▲バルト海の通信用海底ケーブル2本が切断された現場海域では当時中国の貨物船「伊鵬3」が航行していた。/グラフィック=チョソン・デザイン・ラボ、クォン・ヘイン

 今月17-18日にバルト海の光ファイバーケーブルが24時間以内に2本切断される事件が起こった。韓国時間の17日午後5時にまずスウェーデンとリトアニアをつなぐ218キロの光ファイバー海底ケーブル「BCS東西インターリンク」が切断され、また18日午前11時にはフィンランドのヘルシンキとドイツ北部ロストックを結ぶ全長1200キロの海底ケーブル「Cライアン1」が切断された。Cライアン1を運用するフィンランドの通信会社シニアは「外力による切断だったことはほぼ確実」とコメントした。復旧には数週間かかると見込まれている。

 海底ケーブルを切断したのは誰か。この2本の光ファイバーケーブル切断についてドイツのピストリウス国防相は19日「サボタージュ(意図的な破壊)による可能性が高い」とした上で「これらのケーブル切断が偶然に起こったとは誰も考えていない。具体的に誰の犯行かはまだ分からないが、これは『ハイブリッド戦争行為』であり、ドイツとしては引き続きサボタージュと考えるべきだ」と発言した。

 さらに英フィナンシャル・タイムズは20日「2本のケーブルが切断された事件当時、中国の貨物船『伊鵬3』が現場を航行していた」と報じた。伊鵬3は当時スウェーデンのゴットランド島とリトアニアをつなぐBCSケーブルの上を航行しており、その後もドイツとフィンランドをつなぐCライアン1に沿って航行していた。伊鵬3は中国寧波に本部を置く伊鵬海運が所有する船で、この会社は2隻の貨物船しか所有していないという。

 米国はこれまで「ロシアによるウクライナ侵攻後、中国はロシア軍に直接の支援を行っている」と非難してきたが、バルト海での中国貨物船の活動については言及していない。今回の事件を受け米国務省のミラー報道官は「米国はハイブリッド戦争を非常に深刻に受け止めている」とコメントした。

 ロシアによるウクライナ侵攻を受けてフィンランドとスウェーデンは中立国の立場を放棄し、フィンランドは昨年4月に、スウェーデンは今年3月に北大西洋条約機構(NATO)に正式加盟したと発表した。

 これらの理由からこの事件は背後にロシアの関与が疑われている。NATOに加盟する欧州諸国は以前から「ロシアは西側諸国によるウクライナ支援を阻止するため、サイバー攻撃やインフラ施設への放火など、ハイブリッド戦術を駆使している」と非難してきた。昨年2月にはオランダの情報機関が「ロシアの情報収集船が北海のガスパイプラインや風力発電施設などのインフラを極秘に把握し、サボタージュの準備を進めている」と発表した。

 中国の貨物船は2023年10月にもいかりを下ろした状態で航行し、フィンランドとエストニアをつなぐ海底ガスパイプラインやケーブルを破損した。両国は当時「香港船籍の貨物船ニューニューポーラーベアーの運航経路はガスパイプラインとケーブルの破損地点と一致していた」と指摘した。しかしこの事故が偶発的か、あるいは意図的に行われたかは明言しなかった。今回の伊鵬3もニューニューポーラーベアーもいずれもロシアの港から出港していた。

 ロシアによるウクライナ侵攻後、バルト海ではロシアと中国の船舶による活動が活発化しているため、NATOはこれらの動きを注視している。

 スウェーデンの公共テレビ局SVTやフィンランドの複数のメディアは「19日に伊鵬3はデンマークのグレートベルト・リンク(橋)を過ぎてバルト海から北海に向かった」「デンマーク海軍の2隻の艦艇が伊鵬3をモニタリングしている」と報じた。北欧のバルト海はロシアを含む9カ国に囲まれているため、船舶の航行が活発で多くの海底ケーブルが網の目のように張り巡らされている。

李哲民(イ・チョルミン)記者

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