▲現在、憲法裁判所の裁判官9人のうち3人は空席だ。/聯合ニュース

 進歩(革新)系最大野党「共に民主党」は、韓悳洙(ハン・ドクス)大統領権限代行・首相を弾劾訴追しない条件として「空席になっている憲法裁判官3人の即時任命」を掲げた。民主党など野党各党は、与党が参加しない中で憲法裁判官候補者3人の聴聞会手続きを終えた状態だ。26日の本会議で3人の選出案を処理するはずで、韓権限代行は速やかに任命すべきだと要求しているのだ。民主党は、憲法裁判所の構成が早く終われば、それだけ尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領弾劾訴追事件の審理期間も短くなるとみていると伝えられている。

 逆に保守系与党「国民の力」は、「任命反対」を固守している。今の韓権限代行には憲法裁判官の任命権限がなく、尹大統領弾劾が認められて初めて権限が生じる、というのが与党の主張だ。野党とは反対に、尹大統領の事件の憲裁における審理期間をできるだけ引き伸ばしたい、という計算も働いているものとみられる。これについて韓権限代行側は、与野党が政治的に解決すべき問題だとする立場だという。

 現在、尹大統領弾劾訴追事件についての憲法裁判所の審理は「憲法裁判官6人体制」で行われている。裁判官9人のうち、国会が推薦していた3人は任期満了などで空席となったからだ。民主党などは、聴聞手続きを終えた趙漢暢(チョ・ハンチャン)=与党推薦=、馬恩赫(マ・ウンヒョク)、鄭桂先(チョン・ゲソン)=野党推薦=の各候補者についての憲法裁判官選出案を26日の本会議で処理する計画だ。

 憲法裁判所が大統領弾劾を認めるには、裁判官6人以上の賛成が必要だ。野党関係者は「満場一致が必要な『6人体制』より『9人体勢』の方が、尹大統領弾劾決定が出る可能性はいっそう高いのではないだろうか」と語った。

 韓国法曹界では、韓権限代行に憲法裁判官任命権限はあるとみる意見が優勢だ。今月17日、国会に出席した金正元(キム・ジョンウォン)憲法裁判所事務処長は「憲裁の裁判官が空席になったとき、大統領権限代行は任命権を行使できる」と述べた。大法院(最高裁に相当)の法院行政処も、民主党の白恵蓮(ペク・ヘリョン)議員のオフィスに提出した書面答弁書で「国会の人事聴聞で同意手続きを終えたら、任命は三権分立など憲法上の諸原則に違背しないだろうとみられる」とした。野党は、大法院のこうした解釈が憲法裁判官人事にも適用され得る、との判断だ。

 しかし国民の力は、国会で憲法裁判官選出案が通過し次第、憲裁に権限争議審判を請求する方針だ。国民の力の権性東(クォン・ソンドン)院内代表は「憲法上、大統領には国家元首としての地位と行政府首班としての地位がある」とし「拒否権や閣僚の任命は行政府首班の地位で可能であって、大法官や憲法裁判官の任命は国家元首の地位から出てくるものだから、大統領権限代行では不可能」と語った。

 権寧世(クォン・ヨンセ)非常対策委員長も同じ立場だ。国民の力の徐知英(ソ・ジヨン)院内スポークスマンは「権限代行が『国家元首か、行政府首班か』というのは憲法的争点であって、憲裁に判断を任せてみたいという趣旨」と述べた。ナ・ギョンウォン議員は「弾劾審判は国会が検事のように起訴し、憲裁が(判事のように)判断するもの」としつつ「国会で憲法裁判官を推薦するのは、検事・判事をどちらもやりたいというものであって、果たして公正性を担保できるだろうか」と批判した。

 韓国政界からは「与野党が韓悳洙大統領権限代行の権限を巡って自分たちに有利なように解釈することで、政局の不安定性をさらに大きくしている」という批判が出た。国民の力は最近、内乱特検法と金建希(キム・ゴンヒ)夫人に対する特検法への拒否権行使、国防部(省に相当)および行政安全部の長官任命などを韓権限代行に要請した。それにもかかわらず憲法裁判官の任命権は今の韓権限代行にはない、という立場を固守しているのだ。これを巡って「自己矛盾ではないか」という指摘が出ている。

 逆に民主党は、両特検法に関して「清掃代行は清掃が本分であって、拒否権行使は越権」とし、韓権限代行が行使できる権限を低く評価した。政界関係者は「そんなことを言っておいて、憲法裁判官を任命しなければ弾劾訴追する、と乗り出すのはつじつまが合わない」と語った。

 なお、国民の力指導部は26日の議員総会で、憲法裁判官任命に関して議員らの意見を集約することが分かった。国民の力の高位党職者は「権性東院内代表は議員の声を集約して、憲法裁判官の任命についての党の立場をどのように整理するか、最終的に決定するようだ」と語った。

キム・ヒョンウォン記者

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