韓中関係
韓国大使館も事前に把握せず…中国が突然の「ビザ免除」に踏み切ったワケ
中国政府が1日に韓国人などへのビザ免除を突然発表した背景について「米大統領選挙後を見据え、来年予想される韓中首脳会談に備えるため」との見方が有力視されている。来年のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は10月末あるいは11月初めに慶尚北道慶州で予定されているが、その際に中国の習近平・国家主席の来韓と韓中首脳会談が実現する可能性も高い。韓国が中国のビザ免除対象国に含まれるのは1992年に両国が国交を回復して以来、今回が初めてだ。とりわけ今回のビザ免除が相互ではなく中国側が一方的に行った点も注目されている。
中国外交部(省に相当)の林剣報道官は1日「中国人と外国人の往来の便宜を図るため、ビザ免除適用国家の範囲を拡大する」と発表した。これに伴い8日から韓国を含む9カ国の一般旅券所持者に対して中国入国時のビザが免除される。来年12月31日までの期間限定だが、今後この期限が撤廃される可能性も高い。現在中国が一方的にビザ免除対象国としているのは29カ国だ。
中国は今回の発表を通じて韓国に友好的なメッセージを発したとの見方もある。今回対象となった9カ国のうち、韓国以外はノルウェー、フィンランド、デンマークなど欧州諸国で、これまで中国の外交政策で韓国とひとまとめにされてきた日本は含まれていない。中国は韓国人に対して第三国に向かう際に最長で144時間滞在できる制度をすでに導入しているが、全面的なビザ免除は今回が初めてだ。
そのため中国は米大統領選挙を見据え今年の初めから韓国との関係改善に取り組み、その過程で今回のビザ免除に踏み切ったとの見方もある。ある外交筋は「中国は米大統領選後に韓米日がさらに結束し、韓中両国が外交的に一層疎遠になることを懸念している。そのため今年の初めから韓国とビザ免除などに向けた協議を続けてきた」と伝えた。5月の韓中日首脳会議の際に中国のナンバー2である李強首相が来韓し、その後も韓中外交安保対話(6月)や先月17日には1.5トラック(半官半民)協議体である第1次韓中友好未来フォーラムも開催され、中国と韓国による高官クラスの交流は活発に行われてきた。とりわけ北朝鮮とロシアとの軍事協力強化により、北朝鮮と中国との関係がかなり悪化しているため、中国が韓国と関係を改善し北朝鮮に警告のメッセージを送る必要性もあったとみられる。また来年慶州で開催されるAPEC首脳会議の際に韓中首脳会談の実現も予想されているが、これも中国側にとっては関係改善が目的と考えられる。
一部では「中国で景気後退が続く中、海外からの投資や外国人の往来が必要と考え韓国に対してビザ免除に踏み切った」との見方もある。韓国と中国はかつて年間1000万人以上の往来があったため、ビザ免除に伴う経済効果もそれだけ大きいと予想したとの見方だ。中国・浙江師範大学の沈詩偉・招聘研究員は「韓国人へのビザ免除により年末年始には韓中の旅行需要は一気に高まるだろう」「韓国人に対して中国国内でのビジネスや旅行を促す目的もある」との見方を示した。
今回のビザ免除は両国が同時に行ったものではないため、中国では発表直前まで結論が出ていなかったようだ。北京の韓国大使館関係者は「今回の発表については中国外交部から大使館側に事前の連絡はなかった」と明らかにした上で「4日からビザ免除に伴う実務面での協議が始まる計画だが、ビザ免除対象国で犯罪経歴のある者などは例外となる可能性もあるため、具体的な内容について確認したい」とも付け加えた。
北京=李伐飡(イ・ボルチャン)特派員