政治総合
韓国選管、総選挙前の世論調査操作51件確認…一体何が行われていたのか
今年4月に行われた韓国総選挙を前に実施された世論調査のうち51件で「世論操作」が確認されたことが10月28日までに明らかになった。4年前の2020年の総選挙(32件)を大幅に上回った。
中央選挙管理委員会傘下の中央選挙世論調査審議委員会によると、今年の総選挙を機に実施された世論調査では「調査結果の歪曲(わいきょく)・操作」が24件、「虚偽・重複回答誘導」などが27件あった。問題の調査は、特定候補に有利になるよう、年齢別に加重値を適用したり、歪曲された標本を使ったりしていたことが明らかになった。
今年の総選挙を控えた時期には、計4127回の世論調査が行われた。254選挙区で1選挙区当たり16.2回の世論調査が行われた計算になる。2020年の総選挙(3191回)に比べると約30%増えた。専門家は「世論調査の結果、数値を巧妙に操作し、審議委が摘発できなかったケースも相当数あるだろう」と話した。
政界と学界は、雨後のタケノコのように誕生した世論調査会社が調査を乱発し、信頼性を担保できない世論調査が政党の候補公認と選挙結果に影響を及ぼす現象が定着したと分析した。ソウル大の李準雄(イ・ジュンウン)教授は「候補を世論調査で決めるシステムが定着し、政党が世論調査に振り回されている状況だ」と話した。ある世論調査専門家は「世論調査の乱発と歪曲が民主主義の根幹である選挙制を脅かすレベルに達したようだ」と話した。
選管の世論調査検証システムをもっと強化すべきだとの指摘も出ている。政党、放送局、新聞社、インターネットメディア(1日平均ユーザー10万人以上)などには世論調査の事前申告を免除している公職選挙法を改正する必要性が叫ばれている。今年の総選挙では1555件の世論調査で事前申告が免除された。
中央選管は今回、審議委が「世論操作」と判断した51件について、調査を実施した世論調査会社の社名は公表しなかった。しかし、世論操作の手口は、業界では既に公然の秘密だ。専門家は「巧妙に世論調査の数値をいじれば、専門家も簡単には把握が難しい」と話した。
■マッサージ
韓国ではそうした世論操作の手口がさまざまな隠語で呼ばれる。性別、年齢、地域などによって回答率が一定しない際に適用する加重値に手を加える行為は「マッサージ」と呼ばれる。
審議委は公表を前提とした世論調査の加重値の倍率を0.7倍から最大1.5倍に制限している。この倍率次第で特定の政党・候補に有利な世論調査結果が出る可能性がある。例えば、相対的に野党支持傾向が強い20代女性、与党支持傾向が強い60代以上男性にどんな加重値倍率を適用するかで結果が変わる。2018年の統一地方選では、30代に規定を上回る加重値倍率(2.3倍)を適用した世論調査を実施した世論調査会社の代表が審議委に摘発されている。
問題は公表されない世論調査の場合、加重値倍率に関する規定がないことだ。大統領選の予備選過程の2021年9月には、ジャーナリストのミョン・テギュン氏が世論調査会社である未来韓国研究所の職員カン・ヘギョン氏に対し、「若者の回答の係数を上げ、洪準杓(ホン・ジュンピョ)候補より尹錫悦(ユン・ソンニョル)候補の数字が出るようにすべきだ」と語ったことを巡って「マッサージ」疑惑が指摘された。それについて、ミョン氏は「カン氏がミスした部分を修正しようとしたものであって、私個人が参考しようと設定した調査だった」と反論した。
■標本クッキング
無作為に抽出される標本に特定の傾向を持つ集団を混入する方式は「標本クッキング」と呼ばれる。世論調査は通常、通信会社から携帯電話の仮想番号の提供を受けて実施する。ところが、そこに自主的に構築したデータベースを混ぜれば、調査結果が歪曲される可能性がある。既に政治的傾向が確認された集団を調査対象に加えれば、希望通りの結果を導くことができるのだ。
2022年に大邱市長選出馬予定者の世論調査を実施したある世論調査会社は、大邱市選挙世論調査委員会から提供された仮想番号2万5000個に独自に保有している電話番号1523件を混入させた疑いで摘発された。地方選挙出馬を予定していたA氏は標本クッキングの手口に関連し、「ある世論調査会社が『自社が保有するデータで世論調査結果を調整できる』と訪ねてきたことがある」とし、「世論調査を『調整できる』という話も初めて聞いたが、その代価として数億ウォンを要求してきた」と証言した。
■番号入手
世論調査実施期間に電話番号を大量に確保する手法だ。それによって、特定の政党·候補を支持する傾向が明確な集団が世論調査に接触する機会が増える。番号取得は世論調査会社ではなく、政党・候補サイドが行うことが多い。
最近では群山市障害者体育会の関係者が共に民主党の申栄大(シン・ヨンデ)議員の選挙運動を支援するため、、「世論調査回答用」として100件余りの携帯電話契約を結んだとして起訴されたのが代表例だ。2012年にはソウル市冠岳乙選挙区の野党候補一本化当時、統合進歩党の李正姫(イ・ジョンヒ)代表の側近が有線電話190回線を開通させ、携帯電話に転送させたとして起訴された。裁判所はそうした手口で他の選挙区に住む人など本来資格外の党員を動員し、世論調査に介入したと判断だ。
■虚偽回答を誘導
世論調査の対象者が虚偽の回答を行うよう誘導するケースも多い。世論調査の電話がかかってきた際、割り当て分に足りない性別、年齢、地域集団に属すると虚偽の回答をさせる手法だ。
民主党の鄭東泳(チョン・ドンヨン)議員は昨年12月、支持者に「20代は電話に出ない。皆さんが20代になってほしい」と発言し物議を醸した。地方選の世論調査を控えた2022年4月、国民の力の金光ヨル(キム・グァンヨル)盈徳郡守の選対関係者は、メッセンジャーアプリのチャットルームで「特定世代の女性だと回答してほしい」と求めていたことが明らかになった。
キム・ヒョンウォン記者