▲グラフィック=朝鮮デザインラボ、キム・ヨンジェ

 尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の「非常戒厳」談話発表が終わった今月3日午後10時20分ごろ、韓国警察庁の趙志浩(チョ・ジホ)庁長は金峰植(キム・ボンシク)ソウル警察庁長に電話をかけて「国会をはじめとする国家主要施設の警備を強化せよ」という趣旨の指示を行った。韓国警察庁の関係者は「非常戒厳が宣布されたので警察は万一の偶発的事態に備えよ、という観点からの指示だった」と語った。金峰植ソウル警察庁長は午後10時46分、国会警備隊に「国会を全面統制せよ」と指示した。こうした内容は、4日に韓国警察庁が国会へ報告した資料で確認された。

 尹大統領の非常戒厳宣布直後、国会議員らは戒厳の効力停止を議決する本会議に出席するため、ソウル市汝矣島の国会議事堂に集まってきた。だが金庁長の指示により国会議員・補佐陣・取材陣など国会関係者らの出入りは20分ほど禁止された。この過程では国会警備隊長だけでなくソウル警察庁の上級幹部が直接乗り出して指揮していたことが把握された。ソウル警察庁の関係者は「金庁長が『突発事態発生の可能性が高い』と判断し、国会内部に移動しようとする人を一時的に規制する指示を下した」とし「当初は五つの機動隊を国会周辺に配置し、後には最大で32の機動隊を配置した」と語った。

 だが現場では「なぜ議員を議事堂に入れないのか」という抗議が集中し、若い警察官も「国会議員なら入れるべきではないか」と動揺し始めた。ソウル警察庁の一部の幹部も「警察が国会議員の正常な議政活動を妨げるのは反憲法的」だという意見を述べた。これにより金庁長は午後11時6分、「国家議員・補佐陣・取材陣は身元確認の手続きを経た上で国会への出入りを許容せよ」という趣旨の指示を下した。

 この指示で国会封鎖が一時解かれ、相当数の議員が国会の構内に入り、本会議場に着席できた。だが午後11時25分ごろ、「一切の政治活動を禁じる」という朴安洙(パク・アンス)戒厳司令官の「布告令1号」の内容を把握した後、ソウル警察庁は午後11時37分に再び国会警備隊に対し「国会議員を含めて全面規制せよ」という指示を繰り返した。

 こうした指示は趙志浩・韓国警察庁長がソウル警察庁に直接下していたことが、国会への報告資料で確認された。趙庁長は韓国警察庁警備局長経由でソウル警察庁の公共安全処長にこの指示を伝達した。韓国憲法は、戒厳状況において「言論・出版・集会・結社の自由、政府や裁判所の権限に関して、特別な措置を取ることができる」(77条)と定めているが、立法府の活動を制限する内容はない。むしろ「国会が在籍議員過半数の賛成で戒厳の解除を要求するときは、大統領はこれを解除しなければならない」という条項(77条)などを通して、立法府の活動を保護している。だが趙庁長は、非常戒厳布告令を根拠に国会を封鎖せよとソウル警察庁に直接指示したのだ。

 金庁長が国会議員などの出入りを許していた時間は31分ほどで、190人の議員のうち相当数がこの時間に本会議場まで入ることができた。4日午前1時に190人の議員が出席する中、本会議が開かれ、賛成190人で非常戒厳解除要求が可決された。

 警察の上級幹部は「金庁長は非常戒厳について法理検討を行った末、議員らの国会への出入りを警察が妨げる法的根拠は極めて弱いと考えた」とし「布告令後に全面規制が下されたことについても否定的だったが、警察庁長が直接指示を下し、やむを得ない側面があった」と語った。

 野党側は4日に発議した尹大統領弾劾訴追案で、「国会議員多数の本会議への出入りを妨げ、国会の戒厳解除要求案の議事進行を阻害」した行為を弾劾事由かつ内乱罪の成立要件だとして適示した。これにより、韓国警察首脳部に対して国会議員の出入り規制を誰が、どの程度のレベルで指示したのかが今後の弾劾審判および内乱罪捜査などの争点になるかもしれない-という見方が出ている。

チュ・ヒョンシク記者、ク・アモ記者

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