▲イラスト=パク・サンフン

 韓国経済をけん引する主力産業である自動車業界が中国の同業にラブコールを送っている。車の共同開発を行い、生産委託を受けられるように工場を明け渡したり、韓国国内に中国メーカーの電池組立工場を設置しようとしたりしている。かつては韓国の新車販売台数の30%以上を占めたこともある中堅メーカーだが、最近のシェアは10%前後に低下している。世界の自動車市場で急成長している中国車の力を借りて新車を開発し、売上アップ、シェア防衛を図る狙いだ。

 韓国の中堅自動車メーカーのKGモビリティー(旧双竜自動車)は10月21日、中国の奇瑞汽車と協力し、スポーツタイプ多目的車(SUV)の新モデルを発売すると発表した。奇瑞汽車が開発したプラットフォームをKGモビリティーが有償で利用する方式だ。プラットフォームは車体、エンジン、サスペンションなど自動車を構成する主要部品の基礎設計を意味し、開発に少なくとも数千億ウォンかかる。そうした費用と時間を投資する余力がない状況で、既に検証済みの中国メーカーのプラットフォームを利用することにしたのだ。これに先立ち、昨年11月、KGモビリティーは中国の比亜迪(BYD)とハイブリッドシステムを共同開発し、新車に搭載。韓国に比亜迪の電気自動車(EV)用電池組立工場を建設することも決めた。ルノーコリアも中国の吉利汽車と協力し、今年下半期に新モデルを発売した。

■中国との提携で危機から巻き返し

 次世代自動車への転換期を迎え、世界的に競争が激化する中、韓国の中堅自動車メーカーが中国車の力を借りて、巻き返しを図ろうとしている。韓国の完成車メーカー5社のうち、現代自動車と起亜を除く中堅3社(KGモビリティー・ルノーコリア・GM韓国事業所)はここ数年、業績が悪化の一途をたどってきた。自動車市場情報会社のカーイズユーデータ研究所によると、韓国の新車販売に占める中堅3社のシェアは5年前の20%前後から昨年には約半分に低下した。今年第1~3四半期(1~9月)には8.3%となり、初めて10%を割り込んだ。輸出がほとんどを占めるGM韓国事業所とは異なり、国内販売比率が50%前後のKGモビリティーとルノーコリアはとりわけ困難な状況にある。KGモビリティーは昨年第3四半期に10年ぶりに黒字転換したが、今年第3四半期に400億ウォン前後の営業損失を出し、再び赤字に転落した。

 高金利・物価高に内需低迷も加わり、独自に新車を投入することが難しくなり、EVやハイブリッドなどの技術でもトップ企業との格差が拡大した状況だ。市場の不確実性もある。世界の自動車市場は数年間、内燃機関車からいったんEVにシフトしたが、最近は充電の不便さを理由に需要がハイブリッド車に集中している。国内中堅メーカーは独自の研究開発だけでは変化に追い付けない実情があり、価格面と技術面で競争力を持つ中国企業にラブコールを送り始めたのだ。

 KGモビリティーが奇瑞汽車のプラグインハイブリッド(PHEV)プラットフォームの利用を決めた理由もそこにある。双竜自時代の1997年、メルセデス・ベンツのプラットフォームを借りて「チェアマン」を発売してから17年ぶりだ。KGモビリティーは比亜迪と共同開発したハイブリッド車も来年発売する予定だ。ルノーコリアが今年8月、約4年ぶりに発売した新車「グランコレオス」は、吉利汽車との協力で誕生した。吉利汽車がスウェーデンに設置している研究開発センターが確立したプラットフォームを利用し、吉利傘下のボルボとフランスのルノーグループのハイブリッド技術を採用した。

 中国との提携も多様化している。KGモビリティーは昨年11月、昌原工場の敷地に比亜迪のバッテリー組立工場を建設する契約を結んだ。 既にEV「トレス(TORRES)EVX」に比亜迪のバッテリーを搭載しているが、今後は比亜迪のバッテリーを韓国国内で組み立てる構えだ。ルノーコリアの釜山工場では、来年から吉利汽車傘下のポールスターのEVを受託生産する。

■価格競争力狙い中国との提携増加傾向

 韓国では過去に中国メーカーとの協力に対する抵抗感あったが、最近の状況はやや異なる。ルノーコリアの「グランコレオス」は10月に韓国国内で5385台を売り上げた。前月に比べ38%増で、ライバルの起亜ソレント(7962台)、現代自サンタフェ(7294台)を猛追している。グランコレオスに支えられ、ルノーコリアの1~10月の国内累計販売台数は前年同期比37%増の2万5437台と好調だった。

 結局は価格が重要となる。グランコレオスの価格は3495万ウォンからで、ソレントとサンタフェハイブリッド(3900万ウォン前後)に比べ安い。中国との共同開発モデルという認識があり、発売前にはインターネット上で懸念の声もあったが、結果的に消費者は価格競争力を支持した。

 今年上半期、韓国のEVで米テスラが現代自と起亜自の販売台数を上回ったことも、中国生産モデルを韓国市場に持ち込むことで価格を下げたためだった。 性能が多少劣っても割安なLFP(リチウムリン酸鉄)電池を搭載し、米国生産モデルに比べ2500万ウォンほど安い「モデルY」を発売したのだ。自動車融合技術院のイ・ハング院長は「韓国の中堅企業は、中国と協力して技術を学びながらも、関係において主導権を奪われないための対策を模索すべきだ」と指摘した。

イ・ヨングァン記者

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