▲10日、ソウル市内の大型書店「教保文庫」光化門店。今年のノーベル文学賞を受賞した韓国人小説家・韓江(ハン・ガン)氏の本が並べられていた。写真=news 1

 韓国人小説家・韓江(ハン・ガン)氏のノーベル文学賞受賞に、韓国の文学界からは「むしろ遅すぎたくらいだ」という反応が出ている。その一方で、常に世界の文学界の辺境にとどまっていた韓国の文学が遅ればせながら認められたことについて、喜びを惜しみなく表現する声もある。文学評論家の金炳翼(キム・ビョンイク)氏は「毎年、他の国に賞が行くたびに残念に思っていた。遅くなったが、お祝いすべきことだ。これまでは韓国語が地域的な限界を脱することができなかったとすれば、今は韓国文学のレベルの高さを世界が認識するようになったと言えるだろう」と述べた。

 同じく文学評論家の金華栄(キム・ファヨン)氏は「今回こそ韓国人が受賞すると予想していた。ここ4-5年間、BTS(防弾少年団)をはじめ、映画や料理も、あらゆる関心が韓国に注がれ、(ノーベル文学賞の選考委員会を兼ねる)スウェーデン・アカデミーも韓国に注目せざるを得なかったのだろう」と言った。

 文学評論家らは韓江氏の芸術性と歴史性を合わせ持つ作品の世界に賛辞を送った。文学評論家カン・ドンホ氏は「韓江氏は小説においても詩を書くように高度に繊細かつ密度の高い文章を駆使している。また、韓国社会が経験してきた歴史的悲劇を取り上げる感覚も優れている」と語った。

 文学評論家カン・ジヒ氏は「ノーベル文学賞は政治的な性格を帯びている面がある。光州民主化運動(光州事件)を取り上げた『少年が来る』や、済州島4・3事件を取り上げた『別れを告げない』は韓国現代史における残酷な暴力を形象化した作品だ。こうした部分を重要視したのだろう」と分析した。また、「『菜食主義者』や『ギリシャ語の時間』は美学的実験を通じて人生に対する根源的な問いを投げかけた作品で、こうした両面を兼ね備えた作家だと評価されたのだろう」とも言った。

 文学評論家キム・テソン氏は「海外の作家のほとんどが年を取ってからノーベル文学賞を受賞しているのに対して、年齢が比較的若い女性作家でノーベル文学賞を受賞したのは素晴らしい業績だ」と祝意を表した。そして、「韓国文学を通じ、既得権益を持つ主流の言語ではなく、押さえ付けられてきた少数者の声が広がったものと解釈できる」と言った。

 これまで地道に韓国文学を海外に広めてきた翻訳家たちや韓国文学翻訳院の功労も高く評価されている。文学評論家でもあるシン・スジョン明知大学教授は「韓国翻訳界の努力がこのような結果をもたらした。今後、国家レベルで韓国文学の翻訳に対する支援を増やすべきだ。これまでは韓国文学を海外にどのように送り出すかについてだけ話してきたが、これからは韓国文学を高水準で翻訳し、海外に送り出せる翻訳家の養成にさらに力を入れる必要がある」と提案した。

 評論家カン・ドンホ氏も「韓国文学を世界に広めるための翻訳インフラも一役買った。見えない所で積み上げられてきたものが光を放ち始めた。大山文化財団や韓国文学翻訳院などが素晴らしい翻訳家を養成し、良い作品を選定して国際的な場で十分に読まれる作品を紹介する作業を続けてきた」と評価した。

 これらの評論家たちは、韓江氏のノーベル文学賞受賞が文壇全体に与える波及効果も大きいとみている。カン・ドンホ氏は「今や韓国文学も単に世界文学の周辺部にとどまっているのではなく、堂々とした一員になりつつある。今回のノーベル文学賞受賞を契機に、韓国文学は世界市場で再評価され、新たな局面を迎えるだろう」と述べた。

 金華栄氏は「Kポップや映画・ドラマといったポップカルチャーに続き、韓国の文学や歴史も深くまで見るようになることで、韓国がどのような国なのかをあらためて見つめ直す契機になるだろう」と展望した。

ペク・スジン記者、キム・グァンジン記者

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