社説
「大統領選挙前倒し」を前提に横断幕を取り締まる韓国選管【12月23日付社説】
韓国中央選挙管理委員会は、韓国与党・国民の力所属議員を「内乱の共犯」と表現した横断幕の設置は許可したが、「李在明(イ・ジェミョン)は駄目です」と書かれた横断幕の設置は不許可とした。これについて選管は「韓国野党・共に民主党の李在明代表について『駄目です』という言葉を使うことは事前の選挙運動になる恐れがあるため禁止した」と説明している。公職選挙法第254条は法律で定めた選挙運動期間前に選挙運動を行うことを「選挙運動期間違反罪」としているため、これに抵触するというのがその理由のようだ。これに対して国民の力議員を「内乱の共犯」としたことについては「総選挙が4年後という点を考慮すれば、事前の選挙運動にはならない」と解釈したという。
今回の選管の判断は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾訴追案が憲法裁判所で認容され、来年の早い時期に大統領選挙が行われることを前提としている。大統領選挙が前倒しされれば、李在明代表が共に民主党候補として出馬するので「李在明は駄目です」という表現は「特定の立候補予定者に対する落選運動になる」というのだ。「大統領選挙の前倒し」と「李在明代表出馬」を前提として今回の決定を下したわけだ。
ところがこの判断に対して「李在明代表に有利な決定だ」との批判を意識したのか、選管は「これは大統領選挙の立候補者になると一般国民が予想できる国民の力の韓東勲(ハン・ドンフン)代表、あるいは呉世勲(オ・セフン)ソウル市長にも同じように適用される」とも説明した。しかし「誰が大統領選挙の立候補者」として「予想」できるかについては何の法的根拠もない。選管が「事前の選挙運動禁止の根拠」として提示した公職選挙法はそれぞれの選挙の選挙運動期間を定めているだけだ。誰を立候補予定者として予想するか、選挙まで何日になれば事前の選挙運動になるかは定めていない。選管が今回一体何を根拠に「大統領選挙が近づいたので、誰々に対する批判は事前の選挙運動になる」「総選挙まではまだかなりの期間が残っているので事前の選挙運動ではない」と言えるのか全くもって理解できない。
選管は民主主義制度の根幹とされる選挙の公正性を担保する責任を持つ憲法機関だ。法律と規定のみに基づいて、いかなる政党などからも有利・不利といった公正性に関する問題が指摘されないよう管理しなければならない。次の大統領選挙は2027年3月に実施される予定だが、この大統領選挙の日時を変更すべき理由について現時点で確定したものはない。そのため選管が「大統領選挙が近づいた」という前提で李在明代表に対する横断幕を取り締まる根拠が何か、改めて問いたださざるを得ない。