韓中関係
中国人スパイ事件に言及した尹大統領12日談話に中国政府が反発「深い驚きと不満」
改善に兆しが見え始めた韓国と中国の関係が再び困難に直面した。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が12日の対国民談話で、スパイ容疑で拘束されている中国人と中国製太陽光発電施設による韓国の山林破壊などに言及したためだ。中国政府は直ちに「中韓関係の健全かつ安定した発展にプラスにならない」として強く反発した。
中国外交部(省に相当)の毛寧報道官は12日に定例のブリーフィングを行ったが、その際尹大統領の談話に対する中国政府の立場について質問を受け「関連する状況を注視しているが、韓国側の発言には深い驚きと不満を表明する」と述べた。毛寧報道官は「韓国側が内政問題を中国関連の要素と連結させ、根拠のないいわゆる『中国スパイ説』を提起し、正常な経済貿易協力を妨害することには断固として反対する」「中韓関係の健全かつ安定した発展にプラスにならない」と指摘した。
中国外交部は通常は他国の政治情勢について「内政干渉になる」との理由で具体的な言及は避けてきた。今月3日に非常戒厳令事態が起こった翌4日にも中国外交部の林剣報道官は「韓国が中国人とその関係する機関の安全を確実に保証し、効果的な対応を取ることを希望する」「内政については論評しない」としかコメントしなかった。
ところが今回尹大統領が中国を名指しで批判したため、中国側も反論するしかない状況になった。尹大統領は談話で「野党が国の安全保障と社会の安全に脅威をもたらしている」と指摘する流れの中で「今年6月に3人の中国人がドローンで釜山に停泊中の米空母を撮影し摘発される事件が起こった。彼らのスマートフォンとノートパソコンからは少なくとも2年以上にわたり韓国の軍事施設を撮影した写真が発見された」と明らかにした。
さらに尹大統領は「先月には40代の中国人がドローンで国家情報院を撮影し拘束された。この男は中国から入国すると同時に国家情報院に向かい、このような犯行を行ったことが確認されたが、現行の法律では外国人によるスパイ行為をスパイ罪で処罰する方法がない」などとした上で「このような状況を改善するため刑法のスパイ罪条項を修正しようとしたが、巨大野党がこれを強く妨害している」と批判した。
尹大統領は「もし亡国的な国憲紊乱(びんらん)勢力がこの国を支配したら、どのようなことが起こるだろうか」「原発産業、半導体産業をはじめとする未来の成長動力は枯渇し、中国製の太陽光発電施設が全国の山林を破壊するだろう」と訴えた。
これに対して毛寧報道官は中国人による韓国国内でのドローン撮影について「中国政府は海外にいる中国公民(市民)に現地の法律や法規を順守するよう一貫して要求してきた」とした上で「われわれは韓国側が言及した一連の事件にまだ結論が出ていないことに注目している」「中国と韓国の関連部門は引き続き連絡を取り合っている」と主張した。
毛寧報道官は「中国は韓国側が中国公民の関係する事件を公正に処理し、中国に事件処理の状況を通知することと、事件に関係した中国公民の安全と合法的な権益を実質的に保障するよう改めて要求する」とも述べた。
尹大統領による中国製太陽光発電施設への言及には「中国のグリーン産業発展は世界市場の需要と技術革新、そして充分な競争の結果だ」「気候変動に対応するグローバル環境管理改善への重要な貢献でもある」と訴えた。
尹大統領の発言を巡り中国側が強く反発するケースは今回が初めてではない。昨年4月に尹大統領は米国国賓訪問を前にロイター通信とのインタビューで「(台湾海峡での)力による現状変更には強く反対する」との考えを示した。「力による現状変更」とは中国による「台湾武力統一」の動きを意味する。これに対して中国外交部は「他人による言葉の介入は許さない」という意味の「不容置喙(かい)」という言葉を使い強く反発した。
今回の非常戒厳令事態により韓中関係も今後不安定さが増すとの見方が浮上している。これまで数年にわたりギクシャクしてきた両国関係は最近少しずつ改善の兆しが見え始めていた。米大統領選挙で当選したドナルド・トランプ氏の就任を前に、中国は周辺国との関係改善に力を入れており、韓国もビザ免除国に含めるなど例外ではなかった。また来年慶州で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議には中国の習近平・国家主席の来韓も予想されている。ところが今回の弾劾政局により新任の駐韓中国大使任命が先送りされるなど、両国の交流も事実上中断状態にある。
北京=イ・ユンジョン特派員