経済総合
中国の船舶建造能力は米国の232倍…米国の選択肢は韓国のみ
「半世紀ぶりに米国が海上で敗北する可能性が高まっている」「中国の海軍力が米国を追い上げた」――。米戦略国際問題研究所(CSIS)は最近、ある報告書でそう分析した。米国防総省が12月18日に公表した「中国軍事力評価報告書」は、中国海軍が現在世界最大規模の艦船を保有しており、2030年には保有艦船がさらに増え、米国との格差が拡大すると予想した。2020年に艦船数で量的に米国を初めて抜いた中国海軍は、今や空母、原子力潜水艦などの先端艦船も積極的に開発しており、質的にも両国の差が縮まる見通しだ。トランプ米次期大統領が昨年11月、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領との電話会談で、「韓国の世界的な艦船建造能力」を協力希望分野として挙げた背景には、このままでは中国に海軍力で追い越され、追い付けないほど格差が広がりかねないという米国の危機感があるためとみられる。一部には米国が100年前に海軍力が衰弱し没落の道を歩んだ「英国の過ち」を繰り返しているとの指摘もある。
米国の世界覇権に挑戦する中国の海軍規模は、習近平国家主席が2012年に権力を握って以来の10年余りで急速に拡大した。1999年以降に増強された中国海軍力の70%以上が習近平政権1・2期(2012~2022年)に集中した。中国指導部は2012年の第18回共産党大会で海軍強化、海外の軍事基地確保を目標とする「海洋強国」の建設を国家発展戦略として採択した。2017年の第19回共産党大会では、習主席が海軍増強を「中国の夢を実現するための必然的選択」と規定した。
同じ時期に中国海軍戦略は「防御」から「拡張」へと路線が変化した。「第1列島線」の内側で敵を防御する「近海防御戦略」から海軍力を拡張する「遠海護衛戦略」に進化した。列島線とは、中国が設定した仮想の対米防衛線だ。第1列島線は九州、沖縄、台湾、フィリピン、第2列島線は小笠原諸島、グアム、サイパン、パプアニューギニアを結ぶラインを指す。中国海軍が第1列島線の外側に進出するという目標は、第2次世界大戦以降、太平洋を掌握してきた米海軍に真っ向から対抗し、南シナ海から西太平洋にまで進出することを意味する。第2次世界大戦後、圧倒的な海軍力を維持し、世界の覇権を手放さなかった米国にとっては大きな脅威とならざるを得ない。
中国が米国の海軍力と比べ特に追い上げが目立つのは艦船数だ。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)、米国防総省などによると、国別艦船数は2000年までは米国が318隻、中国が110隻で米国が圧倒的にリードしていたが、2020年には米国293隻、中国350隻で中国が逆転。昨年には米国297隻、中国370隻で差が広がった。不確定要因がなければ、2030年には中国が435隻で、米国の304隻を大きく上回る見通しだ。
もちろん中国海軍は米海軍の「技術の壁」は超えられずにいる。中国の空母戦団の規模と作戦能力は米国と比べ非常に遅れている。2030年の時点でも中国の空母は米国(11隻)の半分の6隻にすぎない見通しだ。排水量の大きい駆逐艦や巡洋艦など威力を備えた戦闘艦の保有量も米海軍が圧倒的に多い。
問題は中国の造船能力が米国を圧倒的にリードし、米国がこのまま現状維持にとどまれば、中国が質、量の両面で米国をリードする可能性が高いことだ。米国の造船所は現在7カ所しかないのに対し、中国は数十カ所に達する。2023年7月に流出した米海軍情報局の評価資料によると、中国の年間船舶生産能力は2325万GT(総トン数)で米国の少なくとも232倍と評価された。実際に海軍作戦で中心的な役割を果たす駆逐艦の過去10年間の進水数は中国が23隻、米国が11隻だった。長距離航海能力を備えた巡洋艦も中国は2017年以降に8隻が進水したが、米国は1隻も建造できなかった。2000年代に入り、中国が米国を緊張させるほど優れた新型原子力潜水艦の建造に乗り出した事実も、最近相次いで明らかになっている。中国軍は1隻当たり少なくとも2兆ウォン(約2140億円)の建造費がかかる原子力潜水艦の開発にも予算を惜しまない。
中国の海軍力が急速に米国に追い付く中、米国やインドなど船舶の建造を急ぎたい国が信頼して協力できる国としては、韓国が最も現実的な選択肢となる。世界の造船市場では中国、韓国、日本が上位を占め、約90%のシェアを握る。このうち中国は米国と経済安全保障分野で覇権を争っており、中国に依存することは現実的に不可能だ。日本は韓国、中国に造船業で抜かれ、大規模な業界再編を実施し、現在世界シェアは4%まで低下した状況だ。日本は不況期に造船業の研究開発投資を大幅に削減し、生産規模の減少だけでなく、技術力でも過去のような競争力を期待しにくい。
一方、韓国は技術力と造船設備をいずれも提供できるパートナーであり、米日との友好関係も維持している。造船業のサプライチェーンが強固である点も強みだ。蔚山、巨済を中心に形成された下請け会社の生態系は、船舶エンジン、部品などの分野でも世界最高水準にある。コンテナ船、液化天然ガス(LNG)タンカーなど商船だけでなく、潜水艦を含む軍用の艦船に全て対応できることも長所として挙げられる。
北京=李伐飡(イ・ボルチャン)特派員、イ・ジョング記者