▲金正元・憲法裁判所事務処長 2025.1.9/写真=ニュース1

 金正元(キム・ジョンウォン)憲法裁判所事務処長は9日、韓国国会に出席して、戒厳布告令は「現行憲法に符合しない」と発言した。布告令が違憲かどうかは尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾審判に含まれている内容だ。ところが憲法裁判官の決定が出る前に、裁判に参加する資格もない事務処長が「違憲」という見解を表明したのだ。

 憲裁事務処長は、憲裁事務処を管掌する人物だ。裁判ではなく行政業務を行う。憲法裁判所法にも、事務処長は国会に出てきて憲裁の「行政」について発言できると定めてある。進行中の憲裁の裁判についての言及は禁止されていると見るべきだ。明示的に法に定められてはいないが、誰が見ても当然のことだ。ところが、堂々と裁判についての言及を行っている。不適切だ。

 こうしたことは初めてではない。金処長は先月、「憲法裁判官が空席になった際、大統領権限代行が任命権を行使できる」と発言した。権限代行が裁判官を任命できるかどうかは憲法的解釈の問題だ。憲法裁判官が裁判を通して結論を下すべき事案、ということを意味する。ところが裁判官でもない事務処長が「結論」を下してしまった。事務処長のこうした常識外れの政治的行為は、「今後の個人的利得を狙ったもの」という評価を避けられない。

 進歩(革新)系最大野党「共に民主党」所属で警察出身の李相植(イ・サンシク)議員は少し前に、尹大統領の逮捕状執行に関連して「党と韓国警察庁国家捜査本部のメッセンジャー役をしていたので、電話機に火がついた(電話がひっきりなしに鳴った)」とブログに書き込んだ。「警察の後輩たちを応援し、助言して尹錫悦を必ずや逮捕する」という内容もあった。保守系与党「国民の力」が反発するや、李議員は「後輩たちとコミュニケ―ションを取っただけだ」と述べた。だがその内容を見ると、尹大統領の逮捕問題を巡って民主党が指示し、警察がこれを遂行しているという疑いを抱かせる。

 戒厳事態以降、韓国社会は深刻な分裂の様相を呈している。高位公職者、政治家の発言や行動一つが混乱と対立の火種になりかねない。こういうときこそ、いっそう慎重に発言し、行動すべきだ。

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