寄稿
「最も韓国語の歌詞が美しい歌」1位 韓国大衆歌謡史に輝く珠玉の名曲イ・ソラ『風が吹く』に浸る【寄稿】
「それぞれ違う思い出がつづられていく」。歌手イ・ソラの言う通りだ。恋に破れた友人の言い分をたっぷりと聞いてやった人々が、家に向かう道中、彼らだけでひとこと言う。「あっちの言い分も聞いてみなきゃ」。自分にとって何でもなかったことが、相手にとっては癒えない傷になることもあるし、相手にとって思い出かもしれないことが、自分にとっては退屈な時間だったかもしれない。だから、イ・ソラはこう歌う。「愛は悲劇 あなたは私じゃない」
「世間は昨日と同じなのに 私一人だけこんなに変わっている」。これもやはりイ・ソラが書いた歌詞の通りだ。悲しみをさらに悲しくするのは、自分以外の世間が昨日と同じように回っているという事実だ。大人になればなるほど、その実感は強くなる。子どものころなら、小さな傷でも周囲の人々が関心を示してくれる。だが、大人になると、自分で何とかうまく乗り越えなければならないものだと思ってしまう。でも、痛くてつらいのは子どもも大人も同じだ。大人になったからと言って、苦痛の感じ方が鈍くなるわけではない。
若かったころ、この歌を初めて聞いた時は「空がぬれる」という歌詞が好きだった。雨が降るという意味だが、実は涙があふれる状況を例えて表現したものだと思っていたためだ。AをAと言わずにBと言えば洗練された印象になると学んだ。そう言えば、「別れ」などの直接的な表現は曲の後半部に登場する。最初はただ『風が吹く』という一言で始まる。
「あなたの後ろ姿が冷たかったような『気がする』」と表現した部分からは繊細さが感じられる。その後に続く「全部分かったような『気がする』」という言葉の中には、あの時は気づかなかった…という意味が含まれているためだ。もしかしたらこの恋は、冷たい男と、その男のことを激しく愛した女の、平行線をたどるような片思いだったのかもしれない。そのような想像をしながら聞く味わいがある。
この曲『風が吹く』(2004年リリース)は2014年の「ハングルの日」(10月9日)にちなんで詩人14人を対象にアンケートが行われた「歌詞が美しいミュージシャン」ランキングで1位に選ばれた。もう1曲、歌手Yozoh(ヨジョ)の『私たちは線のようにじっと横になって』も1位に選ばれた。詩人に限らず、ミュージシャンから文人までと範囲が広かった2011年の「ハングルの日」ランキングでも『風が吹く』は1位だった。いずれも2000年代以降に発表された曲を基準にしており、アンケート調査の対象者がそれほど多くなかったという限界はあるものの、2度も1位に選ばれたということは、韓国の大衆歌謡曲を代表する歌詞の一つだということだろう。しかも、このようなランキングは少数の人々が選んだものだとしても影響力を持つ。今後行われる歌詞関連アンケートでも、『風が吹く』は真っ先に候補に上がる曲になるだろう。
10月9日はハングルの日だった。秋の訪れを感じ、歌詞が美しい韓国語の歌の世界に浸るのにピッタリの時期だ。文人たちも認めた歌詞であり、一編の詩のような深みと余韻、そして味わいを持つ『風が吹く』を聞くのはいかがだろうか。
イ・デファ(音楽評論家)