政治総合
弾劾政局の韓国国会に議論不十分な大量の法案、共に民主党が強行成立目指す動き
韓国野党・共に民主党の李素永(イ・ソヨン)議員は12月31日にフェイスブックに「国会議員が法案の内容も知らずに採決に参加するようなことはあってはならない」と投稿した。共に民主党が同日本会議で党として成立させた「反人権的国家犯罪の時効などに関する特例法」について、李素永議員は「反対票を投じる」とした上でその理由をこのように説明した。李素永議員は「捜査や裁判に関与する公務員が事件の実態を捏造(ねつぞう)・隠蔽(いんぺい)した場合にも公訴時効を廃止する」との条項を問題視し「ずさんな告訴の阻止が難しく、違憲の恐れがあると判断した」とも指摘した。しかし同党の議員総会ではこの法案に対する議論が十分に行われなかったため、反対もやむなしというのが李素永議員の説明だ。
共に民主党に対しては最近「今も様々な問題が指摘されている法案を強行成立させている」との指摘が相次いでいる。12月3日の非常戒厳令と尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領弾劾訴追問題で政局が混乱する隙を突いて法律が施行された場合、数々の問題が浮上する法案が国会で特別な議論も行われないまま次々と成立しているのだ。共に民主党所属議員らも法案の一部に懸念を示し「反対」の立場を表明するケースもあるが、政界での関心が憲法裁判所による大統領弾劾審判に集中しているため、「ブレーキを掛けられない」との指摘も相次いでいる。
李素永議員が反対票を投じると明言した特例法は、共に民主党が「検察改革」の次元で推進した制定法案だ。しかし国会法で定められた公聴会や聴聞会は開催されなかった。共に民主党が多数を占める国会法制司法委員会での採決の際にも公聴会や聴聞会は省略された。
法案の内容も問題が多い。この法案は公務員や軍指揮官による殺人などを「反人権的国家犯罪」と定め「公訴時効を廃止する」というものだが、問題はこの「反人権的国家犯罪」に「捜査機関の捏造や隠蔽の容疑」も含まれる点だ。この条項は李在明(イ・ジェミョン)代表が関係する李華泳(イ・ファヨン)元京畿道平和副知事の「サンバンウルによる北朝鮮への不法送金事件」の捜査過程において、李華泳元副知事が「検察が陳述を強要した」と主張した事実を念頭に置いたとの見方が政界で浮上している。李素永議員は「(受刑者たちが)刑期を終えて出所した後も死ぬまで自らを捜査した公務員を告訴・告発し、苦痛を与えることが可能になる」と指摘する。
共に民主党の朴均沢(パク・ギュンテク)議員は先日、国会と大法院長が指名する憲法裁判官候補者について「大統領が任命を拒否できない」と定める憲法裁判所法改正案を提出した。もしこの改正案が成立し施行された場合、裁判官候補者の身上や資質などに問題がある場合でも、過半数議席を持つ政党が候補者を一方的に指名しこれを可決させれば、大統領の判断とは関係なく自動的に任命しなけければならなくなる。与党・国民の力は「李在明代表の選挙法違反事件の控訴審判決など、司法リスクが現実となる前に大統領弾劾決定を前倒しするための政略的立法だ」と反発している。
共に民主党のハン・ビョンド議員は2日、「韓国大統領府は捜査機関による家宅捜索を拒否できない」と定める法案を提出した。内乱・外患・反乱・利敵罪の捜査では刑事訴訟法第110条と111条は適用されないとする内容だ。これに先立ちソウル西部地裁は先月31日、高位公職者犯罪捜査処が請求した大統領官邸の捜査令状を発付したが、その際「軍事上の機密を要する場所や公務上の機密の場合は責任者などの許可がないと家宅捜索できない」と定めた刑事訴訟法第110条と111条の適用を除外とすると令状に記載し、問題となった。同法案はこの点を念頭に置いたと言われている。
韓悳洙(ハン・ドクス)首相が先月19日に拒否権を行使し、国会に差し戻された国会証言鑑定法や農業4法などについても共に民主党は改めて採決を行う見通しだ。国会証言鑑定法改正案は「個人情報や営業機密の保護が目的であっても、証人としての出席や資料提出などを拒否できない」とする内容が含まれている。そのため経済6団体は「企業の機密や核心技術が流出するリスクが大きい」として反対の声明をすでに出している。米価格が暴落した際に超過生産量の買い上げを政府に義務づける糧穀管理法など農業4法も共に民主党が何度も提出してきたが、そのたびに現政権が拒否権を行使してきたため「政争性法案」とも言われている。共に民主党の関係者は「改めて採決を行う時期を検討中」と明らかにした。
高校授業料無償化に要する費用の半分を国が負担する期間をさらに3年延長する地方教育財政交付金法改正案も先月31日に国会本会議で可決したが、これに対して崔相穆(チェ・サンモク)権限代行が拒否権を行使するかが今後争点となる見通しだ。共に民主党など野党各党は12月3日の非常戒厳令宣布直後、戒厳関連の法案も100件以上提出した。ある政界関係者は「全ての問題を法改正で解決しようとした場合、過剰立法に陥る恐れがある」と懸念を示した。
キム・ジョンファン記者