▲グラフィック=キム・ソンギュ

 韓国が人工知能(AI)で頭脳の役割を果たす「AIチップ」確保に失敗し、国家科学技術研究の中核資源である「国家スーパーコンピューター」の導入が遅れる事態となっている。世界的なテクノロジー企業をはじめ、主要国も参戦したAIチップ確保戦は、一国の科学技術競争力を左右する安全保障問題へとエスカレートしている。業界からは韓国もAIを「国家戦略技術」に指定し、本格的な投資に乗り出すべきだとの指摘が出ている。

 韓国科学技術情報通信部は今月13日、当初来年導入予定だった「国家スーパーコンピューター6号機」の導入を2026年上半期に先送りした。6号機はAI演算に特化したGPU(グラフィック処理装置)を主力とする初めてのスーパーコンピューターで、2929億ウォン(約324億円)の予算で入札公告を出したが、昨年4回とも応札が皆無だった。その間にスーパーコンピューター5号機はシステム使用率が最大90%に達するほど飽和状態に達し、科学者らの利用申請を全て消化できず、一部の研究者は海外機関のスーパーコンピューターを使っているという。韓国科学技術情報研究院(KISTI)スーパーコンピューティングインフラセンター長のホン・テヨン氏は「昨年チャットGPTブームでAIチップ供給が不足し、価格が上昇したほか、ウォン安も進んだためだ」と話した。急いで予算を53%増額し、4483億ウォンを編成したが、政府内部からでも依然としてAIチップを100%確保できる確証はないとの声が漏れる。

■世界各国も参入するAIマネーゲーム

 世界的に繰り広げられるAIチップ確保戦は、AIを巡る競争がいわゆる「マネーゲーム」になっていることを意味する。現在代表的なAIチップである米エヌビディアのAIチップ「H100」の価格は1個5000万ウォン前後だ。最近公開した最先端チップ「ブラックウェル」もオープンAI、マイクロソフト(MS)、メタなどビッグテックと主要国が確保に乗り出し、市場価格がさらに急騰するとの見通しが示されている。昨年からサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)が国家レベルでAIチップ競争に参入したと報じられるほど、AIチップの確保は国家間の安全保障戦争へと様相を変えている。

 全世界はAIの主導権を握るために一斉に資金をつぎ込んでいる。米スタンフォード大の「AIインデックスレポート2024」によると、米国は昨年、AI分野の民間投資だけで672億2000万ドルを投じた。2位中国(77億6000万ドル)の9倍だ。韓国の民間投資は昨年、世界9位の13億9000万ドルにとどまった。

 米ウォール街ではAI投資に飢えている企業の需要を把握した上で、「AIチップ担保ローン」という新たな商品も登場した。フィナンシャル・タイムズによると、ブラックストーン、ピムコ、カーライル、ブラックロックなどウォール街の金融機関が昨年からAIクラウド企業などを対象にAIチップを担保として融資した資金は110億ドルに達する。各社は融資で得た資金で再びAIチップを購入し、投資を続けている。

■AI・クラウドを国家戦略技術に指定し、積極的な投資必要

 業界では「AI3大強国」(G3)を公言した韓国がAI投資競争で後れを取ることを懸念する声が上がっている。今月5日にSKが主催した「AIサミット」でも国内主要AI企業の代表が苦境を訴えた。半導体スタートアップ、リベリオンのパク・ソンヒョン代表は「現在、産業界・学界で一番必要なのはGPUをより安価で安定的に受け取ることだ」とし、「企業の力だけでは限界がある。国家的な後押しが必要だ」と指摘した。カカオのチョン・シンア代表も「今や企業が単独で1兆~2兆ウォンを投資することは難しく、国家が力を合わせても8兆ウォン以上のGPUを確保するのは容易ではない。GPUやIDC(インターネットデータセンター)の確保は国家競争力としてアプローチすべきだ」と話した。

 韓国財界からは、韓国政府がAIとその運営基盤であるクラウドを国家戦略技術に指定し、税制優遇の拡大など本格的な支援に乗り出す必要があるという声が上がっている。半導体、二次電池、ディスプレーのような国家戦略技術に指定されれば、大企業の場合、研究開発に30~40%、施設投資にも15%の税額控除が適用される。既に米国、中国、日本など主要国はAIを国家核心技術に選定し、全面的な支援に乗り出している。財界関係者は「AI・クラウドが半導体に続く新しい成長動力になるよう投資の呼び水が求められる」と語った。

朴淳燦(パク・スンチャン)記者

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