▲仁川市中区の陸軍第17師団第3警備団で装甲車に乗る韓国野党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表。31日午後撮影。/聯合ニュース

 韓国野党・共に民主党は連日「海外に1人でも兵士を送った場合、それはすなわち派兵であり、国会の同意が必要だ」と主張している。ロシアに送り込まれた北朝鮮軍の動向を監視するため韓国政府は戦況分析チームの派遣を検討しているが、これに対して共に民主党は「憲法の規定通り国会の同意を受けるべきだ」としてブレーキを掛けているのだ。憲法第60条には「国会は宣戦布告、国軍の海外派遣または外国軍隊による大韓民国領域での駐留に対する同意権を持つ」と記載されている。

 この問題について憲法学者は「憲法で国会の同意を規定している『国軍の海外派遣』は戦闘を目的とする武装軍隊の派兵を意味しており、共に民主党の主張には無理がある」と指摘する。実際に盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権当時もイラクに韓国軍視察団が派遣されたが、この時は国会の同意を経ていない。1万人以上とされる北朝鮮軍がロシアでウクライナと戦闘を行う可能性が高いため、ウクライナに戦況分析チームを派遣し北朝鮮軍の戦力、実態、ドローン戦術など現代戦の実態を把握する機会を共に民主党は「派兵」という論理で妨害しているため、あまりに政略的との指摘も相次いでいる。

 陸軍大将を務めた共に民主党の金炳周(キム・ビョンジュ)最高委員は31日にSBSラジオに出演し「(兵士)1人でも送った場合は派兵だ」「国防部(省に相当)長官が安全保障上の危機を招き、法律に反してでも行かせるのであれば、これは当然弾劾の理由になるだろう」と主張した。共に民主党も同日論評を出し「金竜顕(キム・ヨンヒョン)国防部長官は『国軍の海外派兵業務訓令』を根拠に、個人単位での小規模派兵は長官の決定で可能と主張している」「訓令が憲法を無力化し得るという主張は違憲」と主張した。金炳周最高委員は「戦争の火種を韓半島に持ち込む愚かな決定を直ちにやめよ」とも述べた。

 共に民主党が言及した「訓令」とは「国軍の海外派兵業務訓令」のことだ。これによると「部隊単位の海外派兵」は憲法に基づき国会の同意が必要だが「個人単位の海外派兵」は国会の同意なしに国防部長官の決定で可能になる。金竜顕長官は30日(現地時間)、米国で開催された韓米安保協議会(SCM)直後の会見で「小規模の人員派遣については長官が判断することになっている」と説明した。

 陸軍中将を務めた与党・国民の力の韓基鎬(ハン・ギホ)議員も本紙の電話取材に「金炳周議員も韓国軍にいた当時、国会の同意なしに何度も海外に派遣された。だとすれば当時金炳周議員を派遣した国防部長官らも全て弾劾されるべきだった」「韓国軍は参戦ではなく視察団を派遣するだけだが、なぜこれに反対するのか」と疑問を呈した。金炳周最高委員は将校だった当時、米軍中部司令部の韓国軍協力将校などとして海外に派遣された経歴がある。

 憲法学者らも「小規模戦況分析チームや視察団の派遣を国会の同意が必要な海外派兵と解釈するのは無理がある」と指摘する。東国大学のキム・サンギョム名誉教授(憲法学)は「(憲法上、国会の同意が必要な国軍派兵は)武装軍隊の派兵を意味するもので、派兵とは戦闘を目的とする軍隊の派兵を意味する。軍人を海外に送ることを無条件派兵と解釈するのであれば、各国の大使館に派遣される武官らも国会の同意が必要という論理になる」と説明した。慶煕大学法学専門大学院のホ・ヨン碩座(せきざ)教授(寄付金によって研究活動を行えるよう大学の指定を受けた教授)も「憲法第60条は韓国が外国と戦うために宣戦布告するとか、韓国が外国に戦闘兵力を派遣する際に国会の同意が必要という意味だ」「(戦況分析チームは)戦闘が目的ではないので、憲法で国会の同意を定めた派兵には該当しない」との見方を示した。

 軍事的な観点からも「ウクライナとロシアの戦争に参戦した北朝鮮軍に対する分析は必要」との指摘も相次いでいる。今回はドローンが本格的に活用される現代戦を視察、分析する機会であり、また韓国軍と対峙(たいじ)する北朝鮮軍の戦闘力を把握できる重要な機会にもなるからだ。韓国国防部によると、韓国軍はイラク戦争など海外の複数の戦争に視察団や戦況分析チームなどを常に派遣してきたという。しかしこれら戦況分析チームの派遣が今回のように政治問題化することはなかった。

キム・テジュン記者、李世永(イ・セヨン)記者

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