▲グラフィック=キム・ソンギュ

 韓国では就業者数の年代別分布が年齢が高いほど増える逆ピラミッド構造へと変化した。1980年代には20代以下の就業者が最も多く、30代、40代、50代と年齢が高まるほど減少するピラミッド構造だったが、40年間でピラミッドがひっくり返ったのだ。少子高齢化が長期化する中、80代前半まで働かなければならないという認識が広がり、仕事を探す高齢者が増えた結果だ。

 韓国統計庁によると、今年9月に法律上の定年を過ぎた会社員や自営業者など60歳以上の就業者数が初めて他の年代を上回り、最多となった。60歳以上の就業者数は前年同月比27万2000人増の674万9000人で、1982年7月の統計開始以来最多を記録した。60歳以上の就業者が全ての年齢層で最も多く、以下は50代(672万人)、40代(619万1000人)、30代(547万3000人)、15~29歳(371万人)の順だった。8月までは50代(671万3000人)が60歳以上(665万人)を上回っていたが、9月は60歳以上が50代を抜いた。統計を取り始めて42年2カ月で初だ。

 全羅南道の造船所で働くBさん(60)は、今年定年を迎えたが、来年も働く予定だ。会社が定年が過ぎた社員を契約職として再採用する「高齢者継続雇用制度」を採用しているためだ。Bさんは「気力が50代当時に比べ落ちているわけではないのに仕事をしない理由はない。会社は70歳までいてほしいと言っている」と話した。

■ピラミッド→ダイヤモンド→逆ピラミッド

 就業者数の年代別分布がピラミッド構造から逆ピラミッド構造に逆転したのは、世界で最も速いペースで進行する少子高齢化が続いた結果だ。平均寿命が68歳と低く、合計特殊出生率が1.74人だった1984年までは、年齢が低いほど就業者が増えるピラミッド構造がはっきりと表れていた。当時60歳以上の就業者は100万1000人で、50代(212万7000人)の半分にも満たず、20代以下(475万9000人)の21%にとどまった。しかし、医療技術の発達で寿命が延びる一方で少子化が進み、2000年代に入ると30、40代就業者数が60代以上、20代以下を上回るダイヤモンド構造を帯び始めた。

 その後、第1次ベビーブーム世代(1955~1963年生まれ)が60代となった2010年代半ばから60歳以上の人口と就業者数がそろって急増している。2000年に521万2000人だった60歳以上の人口は、2017年に1024万5000人となり、初めて1000万人の大台を超えた。今年は平均寿命が84.3歳に延び、合計特殊出生率が0.7人台に低下するほど少子高齢化が加速し、就業者数の年代別分布が初めて逆ピラミッド構造に変化した。

 高齢者が子どもに負担をかけずに老後に責任を負いたいという認識を持ち、なおかつ80万ウォン台前半という毎月の平均年金受給額では老後に備えられないという不安感が次第に高まった結果だ。 韓国統計庁による今年5月の調査によると、55~79歳の人口1598万3000人のうち、国民年金や個人年金、住宅年金など年金を少額でも受給している人は半数をわずかに超える817万7000人(51.2%)にとどまった。年金を受け取る高齢層の平均受給額は月82万ウォン(約9万円)で、個人再生手続きを担当する回生裁判所が判断する一人暮らし世帯の最低生活費(133万7067ウォン)の61.3%にとどまる。韓国開発研究院(KDI)のキム・ジヨン研究委員は「年金の増加ペースが遅い半面、高齢者の貧困問題が深刻な点も韓国で高齢層就業者が増加する原因の一つだ」と話した。

■20代以下を上回った60代以上の雇用率

 人口に占める就業者数の割合を意味する雇用率は60歳以上で今年9月に過去最高の47.4%を記録した。30代(80.4%)、40代(79.6%)、50代(77.6%)には及ばないが、新社会人の15~29歳(45.8%)に比べ高い。今年3月までは60歳以上の雇用率(45.5%)は15~29歳(46.2%)より低く、全年代で最低だったが、4月から6カ月連続で20代以下を上回った。

 高齢の就業者が増え、定年を過ぎた高度熟練者の経験と専門性を生かす良質の働き口を増やすべきだとの指摘が出ている。漢城大経済学部のキム・サンボン教授は「高齢者雇用に投じる予算を継続雇用企業に対するインセンティブに集中すべきだ。年収3000万ウォン程度の進路相談教師など、引退した高齢者の資質を十分に活用できる働き口を増やさなければならない」と指摘した。

鄭錫愚(チョン・ソクウ)記者、権純完(クォン・スンワン)記者

ホーム TOP