▲ベトナムの大型スーパーに陳列されている多彩なコーラ/ホーチミン=李美智記者

 ベトナムでとりわけおいしいと感じる物があります。「炭酸飲料」もその一つです。大型スーパーを訪れると、韓国より種類が多いコーラ売り場に驚かされます。缶コーラも内容量やボトルの形がさまざまで、ライト、ゼロ、オリジナルなどの商品が売られています。韓国では主に缶コーヒーに使われる形の缶に入ったコーラもあります。330ミリリットル入りコーラ1缶の価格は500~600ウォン(55~66円)ほどと安い上、セールの際には390ミリリットルのミニペットボトルが350ウォンほどでも買うことができます。文字通り「水のように」飲めるんです。

 エナジードリンクが人気なのもベトナムの特徴です。 中でも「スティング」はベトナムの若者たちが好むエナジードリンクです。 黄色のバージョンもありますが、イチゴ味の赤が一番おいしいです。蛍光色のような真っ赤な色が刺激的ですが、ロゴの下に描かれている「4年根紅参」のイラストのせいか、飲むとすぐに力が湧くような気がします。本当はドリンクに含まれる炭水化物、ナトリウム、カフェイン、タウリン、そして高いカロリーが力を出してくれるのでしょうが。

 ベトナムでは大型スーパーやコンビニはもちろん、飲食店や屋台でも「レッドブル」や「ウォーリアー」「リポビタン」などのエナジードリンクが簡単に見つかります。スポーツドリンクも豊富です。ポカリスエットのようなイオン飲料に微炭酸が入ったアクエリアスは暑い夏に喉の渇きを解消するのに最適です。

 炭酸飲料天国であるベトナムでは今、「砂糖税」導入の是非を巡る議論が行われています。 2014年に一度は反対に直面して見送られたものの、今回は本当に導入するというのです。ベトナムは肥満人口が少ない「スリムな国」の代表格なのに、なぜ砂糖税の導入を目指すのでしょうか。

■砂糖の国ベトナム

 ベトナム財政省が今年法制化を目指している「特別消費税法改正案」によると、100ミリリットル当たり5グラム以上の糖を含む飲料は10%の特別消費税の課税対象になります。国民があまりにも多くの砂糖を摂取することが懸念されているからです。

 実際にベトナム人は砂糖をたくさん食べます。ベトナムは牛乳にも砂糖を入れて売る国。パックに入った大きな牛乳を買うときも、砂糖入りか無糖かを確認しなければいけません。スーパーで買ってきた牛乳をコップに注いだら甘かった時の戸惑いを今でも覚えています。 (もちろん、今回の改正案では牛乳が対象から除外されています。)

 路上で売っているフルーツジュースだけでなく、フォー(ライスヌードル)に加えたり、チャーゾー(揚げ春巻き)などにつけたりするヌックマム(魚醤)にも砂糖がたっぷり入っています。値段が400~500ウォンしかしない炭酸飲料もよく飲むものだから、 ベトナム人の1日当たり砂糖摂取量は平均46.5グラムで、世界保健機関(WHO)の推奨摂取量(25グラム)の2倍に迫ります。1人当たり清涼飲料水消費量は2002年の6.6リットルから2022年には49.54リットルに増えました。今後もその傾向は続き、2027年には55.7リットルまで増加すると予想されています。

 しかし、ベトナムは世界で4番目にスリムな国です。 2023年現在のベトナムの肥満率(BMI指数30以上の人口の割合)は1.97%。これより肥満率が低い国はエチオピア、東ティモール、ルワンダだけです。ちなみにアメリカの肥満率は41.64%、韓国は8.82%でした。

 甘い物を食べながらスリムになれたらどんなに素晴らしいことでしょうか。砂糖を食べてもスリムなベトナム人にはダイエット法があるのでしょうか。実際ベトナム人の食習慣を見てみると、砂糖は暑いベトナムで短時間でエネルギーを補給する手段であることは明らかです。醤油で炒めた野菜や数切れの肉とご飯一杯、あるいは一碗のフォーで食事を済ませ、力仕事をしなければならない肉体労働者には甘い砂糖とカフェインが必要にならざるを得ないのです。

■砂糖と決別する決心

 では、ベトナム政府はなぜ砂糖税を徴収しようとしているのでしょうか。税金を取り立てる口実に過ぎないでしょうか。児童の肥満率統計を見ると、その理由が分かります。

 ベトナムの児童肥満率は6.1%196位だった成人肥満率とは違い、順位は137位に上昇します。フランス、日本、オランダ、デンマーク、フィリピンの児童肥満率より高い数値です。韓国も児童肥満率は13.89%と高水準にあります。ベトナム保健省によると、2020年時点で過体重のベトナム児童は19%で、10年前よりも10.5ポイント増加しました。

 500ミリリットルにティースプーン20個分の砂糖(100グラム)が入るタピオカティーのような甘い飲み物が流行し、フォーやチャーハンのような伝統料理よりもピザ、ハンバーガー、チキンのような外国料理をたくさん食べるようになったことも影響しています。

 ホーチミン市やハノイ市のような大都市の場合、学校の3分の1以上の生徒が肥満だったそうです。太りすぎの5歳未満の子どもの割合は、ホーチミン市とハノイ市でそれぞれ20%、16%に達しました。

 ベトナムでも過去にはぽっちゃりしていることを「健康だ」と認識していました。特に祖父母が子育てを引き受けることが多いベトナムで「よく食べること」は孫たちができる最高の親孝行でもありました。

 しかし、今は砂糖と決別すべき時です。国連児童基金(ユニセフ)が「政府による適切な介入がなければ2030年までにベトナムの肥満児童数は約190万人に達する」と警告する事態になったからです。過去のように幼い子どもたちが家事を手伝うケースも減り、登下校にも両親のバイクを使うベトナムの学生たちは運動量が少ないという指摘も出ています。

 砂糖税は2014年にも一度推進された政策で、業界の反対で失敗に終わりました。今回も企業が反発しています。ベトナム酒類協会は「加糖飲料に特別消費税を徴収することは、肥満の解決ではなく、差別的な課税体系をつくるだけだ」とし、2025年以降に施行を議論しようと提案しています。経済学者も「肥満と税金の関係に対する研究がもっと必要だ」との意見です。このため「税収確保のための口実にすぎない」という疑いも完全には消えていません。

 砂糖税に検討する国はベトナムだけではありません。WHOによると、2022年以前は全世界で肥満児童より低体重児童が多かったが、コロナを経て肥満児童がさらに増えたと見込まれます。肥満、特に児童たちの過体重を悩む国が増え、学校から加糖飲料が締め出されています。砂糖税あるいは肥満税を導入している国は85カ国にもなります。アメリカのバーガーキングは2016年からキッズセットメニューから炭酸飲料を除外しています。英国政府は2018年に初めて砂糖税を導入し、フランスも2011年からコーラなどの炭酸飲料に肥満税を課しています。ベトナム政府が今回こそは肥満撲滅に刀を振り上げることができるのでしょうか。大好きな飲み物が10%値上がりするかどうか心配ですが、出費のことも考えて、飲み物の摂取を少し減らすべきでしょう。

李美智(イ・ミジ)記者

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