▲11月9日午後4時から民主労総・尹錫悦政権退陣運動本部などが開催した「全国労働者大会・1次退陣総決起大会」で、一部の集会参加者が警察の規制線のフェンスを持ち上げている様子。/写真=読者提供

 韓国警察は、今月9日の全国民主労働組合総連盟(民主労総)主催の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権退陣集会で警察官に対する暴行などにより現場で逮捕された6人について、拘束令状を申請したという。警察側が11日に明らかにした。9日に民主労総の「全国労働者大会・1次退陣総決起大会」が開かれたソウル・世宗大路など都心では、デモ隊と警察が衝突し、警察官105人が負傷した。このうち3人は骨折、靭帯(じんたい)損傷などの重傷を負った。朴槿恵(パク・クンヘ)政権時代の2015年11月、民主労総などが主導した「民衆総決起」で警察官129人が負傷して以来、この10年間では最大規模となる警察・デモ隊の衝突だ。

 韓国警察は、こうした暴力集会を民主労総指導部が背後から組織的に指揮していたと判断し、委員長など指導部7人に対する立件前調査(内偵)に着手した。9日の集会には民主労総の傘下組織など反政府系の数十の団体のメンバーなどが参加し、およそ4万人が集まった。ソウル警察庁は集会現場で、警察官への暴行容疑(公務執行妨害)で民主労総の組合員10人など11人を現行犯逮捕し、6人について拘束令状を申請した。申請を受けたソウル中央地検は、このうち4人の令状を裁判所に請求した。

 民主労総が事前申告した9日の集会空間は、世宗大路の両方向の全車線(9車線)のうち7車線だった。警察は「週末に極度の交通混雑が予想される」として、民主労総指導部に対し世宗大路5車線のみを許可した。ところが民主労総はこれを無視して警察の規制線を越え、世宗大路の両方向の全車線を占拠した。

 この過程は、民主労総のチョ・テウォン組織争議局長が指揮した。彼は午後4時ごろ、集会の壇上から警察の規制線を指し「力強く押し出すようにしたい」「同志たち、前へ進みたい」と言った。すると民主労総の組合員ら数十人が飛びかかり、重さ50キロを超える折り畳み式の規制線フェンスを持ち上げ、警察官の方に向けて押し始めた。これにより、規制線のフェンスに手が挟まれたりデモ隊に押されて転んだりした警察官だけでも数十人に上った。

 チョ局長は「全ての空間を確保、同志たちと共に実践するようにしたい」「前にいる同志たちは(占拠が)十分に進められるように空間を確保してほしい」と言った。警察関係者は「民主労総の組合員らがチョ・テウォン局長の指揮の下、集会が始まる午後4時を前後して一糸乱れず世宗大路の全車線を占拠した」「これは指導部が事前に不法集会を企画していたことを示す明白な証拠」と語った。9日の集会で破損した規制線フェンスだけでも50基に達する。

 当時、集会でデモ隊の一部が突然、警察を「奇襲攻撃」した状況も明らかになっている。ソウル警察庁所属のある機動隊員は「デモ隊およそ20人が突然、私に向かって走ってきて押し倒した」「対峙(たいじ)している状況でもなかったので不意打ちを受け、一緒にいた隊員5人はどうすることもできずに後方に倒れた」と語った。こうした奇襲攻撃でけがをした警察官はおよそ20人いるという。

 警察では、こうした行動が集会参加者らを興奮させ、警察・デモ隊間の衝突を誘発しようというのが民主労総指導部などの意図していた戦略ではないか-とみている。警察関係者は「警察もデモ隊も人間なので、現場で対峙しているときに自分たちの側の人間がけがをしたり、一方的な状況が発生したりしたら興奮するのは避けられない」と語った。こうした場合、デモ隊も「暴力警察は退け」というようなスローガンを叫びながら警察の規制線をもっと手荒に押していくようになり、警察の鎮圧行動も一段と強硬になることは避けられない。また、こうした奇襲攻撃には、後の法廷で証拠として採択される「採証」を避けるため、という狙いもある。警察関係者は「予想外の瞬間に攻撃を受けて採証できていない事例が多い」と語った。

 民主労総は「警察が許可したのは1次退陣総決起の参加予想人員に比して狭小な空間だった」とし「警察が集会場所に移動したり座っていたりした組合員を強制的に押すことで衝突を誘発した」と主張した。進歩(革新)系の最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は、国会の党最高委で「1980年代の、暴力を誘発する暴力警察の姿が思い浮かぶ」「分派、私服警官がデモ隊に潜入してまず火炎瓶や石を投げたら、これをきっかけにいわゆる白骨団がデモ隊を無差別に暴行していた現場のようだ」とコメントした。

チュ・ヒョンシク記者、ク・アモ記者、ソ・ボボム記者

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