▲東京・渋谷区の長谷部健区長。

 「日本の若者の間で『渋谷がハロウィーン(10月31日)前後に過度な制限をする』という批判があるのは知っています。でも、いくらハロウィーンだとしても、渋谷が夜明けまでお酒を飲むパーティー会場になるのを放っておくよりは、安全を保つことの方がずっと重要ではないでしょうか」

 このほど東京・渋谷区役所の庁舎内で会った長谷部健区長(52)は「韓国・ソウル梨泰院雑踏事故はとても悲しい事故。渋谷は(2年前に同事故が発生した) 梨泰院から教訓を得て、ハロウィーンでの飲酒などを徹底的に制限しています」と語った。そして、「今年も渋谷はハロウィーンをお休みします」と言った。ハロウィーンの時期は日本人はもちろん、外国人観光客も渋谷に来るなと呼びかけているという意味だ。

 「日本のハロウィーンの聖地」だった渋谷区は昨年に続き、今年もハロウィーンの時期に徹底した「路上飲酒制限」と「雑踏事故対策」を実施し、ハロウィーンが近い週末と当日に事故は発生しなかった。今年も昨年とほぼ同じ規模の警戒人員を投入、万一の事態に備えた。昨年は7000万円以上を投入し、渋谷駅周辺の10カ所に警備会社の人員185人と区役所職員約130人を動員した。警察も渋谷に機動隊員を配置した。

 長谷部区長は「今年10月1日には年間を通じて渋谷の公園や路上など公共の場所での飲酒を禁止する条例を施行しました」と言った。渋谷区はまた、いわゆる「ハロウィーン週末」である先月26日とハロウィーン当日の31日に、午後6時から翌日午前5時にかけて渋谷駅周辺のコンビニエンスストアなどで酒類の販売を自粛するよう要請した。先月30日には渋谷駅の名所「名犬ハチ公」の銅像周辺を高さ2-3メートルの白い布で囲み、封鎖した。

-渋谷区が自ら「ハロウィーンの聖地」であることを放棄するのは難しかったのでは?

 「ソウル梨泰院雑踏事故を見て、事故は防止することが何よりも重要だという事実に気付きました。渋谷駅前には(梨泰院のように)構造上、人が集まると非常に危険な地域があります。マクドナルド前の交差点は、広い歩道が急に狭くなります。ソウル梨泰院雑踏事故のような事故が発生しないようにするには徹底した備えが必要です。(ハロウィーンの時は)警察が機動隊を積極的に投入し、警備を強化しています」

-隣国の事故を見て、直ちに対処した理由は?

 「韓国の事故がひとごとではなかったからです。実はハロウィーンのたびにあまりにも多くの人が集まっていて、(渋谷も)危ないという認識がありました。(渋谷区内の)原宿ではヒヤリとした瞬間も何度かありました。交流サイト(SNS)で『人気アイドルが現れた』と拡散され、突然大勢の人々が集まったんです。幸い命にかかわる事故はありませんでしたが、救急車が出動して、病院に搬送された人もいました。渋谷の街ではこのようなことがいつまた起きてもおかしくありません。特にハロウィーンは人々がお酒を飲むから規制するのがもっと難しくなります」

-日本の若者たちや店の人々の間に不満はない?

 「地域住民と商人の安全と生活を最優先に考慮すべきだと思います。街での無秩序な行動は許されません。訪問者が楽しむ空間も重要ですが、規則やマナーを守ることが前提となっていなければなりません。いくらハロウィーンだとはいえ、結局(渋谷は)夜明けまで酒を飲むパーティー会場になってしまっていました。多少威圧的に受け取られても、警備を強化しないと危険です。安全の方がはるかに重要です」

-外国人観光客もハロウィーン前後に多数訪れるのでは?

 「ハロウィーンの時は70-80%が外国人だという印象があるほどです。『渋谷は路上で騒いでお酒を飲んでもいい場所』だと誤解しているのでしょうか。渋谷はそんな場所ではないということを伝えようとしています。韓国人観光客の皆さんにもこのような点をお願いしたいです」

-渋谷区が路上飲酒を全面禁止する条例まで施行して以降の効果は?

 「条例は10月1日に施行されました。その後、路上での飲酒が3分の1程度に減りました。以前は1日平均721件、路上飲酒者の発見がありましたが、条例施行後は217件に減りました。午後6時から翌日午前5時まで、渋谷駅周辺を10人でパトロールしています。週末には18人で巡回しています。外国人が路上で酒を飲んでいたら、そこへ行って飲酒しないように要請することもあります」

-惨事が起こった梨泰院に伝えたい言葉は?

 「梨泰院を愛する人が多いので、うまく乗り越えていけると思います。痛みを乗り越えて活気を取り戻せるよう祈っています。どうかまた元気になってほしいです」

成好哲(ソン・ホチョル)東京支局長

ホーム TOP