2026年FIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップ(W杯)北中米大会アジア最終予選で、韓国(FIFAランキング22位)とパレスチナ(同100位)によるB組第6戦が行われた19日、ヨルダン・アンマン国際スタジアム。両チームの選手たちは前半開始前にイスラエル・ハマス(パレスチナ・ガザ地区のイスラム武装集団)戦争で発生した犠牲者に対して黙とうした。情勢が不安定なため、パレスチナは同日のホームゲームを隣国ヨルダンで行った。パレスチナ在住の韓国人約1000人が休むことなく熱い応援を繰り広げた。

 パレスチナ代表選手たちはこれに鼓舞されたのか、序盤から活発な動きを見せた。前半12分、金ミン哉(キム・ミンジェ)が後ろに出したパスは短かった。このため、駆け込んできたパレスチナのFWゼイド・クンバルを意識したのか、GK趙賢祐(チョ・ヒョヌ)はボールをきちんと処理できなかった。その瞬間、クンバルがくるりと回って蹴ったボールが趙賢祐の脚の間をすり抜けてガラ空きのゴールポストへ転がっていった。スタジアムはパレスチナ・ファンの歓声に包まれた。このムードを変えたのは、やはり「キャプテン・ソン」だった。その4分後、左サイドから李明載(イ・ミョンジェ)が放ったパスを、李在城(イ・ジェソン)がDF陣の間に切り込んできたソン・フンミンに渡し、ソン・フンミンはこのボールを運んでペナルティーボックス左側から右足でシュートしてゴールポストの右隅に決めた。これはソン・フンミンのAマッチ通算第51号ゴールとなった。韓国プロサッカーKリーグ大田ハナシチズンの黄善洪(ファン・ソンホン)監督を上回り、歴代得点ランキング2位に浮上したものだ。1位は58ゴールの車範根(チャ・ボムグン)元韓国代表監督だ。

 韓国は後半に入ってFW陣がさらに気を引き締めて逆転ゴールを狙ったが、決着をつけることができず、1-1の引き分けに終わった。第1戦の韓国側ホームゲームで0-0と引き分けたのに続き、再びグループ最下位のパレスチナに足を引っ張られた形だ。洪明甫(ホン・ミョンボ)韓国代表監督は「強い組織力を持ったチームがDF中心に試合展開した時、決定力を引き上げるのが課題だ」と語った。この試合における韓国のボール支配率は74%で、16本のシュートと8本のコーナーキックを試みたが、1ゴールにとどまった。

 B組首位の韓国は勝ち点14(4勝2分)となり、2位のイラク(勝ち点11、3勝1敗2分)に勝ち点3点差で追われる身となった。イラクはオマーンを1-0で制した。グループ1・2位がW杯本大会に直行できるので、3位のヨルダン(勝ち点9)が5位のクウェート(勝ち点3)と1-1で引き分けたのは幸いだった。韓国は来年3月、アジア最終予選の第7戦オマーン戦、第8戦ヨルダン戦をホームゲーム2連戦で行う。

 アジアカップ準決勝敗退、ユルゲン・クリンスマン監督更迭、パリ五輪出場失敗、代表監督選任手続き騒動など、韓国サッカー界は騒動が多い1年だった。洪明甫監督の就任以降、連勝街道をひた走りながら落ち着きを取り戻すかのように見えたが、パレスチナ戦の引き分けで今年最後の国際Aマッチがスッキリしない形で終わった。洪明甫監督率いる韓国は第1戦-第6戦の4勝2分を記録、12ゴールを7人がゴールを決めるなど、得点源が多角化したことは成果だと言えるだろう。しかし、5点も奪われ、DFが不安であることを露呈した。第4戦-第6戦では毎試合失点しており、C組首位の日本(22得点2失点)とは対照的だ。パレスチナ戦で失点した場面では、DFの要である金ミン哉が動揺し、後方が一瞬にして崩れた。その前の段階でチームメイトたちがボールをきちんと処理できなかったのが1次的な原因になった。

 攻撃面ではイ・ガンインが沈黙しているのが惜しまれる。今季、パリ・サンジェルマン(PSG)で6ゴールとフランス・リーグ(リーグ・アン)得点ランキング4位タイにつけているイ・ガンインだが、洪明甫監督率いる韓国代表チーム号では6試合連続で得点がない。オマーンとの第2戦でソン・フンミンのゴールをアシストしたのが唯一の攻撃ポイントだ。今年上半期のアジアカップ3ゴールを含め、6ゴールを記録した時とは様子が違う。W杯本大会での競争力のためにも、イ・ガンインの活用法を考える必要がある。パレスチナ戦で右ウィングとして出場したイ・ガンインは活発にスペースに切り込むというよりはサイドから左足でクロスを繰り返し上げるプレーを見せた。ただし、9本のクロスのうちチームメイトに渡ったのは2本だけだった。イ・ガンインは「PSGと代表チームは違う。与えられたポジションでベストを尽くすだけだ」と語った。

 ソン・フンミンはこの日、有効シュート4本を放つなど、ピッチを縦横無尽に駆け回って同試合の最優秀選手(MVP)に選ばれた。後半36分に黄仁範(ファン・インボム)からパスを受け、GKの脚の間からシュートを放ち、ゴールネットを揺らしたものの、わずかな差でオフサイドが宣言された場面は残念だった。15年間にわたり韓国代表として活躍しているソン・フンミンは同日、131回目のAマッチ出場を果たした。来年は李雲在(イ・ウンジェ、133試合)を抜いて3位に浮上するものとみられる。ソン・フンミンは「今年のアジアカップ以降、本当にいろいろなことがあったが、結果的に見て今ひとつ物足りない姿をお見せしてしまったと思う。いつか代表チームを離れなければならない時に100%満足できる場を作りあげた状態で引退できれば」と語った。

アンマン(ヨルダン)=張珉錫(チャン・ミンソク)記者

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