尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の弾劾訴追案が14日に国会本会議に上程されてから可決まで1時間もかからなかった。禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長は弾劾訴追案可決と同時に訴追議決書の正本と写本を憲法裁判所と韓国大統領府に送付した。これにより尹大統領の権限は直ちに停止となり、憲法裁判所は事件を受理し弾劾審判の審理手続きに入った。

 尹大統領の弾劾訴追案は同日午後4時6分、本会議の開始と同時に上程された。韓国野党・共に民主党の朴賛大(パク・チャンデ)院内代表が野党6党により今月12日に提出された弾劾訴追案の提案説明を行った。野党は弾劾訴追議決書で「尹大統領による12・3非常戒厳宣布は憲法と法律に違反している」と主張した。「戦時・事変あるいはこれに準ずる国家非常事態において、兵力として軍事上の必要に応じるか、公共の安寧秩序を維持する必要があるとき」と憲法に定められた大統領の戒厳発動要件が充足されていない状態で、非常戒厳を宣布し、その過程で国会への通告など憲法で定められた手続きに反したというのだ。戒厳軍と警察を利用し、戒厳解除議決権行使を目指した国会議員らの国会への立ち入りを武力で阻止した点については、「三権分立など国憲を紊乱(びんらん)する行為」として「刑法上の内乱罪と職権乱用禁止などに違反した」と指摘した。

 続いて午後4時29分から無記名投票が始まった。投票終了は午後4時45分。在職議員300人全員が投票を行った。禹元植・国会議長は午後5時「大統領・尹錫悦弾劾訴追案は投票総数300票、うち賛成204票、反対85票、棄権3票、無効8票で可決したことを宣布する」と述べた。国民の力所属議員108人のうち少なくとも12人が尹大統領の弾劾に賛成票を投じたことになる。国民の力は同日、採決前に行った議員総会で「弾劾訴追案否決」を党の方針として定めたが、賛成・棄権・無効票を合わせて23人が党の方針に従わず反乱票を投じたようだ。野党は弾劾訴追議決書に秋慶鎬(チュ・ギョンホ)前国民の力院内代表を「内乱共謀者」などと記載したため、採決直前の国民の力議員総会では「国民の力全体が内乱フレームに巻き込まれる恐れがある」との懸念も出たが、弾劾訴追を阻止することはできなかった。

 禹元植議長は弾劾訴追案可決直後に議決書を共に民主党の鄭清来(チョン・チョンレ)国会法制司法委員長に送り、鄭清来委員長はこれを憲法裁判所に提出した。

 尹大統領は弾劾訴追案可決から1時間6分後の午後6時6分に談話とこれを発表する録画映像をメディアに送った。動画は国会で弾劾訴追案が可決した直後、ソウル漢南洞の官邸で撮影したという。尹大統領は「国民にお伝えする言葉」という題目のこの談話で「私は今、しばし立ち止まっているが、ここ2年半にわたり国民と共に歩んできた未来に向けた旅程は決して止めてはならない」「私は決して放棄しない」と述べた。その上で尹大統領は「私に対する叱責(しっせき)、激励、声援を全て心に抱き、最後の瞬間まで国家のために最善を尽くしたい」との考えを伝えた。

 尹大統領は公職者らに対し「困難でつらい時間だが、揺らぐことなく各自の位置を守り、任された役割を果たしてほしい」「大統領権限代行を中心に皆が力を合わせ、国民の安全と幸福を守るため最善を尽くしてほしい」と呼びかけた。尹大統領は政界に対しては「今こそ暴走と対決の政治から、熟議と配慮の政治へと変われるように、政治文化と制度を改善することに関心と努力を傾けてほしい」と訴えた。尹大統領は原発生態系の復元、4大改革、韓米日協力の復元などに言及し「これまでの努力が無駄にならないか心配だ」との思いも吐露した。

 国会事務処の金敏基(キム・ミンギ)事務総長らは同日6時16分に弾劾訴追議決書の謄本を尹大統領に手渡すためソウル竜山の韓国大統領府に到着した。一行は大統領府西門の案内室周辺で1時間ほど待機し、午後7時24分に大統領室庁舎を訪れ尹在淳(ユン・ジェスン)総務秘書官に禹元植議長名義の謄本を手渡した。これにより憲法が定める尹大統領の国家元首、行政府首班の権限は停止となった。尹大統領就任から2年7カ月だ。尹大統領弾劾訴追案可決直後、大統領府入り口の電光板に表示されていた「大統領府に来られたことを歓迎します」という言葉は消えた。

梁昇植(ヤン・スンシク)記者

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