事件・事故
「高位公職者犯罪捜査処は内乱罪を直接捜査できるのか」 韓国法曹界で論争
尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する「12・3非常戒厳」内乱容疑の捜査は、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)に一元化された。検察が今月18日、尹大統領の事件を公捜処の要求に基づいて移管したからだ。だが公捜処が尹大統領の内乱容疑を直接捜査できるのかどうかなど、法的な論争が続いている。法曹界からは「法的な問題をきちんと整理できていない状態で捜査が続いたら、今後の起訴と裁判の過程にも影響を及ぼしかねない」という懸念が出ている。
韓国の現行法上、公捜処は内乱罪について捜査できない。だが公捜処は、捜査権がある尹大統領の職権乱用容疑については直接捜査することができ、この容疑の「関連犯罪」として内乱容疑も捜査できる-という立場だ。公捜処と同じく内乱容疑の捜査権がない検察も、同様の論理で「尹大統領の内乱容疑について捜査できる」と主張したことがある。法的に、内乱罪に関する捜査権限は警察にのみある。文在寅(ムン・ジェイン)政権時代の2021年に、検察・警察の捜査権調整で内乱罪は検察と公捜処の捜査開始対象犯罪から外された。法曹界からは、尹大統領側がこれを口実にして公捜処が違法な捜査をしていると主張しかねない、という懸念も出ている。
公捜処が尹大統領を捜査しても、直接公訴を提起することはできない、という点も問題として指摘された。公捜処法上、公捜処は大統領・閣僚・国会議員・将官級将校など高位公職者に対して捜査ができるが、起訴できる対象は判事・検事および警務官(警視監に相当)以上の階級の警察官に限られる。このため、公捜処は尹大統領を捜査した後、検察に事件を送って起訴を求めなければならない。
公捜処が尹大統領を拘束する場合の拘束期間も論争になりかねない。刑事訴訟法上で定める被疑者の拘束期間は、警察が最大10日、検察が最大20日だが、公捜処については規定がない。大検察庁(最高検に相当)と公捜処は最近「12・3非常戒厳」の被疑者の最大拘束期間を20日にするとして協議を行ったが、両機関が20日をどのように分けるのかは決まらなかったという。
法曹界からは、こうした混乱が起きたのは文在寅政権時代の検察・警察捜査権調整と公捜処設立のせいだという指摘が出ている。李昌玄(イ・チャンヒョン)韓国外大法学専門大学院教授は「補完立法を通して改善する必要がある」と語った。
イ・スルビ記者