▲グラフィック=ヤン・インソン

 韓国国防部は8日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が非常戒厳を宣言した当時、国会などに兵力・要員を派遣した防諜司令部所属の軍将校2人の職務を停止したことを明らかにした。6日に李鎮雨(イ・ジンウ)首都防衛司令官、郭鍾根(クァク・ジョングン)特殊戦司令官、呂寅兄(ヨ・インヒョン)防諜司令官の3人の職務を停止したのに続く措置だ。首都圏市民の安全を守る首都防衛司令部、戦時・平時の対北朝鮮作戦で中心的役割を担う特殊戦司令部、防諜司令部がトップ不在状態に陥ったことになる。

 国防部は司令官3人に続き、追加でチョン・ソンウ防諜司令部第1処長(陸軍准将進級予定者)、キム・デウ防諜司令部捜査団長(海軍准将)の2人を職務停止のための分離派遣処分(別の部隊・司令部付への暫定異動)とし、対象者らは調査条件などを考慮し、首都圏に位置する部隊での待機を命じた。チョン第1処長は先月末まで呂寅兄防諜司令官の秘書室長を務めた側近で、尹大統領が3日に非常戒厳を宣言する1時間前に呂司令官らと事前会議を行った疑いが持たれている。キム捜査団長は非常戒厳当時、主な政治家の逮捕するための兵士グループを現場に投入した疑い。国防部は今回の人事措置について、「国会とメディアなどから追加で疑惑提起があり、防諜司令官職務代理からの提言があった」と説明した。

 国防部は今回の非常戒厳と関連した首都防衛司令官、特殊戦司令官、防諜司令官を「現状に関連する主な職務担当者」と位置づけ職務停止とした。ただ、戒厳司令官を務めた朴安洙(パク・アンス)陸軍参謀総長に対しては「事実関係をさらに確認しなければならず、実際に兵力が動かしておらず、動かすこともできなかったため、今回の措置から排除した」と説明した。

 朴参謀総長は国防部検察団の捜査対象となり、出国禁止リストに含まれた。特別な行動がなかったとしても、戒厳司令官として一部責任を負う部分があると考えられるためだ。朴参謀総長以外にも、今回の事件で捜査対象になった現役軍人は10人ほどいる。特殊戦司令部に属するイ・サンヒョン第1空輸旅団長、キム・ジョングン第3空輸旅団長、カン・ムソン第9空輸旅団長、707特任団長、特殊作戦航空団長、防衛司令部所属の軍事警察団長も国防部検察団による捜査対象に含まれた。さらに、現役軍人の捜査対象者が増える可能性も指摘されている。

 軍周辺からは、今回の戒厳令で安全保障機能が一部まひしたとの声が漏れる。今回の事態による影響で演習が適正に実施されなかったケースもあるという。合同参謀本部は最近、部隊移動命令に消極的とされる。戒厳宣言後、兵力移動で誤解が生じることを恐れ、移動を制限しており、旅団級以上の大規模演習がまともに行われていないとの指摘もある。こうした状況が続けば、軍の演習に大きな支障を来すと予想される。

 軍は戒厳宣言後、日常的な兵力移動も自粛するムードだ。軍当局は6日、朴安洙陸軍参謀総長が国会国防委員会に出席するため、ヘリで移動した際、「承認されたヘリ移動だ」と異例の発表を行った。海兵隊の周一錫(チュ・イルソク)新任司令官は7日、作戦指導のため、北朝鮮に近い白翎島、延坪島などの離島を訪問しようとしたが中止した。ヘリ使用で何か言われかねないことが理由だったという。

 国防部最高首脳部による命令系統の乱れを指摘する声もある。国防部は非常戒厳を主導した金竜顕(キム・ヨンヒョン)前長官が5日に免職され、金善鎬(キム・ソンホ)次官が長官職を代行している。国防部長官の職務代行体制は1948年の韓国軍創設以来初めてだ。軍関係者は「安全保障が最も重要な国で国防部長官が空席というのはあり得ないことだ」とし、「早急に組織と綱紀を立て直し、安保にわずかなすきもないようにすべきだ」と語った。

梁昇植(ヤン・スンシク)記者、ヤン・ジホ者

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