社説
務安空港に鳥衝突防止用施設ゼロ、ローカライザーにコンクリートの盛り土…「まさか事故なんて発生するわけない」という発想がもたらした惨事【12月31日付社説】
全羅南道務安郡の務安国際空港で起こった済州航空惨事は「まさかそんなことが」の発想が大きく影響したことがわかってきた。胴体着陸を行った事故機は滑走路の先端に設置されたローカライザー構造物に衝突し爆発した。ローカライザーとは航空機の着陸時に滑走路の中心ラインに合わせるよう水平方向の情報をパイロットに提供する装置だ。万一航空機が滑走路から外れた場合、衝撃を発生させないため衝突時には破壊されるよう設計されている。ところが務安空港は地形が傾斜しているため、ローカライザーが盛り土の上に設置され、またその盛り土も頑丈なコンクリートで補強されていた。
韓国国土交通部(省に相当)は「麗水空港や浦項慶州空港などでも同じような形でローカライザーが設置されているため、規定には違反していない」と主張している。しかし専門家は「滑走路の先端にコンクリート構造物を設置するのはあまりに異例」と指摘する。米国など海外では当然であり、国土交通部が告示した空港安全運営基準にもローカライザーは壊れやすい構造にするよう定められている。つまり「まさか事故など発生するわけない」という発想からこのような構造物が設置されたのだ。
務安国際空港は干潟と4カ所の渡り鳥飛来地に近く、航空機と鳥との衝突はたびたび発生していた。ところが鳥衝突防止対策用の施設は全くなく、担当者の数も全国の空港に比べて非常に少ない。そのため務安空港は2022年には鳥関連の影響評価で最も危険な「レベル3」と判定された。早期に追加の対策を取るよう求められていたが、それも行われていなかった。これも「まさかそんなことが」の発想が影響したのだ。
務安国際空港は運航便数に対する鳥との衝突発生率が0.09%で、これは韓国の14空港で最も高い。鳥との衝突が多いとされる金海空港(0.034%)、金浦空港(0.018%)、済州空港(0.013%)に比べても特に高い。ところが務安空港の鳥対策担当者は4人しかおらず、金浦空港(23人)、済州航空(20人)、金浦空港(16人)はもちろん、全国14の地方空港の中でも特に少ない。事故当時は夜間の担当者1人と昼間の担当者1人が交代手続き中だったという。しかも鳥との衝突事故を防ぐ設備も一切ない。確かに事故というものはそうたびたび起こるものではないので、空港関係者も「まさかそんなことが」と考えだのだろう。しかし一度事故が起これば悲劇的な大惨事につながってしまう。