▲グラフィック=キム・ヒョングク

 韓国経済は1998年に発足した金大中(キム・デジュン)政権以後、政権(任期5年)ごとに成長率が1%ずつ低下し、現在の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は、年平均成長率が1%台にとどまる「低成長トンネル」への突入を控えている。成長をけん引する動力は産業だ。しかし、韓国の産業は中国という巨大な「ブラックホール」に吸い込まれている。

 本紙がこのほど、韓国経済人協会(韓経協)と共同で韓中8大主力産業の全世界の輸出市場における過去10年間のシェア推移を分析した結果を見ても、既に中国の「ブラックホール」の影響圏に入った韓国経済の現状が如実に表れている。韓国は過去10年間、半導体、造船、鉄鋼など7業種で輸出シェアを中国に追い越されたり、首位中国との格差が逆転不能なほど拡大したりした。唯一石油化学だけが1%ポイント差で首位をかろうじて守った。

 国家3大先端戦略産業である半導体、ディスプレー、二次電池は、2013年に中国の全世界における輸出シェアが韓国の約2倍だったが、10年間で格差が3~8倍にまで拡大した。中国の急速な伸びだけでなく、韓国が後退した結果だった。

 造船、鉄鋼、自動車、石油化学など韓国経済を支えてきた主力産業群も軒並み不振だった。韓国が優位に立っていた船舶と自動車の輸出は、10年間で中国に追い越され、中国の低価格攻勢に苦しむ鉄鋼は、中国とのシェア差が10ポイント以上に広がり、存亡の危機に直面している。

 輸出シェアは各国の輸出が世界の輸出全体に占める割合を指し、各国の輸出競争力を測る基本的な指標となる。サムスン電子の場合、スマートフォン市場の世界シェアは20%前後だが、主な生産基地がベトナム、インドなど海外にあるため、韓国の輸出シェアは低い数値で反映される。韓国財界関係者は「中国は米国との対立でかなりの貿易制裁を受けているにもかかわらず、韓国の主力産業が中国によって相次いで競争力を失っている」と語った。

 「中核技術64件のうち57件で中国が首位、米国は7件だけで首位」(豪戦略政策研究所)、「中国は米国の制裁下で製造業発展計画『中国製造2025』の目標を86%以上達成」(香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト)、「韓中の産業技術格差は0.3年」(韓国産業技術企画評価院)――。

 国内外のシンクタンクやメディアが昨年中に示した中国に対する見方だ。韓国は「中国が喉元まで追い上げている」という表現をよく使うが、もはや「追い上げ」ではなく「追い越し」という表現が適切だと思われる証拠があふれている。 本紙と韓経協による分析でも、石油化学を除く7業種で中国に後れを取り、韓国経済が中国というブラックホールに徐々に吸い込まれている現実を読み取ることができた。

 最近韓国銀行が2025年と26年の経済成長率をそれぞれ1.9%、1.8%と予想したのもこうした現状に基づいている。予想が現実となれば、尹錫悦政権5年間の年平均成長率は1.98%となり、韓国の歴代政権で初めて2%以下に陥ることになる。

■1%台の低成長…新たな成長動力も中国が主導権

 韓国は2000年代以降、政権が変わるたびに年平均成長率が約1%低下してきた。1998年に発足した金大中政権5年間の年平均成長率は5.6%だった。その後の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権(4.7%)、李明博(イ・ミョンバク)政権(3.3%)、朴槿恵(パク・クンヘ)政権(3.0%)、文在寅(ムン・ジェイン)政権(2.4%)政権に至るまで下り坂を歩み、尹錫悦政権でもその傾向が続いているのだ。

 このように成長の勢いが鈍化しているのは、人口構造が高齢化する中で、輸出大企業中心の経済構造が限界に達したためだと分析されている。韓国経済研究院のイ・サンホ経済産業本部長は「輸出と製造業中心の成長動力が大幅に弱体化する中、新しい成長動力を見いだせなかった結果だ」と話した。韓国の中核輸出産業である自動車と造船でもこうした現象が目立つ。自動車産業の未来の戦場である電気自動車(EV)市場は、すでに米テスラと中国の比亜迪(BYD)に二分されており、中国の新興EVメーカーも急速に台頭している。スマートフォンメーカーとして知られる華為(ファーウェイ)は、今年上半期に自動車事業で約4300億ウォン(約457億円)の黒字を初めて計上し、小米(シャオミ)も初のEV「SU7」の生産開始から8カ月となる11月に累計10万台の生産を達成した。韓国財界関係者は「中国は自動運転車市場でも思い切った規制緩和を進め、数億キロメートルに達する走行データを蓄積した中国企業が米国と覇権競争を繰り広げている」と指摘した。

 高付加価値の「エコ船舶」競争でも中国が競争力で韓国を上回るのは時間の問題とみられている。世界5位の海運会社ハパックロイド が昨年9月に発注した5兆ウォン規模のコンテナ船24隻の受注戦で、中国最大の民営造船所である 揚子江船業にと江蘇新時代造船が韓国企業を破って契約を獲得したのが代表的だ。韓国の産業研究院は最近、造船業のバリューチェーン総合競争力で中国が韓国を抜き初めて首位に立ったとする報告書を公表し、「研究開発と設計では韓国が優位にあるが、生産、需要、サービスは中国がリードしている」と分析した。

■中国の研究開発投資、韓国の3倍

 中国は果敢で愚直な投資を行い、先端産業を育成している。中国は2023年、自国を代表する半導体企業、ディスプレー企業にそれぞれ2億7000万ドル、4億2000万ドルの補助金をつぎ込んだ。電池大手の寧徳時代新能源科技(CATL)も韓国ウォン換算で1兆ウォンを超える補助金を受け取った。同じ期間に韓国の同業大手が受け取った政府補助金はゼロだった。

 これは中国企業の研究開発能力と直結している。韓経協による最近の分析によると、昨年の中国の先端企業による研究開発投資(2050億8000万ドル)は、韓国の先端企業(510億4000万ドル)の4倍に達した。2013年から10年間、韓国は研究開発投資の年平均伸び率が5.7%だったが、中国は3倍以上の18.2%だった。その結果、韓国と中国の産業技術格差は、過去10年間(2013~2023年)に1.1年から0.3年へと急速に縮小した。

朴淳燦(パク・スンチャン)記者、鄭錫愚(チョン・ソクウ)記者

ホーム TOP