▲最近、中国北京で取材に応じた結婚写真廃棄業者の代表、劉偉さんはシュレッダーで結婚写真の額縁を破砕する様子をスマートフォンで見せてくれた/李伐飡特派員

「北京だけで年間10万組が離婚するのを見て、『結婚写真粉砕』という事業モデルが浮かびました」

 9月25日、北京郊外で取材に応じた結婚写真廃棄専門業者の劉瑋代表はそう語った。劉さんは昨年3月から河北省の工場で結婚写真、ドレス、指輪などの廃棄を有償で請け負っている。過去1年間で2600件もの結婚の記憶が彼の手によって葬り去られた。中国では結婚する際に数千元をかけて結婚写真を撮るが、離婚すればその処理が悩みの種になる。アクリル、ガラス、金属など硬い材質なので破砕が難しく、サイズが大きいため団地のごみ箱には入らない。中国では写真を燃やすことがタブーであるため、それも困難だ。劉さんは「今後中国では結婚の痕跡を消すことが美容室やジムのように日常的なサービスになるだろう」と話した。

 中国の離婚率は非常に高く、アジアでも上位圏だ。離婚率が比較的高い韓国よりもはるかに高い。高齢化、非婚化と共に中国の人口減少をあおるもう一つの危機要因としても指摘される。人口1000人当たりの年間離婚率(粗離婚率)をは、2002年の0.9件から、09年に3.36件、20年には3.09件へと上昇した。これに対し中国政府は21年、離婚に先立ち30日間の熟慮期間を設定する強硬策を出し、それ以降は離婚件数が一時的に減少(21年2.01件、22年2.04件)したが、昨年再び前年比で25%増加し、粗離婚率は2.6件を記録した。韓国は22年と23年がいずれも1.8件だった。

 起業家は「離婚関連産業」に群がり始めた。保険会社の営業出身の劉さんが昨年、40万元(約840万円)をかけて粉砕機2台、圧縮機1台を購入し、結婚写真廃棄専門業者を設立したのが代表的だ。メッセンジャーアプリのウィーチャット、動画投稿サイトの抖音(中国版ティックトック)、電子商取引(EC)サイトの淘宝(タオバオ)で注文を受け、北京近郊の河北省にある工場に結婚写真を送付してもらい、廃棄作業を行う。依頼品が入った箱には、たまに結婚写真以外に宝石の指輪が入っていることもあるという。

 

 廃棄過程は撮影して顧客に送る。価格は重さによるが、25キログラム未満の場合、59~199人民元(約1240~4180円)だ。北京市、広東省、江蘇省、上海市などに住む富裕層の20~40代の離婚女性が顧客の70%を占めるという。インターネット上に一部の粉砕映像を掲載して宣伝もするが、写真に映った顧客の顔にスプレーをかける方が映像のモザイク処理より簡単だという理由で「スプレー作業」も一つの工程となった。離婚する夫婦の最後の記念写真を撮る「別れの写真専門業者」も増えている。

 

 中国で離婚が急増する理由は大きく3点に要約される。第一に景気低迷とコロナの後遺症が続き、失業、所得減などが家庭内のストレスを高めた点だ。第二に生活費と住宅価格が急速に上昇し、両親への財政的依存が大きくなり、夫婦の独立性が低下したことこもある。北京、上海など大都市の住宅価格はソウルとほぼ同じか割高な水準で、中国で子ども1人を成人まで育てるのにかかる費用は1人当たり国内総生産(GDP)の6.3倍と集計され、韓国(7.79倍)に次ぐ世界2位だ。第三に過去とは違い、中国で離婚した女性も支障なく社会生活ができるという認識がソーシャルメディアで広がり「離婚への恐怖」が消えた面がある。共働きで子どもを持たないDINKs(ディンクス)の夫婦が増え、離婚が増えたとの見方も存在する。中国でDINKsの夫婦は60万組以上いるが、今後5年以内に300万組に増えると試算されている。

北京=李伐飡(イ・ボルチャン)特派員

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