▲グラフィック=キム・ソンギュ

 韓国野党・共に民主党は28日、崔載海(チェ・ジェヘ)監査院長の弾劾訴追を行う方針を表明し、国の最高監査機関トップの権限がストップする可能性が高まった。監査院長が権限停止となればこれが憲政史上初めてとなる。監査院は大統領直属の政府機関だが、憲法により職務の独立性が保証されている。共に民主党が崔載海院長を弾劾訴追した場合、憲法裁判所の決定が出るまで文在寅(ムン・ジェイン)前大統領が任命した趙垠奭(チョ・ウンソク)監査委員とキム・インヒ監査委員が院長の権限を順番に代行することになる。また監査委員の過半数の賛成により主要な意思決定を行う監査委員会も「文在寅前政権系の3人対尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権系の3人」の6人体制で当分は運営される。これについて監査院は「憲法に定められた監査院の機能をまひさせる行為」として共に民主党に監査院長弾劾をやめるよう求めた。

 共に民主党は崔載海院長について「今年の国会国政監査で国会証言鑑定法に違反した」として弾劾訴追を推進する方針を示している。尹大統領当選後に大統領室官邸移転を推進する過程で尹大統領と金建希(キム・ゴンヒ)夫人が不当に介入した疑惑を把握したにもかかわらず、監査院はこれを問題視せず、また国会への関連資料提出要求に対しても正当な理由なしにこれを拒否したというのが共に民主党の主張だ。共に民主党はこれとは別にすでに国会法制司法委員会の議決を経て高位公職者犯罪捜査処に崔載海院長を告発した。共に民主党の関係者は「現政権の肩を持つ監査を行い、政治的中立の義務を放棄した監査院長は弾劾して当然」と主張している。

 崔載海院長は文在寅前政権当時の2021年11月に国会の同意を経て4年任期の監査院長に任命された。尹錫悦政権も監査院出身の経歴などを考慮し、監査院の独立性保証の観点から崔載海院長の留任について特に何も言わなかった。その崔載海院長に対する共に民主党の弾劾の動きについて政界からは「現政権発足後、監査院は前任の文在寅前政権の主要な政策推進過程を監査したため、共に民主党は過半数の議席を武器に監査院への介入に乗り出したようだ」との見方が相次いでいる。

 監査院は現政権発足後、文在寅前政権による不動産、所得、雇用などの統計捏造(ねつぞう)疑惑、THAAD正式配備の意図的な遅延疑惑、北朝鮮GP(監視所)撤収のずさんな検証疑惑など、前政権で行われた数々の政策執行関連の疑惑について監査を行ってきた。統計捏造とTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備遅延疑惑について監査院は文在寅前政権当時の青瓦台(韓国大統領府)関係者による犯罪容疑を突き止め、検察に捜査を要請した。

 共に民主党が崔載海院長弾劾案を可決すれば、憲法裁判所の決定が下されるまで崔載海院長の権限は停止となる。そうなった場合、院長の権限は監査委員6人のうち最も長く在籍している趙垠奭委員に引き継がれる。趙垠奭委員は来年1月17日に任期満了で退任予定のため、その後は次に長く在籍しているキム・インヒ委員が権限代行となる。趙垠奭委員は文在寅前政権でソウル高等検察庁長を務め、キム・インヒ委員は文前大統領と共に「検察を考える」という書籍を出版した。二人はいずれも文前大統領が任命した人物のため、監査院長の権限を積極的に行使した場合は主要な監査でかなりの動きが出る可能性もささやかれている。

 具体的には監査院による監査の遅延、あるいは監査処分の決定などに影響が出るとの見方が浮上している。監査院による監査政策、監査計画、処分などを決定する監査委員会は崔載海院長を含む7人の監査委員で構成され、委員の過半数の賛成で議決される。監査委員は現在文前大統領が任命した4人(趙垠奭、キム・インヒ、イ・ミヒョン、李南九〈イ・ナムグ〉)と尹大統領が任命した2人(キム・ヨンシン、兪炳浩〈ユ·ビョンホ〉)だ。うちイ・ミヒョン委員と李南九委員は尹大統領が大統領に当選した直後、文前大統領との協議を経て任命されたため、監査委員会議は事実上3対3の構図で運営されてきたが、キャスティングボートは崔載海院長が行使していた。ところが崔載海院長の権限が停止となれば、残り6人のうち4人が賛成しなければ議決されないため、主要な意思決定ができなくなるなど、監査院の機能がまひする恐れが出てくる。

 監査院は同日声明を出し「崔載海院長就任後に国会統計捏造、西海公務員殺害事件など国家紊乱(びんらん)事件を徹底して監査するなど、国家秩序の根本を正すため厳正に対処してきた」「憲法と法律に反する弾劾推進は国の会計秩序や公職秩序維持機能をまひさせる行為だ」と批判した。監査院はさらに「監査院の独立性と政治的中立性を毀損(きそん)する今回のような試みは憲法の精神に反する不当な圧力だ」「監査院長が弾劾(訴追)された場合、憲法に定められた監査院の機能がまひするが、これは国民が被害を受ける形に帰結するだろう」とも訴えた。

チュ・ヒヨン記者、キム・ギョンピル記者

ホーム TOP