▲イラスト=梁仁星(ヤン・インソン)

 韓国警察庁が、韓国国内各地の警察関連施設にある、中国製などハッキングの脅威に対して脆弱(ぜいじゃく)な監視カメラ667台を、交換する方針を立てたことが、10月10日に分かった。産業スパイを摘発する産業技術安保捜査隊など警察内部の各種主要施設に中国製監視カメラが設置されている事実を、遅まきながら把握したからだ。こうした中国製監視カメラは、韓国各地の自治体や公共機関に最近3年間で計1万5000台ほど設置されたことも判明した。

 進歩(革新)系の最大野党「共に民主党」に所属する朴貞炫(パク・チョンヒョン)議員のオフィスに韓国警察庁が提出した資料によると、同庁をはじめ市・道警察庁合わせて18カ所と中央警察学校に中国製監視カメラ760台が設置されている。京畿南部庁が177台で最も多く、産業スパイを取り締まる産業技術安保捜査隊のオフィスでも中国製監視カメラを運用している。光州警察庁でスパイ・利敵事犯を捜査する安保捜査隊にも中国製監視カメラがある。

 韓国警察が運用している中国製監視カメラは、中国・杭州に本社を置く「大華」製のものが590台で最も多いことが分かった。同社は中国政府が株式を保有している。保守系与党「国民の力」に所属する朴沖綣(パク・チュングォン)議員のオフィスの資料によると、最近3年間で大華製の監視カメラは警察だけでなく韓国土地住宅公社(4059台)、港湾公社(358台)、韓国道路公社(348台)はじめ公共機関と79の自治体に計1万4495台が設置された。一部の機関は、こうした事実を後になって知り、交換作業に着手している状況だ。

 警察関係者は「警察が運用している監視カメラは独立ネットワークで運用されており、外部からのハッキングの可能性はほとんどない」としつつ「予防的な観点から全て交換することを推進する」と述べた。実際に最近、中国製のIPカメラを通して内密な私生活の動画が中国側へ大量に流出している事実も明らかになった。10月10日に行われた国会科学技術情報通信委員会の国政監査でも「中国がカメラだけでなくWi-Fiハブなどの装置をハッキングして国家機密などを組織的に奪取することもあり得る」という懸念が提起された。

 韓国警察が運用する監視カメラの大部分が中国製である理由は、「中小企業製品購買促進および販路支援法」のせいだ。中小企業振興を図るという趣旨だが、技術力や資金力に劣る中小企業は安い中国製を「商標すり替え」して韓国製と称するケースが多い。それにもかかわらず同法のせいで、韓国警察庁など公共機関は中小企業間公開入札で中国製品の納品を事実上強制されてしまう立場にある。

 実際、調達庁の公告を見ると、監視カメラ製品は2万999点あるが、韓国情報通信技術協会のセキュリティー認証を受けた製品は736点(3.5%)に過ぎない。中国製監視カメラの大部分は100万ウォン(現在のレートで約11万円)前後で、協会の認証を受けた監視カメラの価格の半分という水準だ。

 中国は2017年に反体制派の人物に対する情報機関の盗聴・監視および調査権限を大幅に強化する内容の国家情報法を電撃施行した。西側では、中国企業が自国製品に情報を盗み出す装置を取り付けておいて、後でこれを活性化させかねないという可能性を提起してきた。主要各国は情報セキュリティーを理由に、中国製の映像保安装備に対する規制を強化している。

 米国のバイデン政権は2022年、中国製映像保安装備の輸入を全面禁止した。英国・オーストラリアなども主な国家施設から中国製の映像装備を撤去する措置を取った。韓国でも、軍部隊に設置された防犯カメラおよそ1300台が中国製であることを確認し、順次撤去することとした。

チュ・ヒョンシク記者

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