【新刊】マックス・ウォレス著、チャン・サンミ訳『ヘレン・ケラー 奇跡に隠された社会運動家の政治の歴程』(アルテ刊)

 「ヘレン・ケラーは特権層の白人に過ぎない」。2020年12月、アフリカ系の障害者権利運動家のアニタ・キャメロンが米タイム誌のインタビューで行った発言は、米国政界を騒然とさせた。当時、共和党の上院議員テッド・クルーズ、ドナルド・トランプ・ジュニアなどは直ちに反発した。「左派が狂った。白人だという理由でケラーという非凡な人物を放り捨てるとは」

 本書は、ヘレン・ケラー(1880-1968)を「視覚、聴覚、言語の三重障害を克服した人間神話」としてのみ記憶する固定観念を幾度も打ち破る。カナダの障害者人権活動家である著者が注目したヘレン・ケラーの本当の姿は、障害者の人権、反戦、女性参政権、人種差別などに積極的に関わった「ラディカルな運動家」。ヘレン・ケラーは1950年代末、非常に多くの政治的な脅しにもひるむことなく、ネルソン・マンデラが率いていた南アフリカ共和国人種差別撤廃運動を支持した。ヘレン・ケラーが20代前半で社会党に入党し、ソ連のボルシェビキ政権とレーニンを公に支持したことを批判していた右派陣営すら、彼女を「米国の左派運動における非凡な主役」と認めていた。

 ヘレン・ケラーを称賛するだけの本ではない。1915年に米国で起きた優生学論争のとき、一時は賛成していたヘレン・ケラーの物議を醸す一面も立体的に取り上げた評伝だ。592ページ、4万4000ウォン(約4700円)

ユン・スジョン記者

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