柄を拘束されており、証拠も確保されている。尹大統領弁護人団の要求通り逮捕状を請求するか、他の方法の取り調べを検討することが現実的だ。すでに今月3日には大統領官邸前で公捜処・警察と警護処が5時間半にわたり対峙(たいじ)する過去に例のない事態が起こり、その光景は全世界にライブ中継された。これだけでも国格や国の信認度が著しく傷ついた。これに加えて今後流血事態まで起これば誰がそれを収拾できるだろうか。