▲グラフィック=朝鮮デジタルラボ イ・ヨンジュ

 米国防総省が昨年12月18日、「中国軍事力評価報告書2024」を発表しました。182ページに及ぶ膨大な分量の報告書で、米議会に提出する目的で作成されました。

 中国軍が巨額の国防費を投入し、海・空軍力やミサイル戦力、核兵器などを急速に拡充しているという内容自体は去年の報告書と大差ありませんでした。一部の数字が変わり、最新情報が追加された程度でした。

 変わったのは、最近起きた中国軍の汚職問題、指揮官の資質不足など、中国軍の弱点を集中的に取り上げた点でした。軍の汚職があまりに深刻で、有事の際にミサイルがまともに撃てるのか確信できない状況なので、習近平主席が軍部の粛清に乗り出したのではないかと分析したのです。ラトナー国防次官補(インド太平洋安全保障担当)は中国による台湾侵攻の可能性について、「差し迫ったことではなく、避けられないことでもない」と指摘しました。中国軍はまだきちんと準備ができていないという主張でした。

■指揮官の熟練度、市街戦能力に問題

 今回の報告書は、中国軍の軍事力を総括評価した部分で、「さまざまな進展があったが、指揮官の熟練度、長距離補給、市街戦などの分野でかなりの問題がある」と指摘しました。装備は急速に現代化しているが、人とシステムに問題があるというのです。

 報告書の作成者であるラトナー国防次官補とマイケル・チェイス国防副次官補(中国・台湾・モンゴル担当)は同日、戦略国際問題研究所(CSIS)主催の座談会に出席し、報告書についての質疑に応じました。

 チェイス副次官補は中国の公式メディアによく登場する「五個不会(5つの不能、Five Incapables)」という用語を取り上げました。習近平主席が2015年に中国軍の問題を説明する際に使用したこの用語は、指揮官が作戦現場で状況判断ができず、上部の意図を理解できず、決定を下せず、兵力配置ができず、突発状況に対処できないということを意味します。チェイス副次官補は「中国軍メディアが依然としてこのスローガンを使っているということは、この問題を解決できずにいるという意味だ。1979年の中越戦争以降、実戦経験が全くなかったことから生じる問題だ」と分析しました。

■「有事の際にミサイルを撃てるのか」

 中国軍で相次いで起きた汚職事件にも言及しました。2023年6月以降、李尚福国防相ら少なくとも15人の軍最高幹部が汚職問題に関連して粛清されました。ラトナー国防次官補は「中国の最高指導部は汚職問題が軍事力に影響を与えるほど深刻だと判断している」とした上で、「さもなければ軍部であれほど大規模な粛清を行うことはなかっただろう」と分析しました。また、「上官に金銭を渡したり、食事の接待をしたり、高価な酒をプレゼントしたりする慣行は以前からあったが、今回は単なる慣行のレベルを超え、ミサイルがきちんと発射されるかどうかの問題になった」とも指摘しました。有事の際にミサイルがまともに発射されないほど汚職が深刻ならば、中国軍全体のシステムに影響を与えざるを得ないからです。

 チェイス国防副次官補も「最も信頼でき、核抑止力を担当するロケット軍の最高指揮官を引きずり下ろすしかないほどの汚職だったことに驚いた」と述べました。ブルームバーグは昨年3月、中国のロケット軍指揮部の大規模粛清に関連して、「西部の砂漠地帯に配置されたミサイルの液体燃料筒は燃料ではなく水で満たされていて、核ミサイルの地下格納庫は発射用カバーが故障していた」と報じました。

 台湾侵攻能力についても否定的な見方を示しました。ラトナー国防次官補は「負担し得るコストを払い、短時間に鋭く侵攻できるという確信がなければ、攻撃は不可能だが、まだそのような段階に達していない」とし、「さまざまな作戦上の試練に直面している」と分析しました。さらに、「台湾侵攻は差し迫ったことでもなく避けられないことでもない」「抑止力が実在し、なおかつ強い」とも発言しました。

■「米国のポジション強まった」と自信

 チェイス国防副次官補は「エネルギー供給問題も中国が台湾侵攻を前に解決すべき宿題だ」としました。中国は原油の70%を海外に依存しており、一日平均1100万バレルを中東と北アフリカから輸入しています。

 米軍が有事の際、インド洋からマラッカ海峡につながる海上運送ルートを遮断すれば、中国は対処不可能なエネルギー不足問題に直面するでしょう。中国もそれを解決するため、シベリアのパイプラインを通じ、ロシア産石油の供給を受けていますが、その量は1日約60万バレルにすぎないということです。海外への依存度が41%に達する天然ガスも同様の状況になることでしょう。

 過去数年間、アメリカ国防総省の中国軍事力評価報告書は、軍備の現代化の速さを強調する内容でした。昨年もそうした基調は維持しましたが、中国軍の汚職問題、指揮官の資質などを取り上げ、台湾侵攻問題については相当な自信を示した点が目立ちました。ラトナー国防次官補は「中国軍の現代化が速いが、米国も多くの分野に投資し、インド太平洋地域内の戦略的ポジションを強化してきた」とし、そうした観点で中国軍の不足が目立つとしました。

 両氏は米国で屈指の中国専門家です。ラトナー国防次官補は米国務省の中国担当部門を経て、国防総省の中国タスクフォース責任者、国防長官の中国担当上級補佐官などを歴任しました。チェイス副次官補は米海軍大学校の助教授を務め、ランド研究所の上級政治学者として中国軍の現代化や台湾防衛政策などを研究しました。

崔有植(チェ・ユシク)記者

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