▲イラスト=イ・チョルウォン

 昨年3月、釜山で小学2年の担任として勤務していたミン・ジヨンさん(仮名、30)は授業中に他のことをしているAちゃんに「Aはよそ見をせずに黒板を見ようね」と諭し掛けた。それでもAちゃんが集中しなかったため、立たせて教科書の一部を音読させた。

 このことを知ったAちゃんの両親は、ミンさんを児童虐待の疑いで警察に通報した。子どもに羞恥心を感じさせたという理由からだった。1カ月間にわたる調査の末、容疑なしの処分が下されたものの、両親は教育庁に再び嘆願書を提出した。その過程で「あなたのような人がなぜ担任をやっているのか、今すぐ辞めなさい」などの暴言を浴びせられたミンさんはノイローゼになり、しばらく精神科に通うほどだった。その年の2学期が始まる直前、担任を他の方にお任せする旨を学校側に伝達した。

 自ら担任を辞退する教師が増えている。10月9日、与党「国民の力」のチョン・ソングク議員が教育部(日本の省庁に相当)から受け取った「国公立教員担任交代現況」と題する資料によると、教師本人が望んで学期の途中に担任を辞退するケースがここ3年で2倍以上に増えた。2020年の54人を皮切りに、21年に90人、22年に118人、昨年は124人が自ら担任を辞めていった。続いて今年に入って7月までに担任を任されていた55人の教師が自主的に入れ替わった。保護者の要請で担任の座を退いた教師も20年の17人から昨年は79人へと増えた。このように昨年1年間だけで全国の小、中、高校で入れ替わった担任教師の人数は計203人となった。22年(206人)に次いで、2年連続で200人を超えた。20年(71人)と比べると3倍に増えた計算だ。

 昨年の担任交代はそのほとんどが小学校で発生した。交代した担任の61%(125人)が小学校の教師だった。中学校は18%(36人)、高校は21%(42人)だった。学校では、担任が変わる際に人事諮問委員会で議論して、期間制の教師を新たに採用したり教科専門の教師に任せたりする。中学の場合は、当該クラスの副担任やそのクラスで教科を教えている教師などが候補となる。

 教員団体は、教権侵害などに伴う教師たちの意欲喪失を、担任交代が増加する原因と指摘する。業務上の負担は大きいが、担任に対する手当は少なく、保護者が学校での生活に過度に介入するケースが多いためだ。もともと教師たち、特に担任をほぼ必然的に任されてきた小学校の教師たちの間で担任を引き受けるということは、生徒数十人の学業や生活態度、価値観の形成など全般を指導し世話するという責任が伴うことから、一種のプライドと見なされてきた。34年にわたって小学校教師として活躍している50代のイさんは「教師になったばかりのころは、校内事情などで担任を引き受けられないことがあれば、腹が立って一日中泣いていた」とし「しかし、最近の教師たちは互いに担任を引き受けまいとしている」と話す。

 小学校教師として23年の経歴を持つハンさんは「宿題をしてこなかった子どもたちに休み時間に宿題をさせながら、『子どもたちの休み時間を奪って無理やり課題をさせたとして、児童虐待で告発されるのではないか』という恐怖に襲われる」と語った。教室の後ろで口論している女子生徒たちに担任が教室の前の離れた所から「心の優しい人たちは友人と争ったりしません」と繰り返し叫んだという笑うに笑えないケースもある。争いごとを近くで止めたり叱ったりすると、児童虐待として通報されかねないためだ。実際に小学校教師のBさんは「生徒からのあいさつにきちんと応対しなかった」とし、児童虐待の容疑で警察に通報された。

 教師労働組合連盟の関係者は「保護者が直接教師に暴言などを浴びせることがないように、中間段階として教師と保護者の間に苦情を担当する専門部署を設置することで教師を保護する案を、優先課題として検討すべき」と話した。

キム・ギョンウン記者

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