▲釜山市機張郡にある古里原発の全景/韓国水力原子力

 文在寅(ムン・ジェイン)前政権の「脱原発政策」によって、韓国では原発が相次いで稼働を中断している。昨年4月の古里2号機に続き、28日には古里3号機が運営許可満了で稼働を中断した。脱原発を掲げた前政権が原発10基の閉鎖を推進し、1基当たり数年かかる延長手続きを中断した影響だ。

 「脱原発政策廃棄」を掲げた尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が発足し、チェコでの原発建設優先交渉対象者選定、新ハンウル3、4号機の工事再開など韓国は「脱・脱原発」に急いでいるが、脱原発の5年間、相当数の原発関連許認可と手続きなどがストップしてしまい、それを一度に解決するのは困難との指摘が出ている。

 AI(人工知能)の普及に伴う電力需要急増を控え、各国が新規原発の建設を急ぐ中で、韓国は逆に正常に稼働していた原発を止めているという批判が高まっている。35年間、脱原発政策を続けてきたイタリアは今年7月、原発再導入を宣言し、スイスも今年8月、新規原発容認法案を推進し、「脱・脱原発」に乗り出している。

 尹錫悦政権は2022年5月、大統領職引き継ぎ委員会が示した国政課題の時点から前政権が閉鎖を決めた原発10基を引き続き稼働する方針を表明した。AI、データセンター、電気自動車(EV)の普及などで電力需要が急増する中、原発の許可期間を従来の40年前後から70~80年に延長するのが世界的な傾向となっている点などを考慮した。

 しかし、前政権で5年間続いた脱原発政策は、今もスムーズな許可延長を妨げている。古里2号機と古里3号機がいずれも稼働を中断したほか、2029年までに稼動年限が満了し稼働を中断しなければならない原発は10基に達する。原発が相次いでストップし、電力不足への懸念が高まり、原発の代わりにコストが高い液化天然ガス(LNG)火力発電を行うことで生じる損失は数兆ウォンに達する見通しだ。原発が一つまた一つと消えることで、電力需給が危機を迎えかねないとの指摘も出ている。

■古里2号機以降、毎年1-2基が稼働中断

 韓国水力原子力は9月28日、釜山市機張郡にある古里3号機で原子炉の稼働を中断するための手続きに入った。発電容量950メガワットの古里3号機は1984年9月29日、40年間の運営許可を受け、翌年9月30日から稼働を開始し、28日で運営許可が満了した。この40年間、釜山市民全体の13年間分の電力需要に相当する2840億キロワット時の電力を生産してきたが、許可満了でストップしたのだ。

 こうした理由で原発が稼働を中断したのは、昨年4月の古里2号機に続き1年半ぶりだ。古里2・3号機以外にも来年8月と12月にそれぞれ古里4号機、ハンビッ1号機、2026年9月と11月にそれぞれハンビッ2号機と月城2号機が稼働を中断する。昨年から2029年まで稼動年限が満了する原発は10基、発電容量は合計8450メガワットに達する。

 前政権はこれら原発10基を「老朽原発」と規定し、廃炉を推進して再稼働を阻んだ。稼動年限満了の2~5年前の段階で韓水原は安全性評価報告書を提出し、稼働延長手続きを踏まなければならないが、脱原発政権下では関連作業が遅々として進まなかった。大統領選が終わった2022年4月、許可満了を1年後を控えてようやく古里2号機に対する延長手続きが始まった。

 古里2号機は延長手続き開始から2年半、稼働中断から1年半が過ぎたが、まだ許可が下りていない。原発業界関係者は「工事再開の是非を巡り関心が集まった新ハンウル3・4号機の建設許可が9月12日にようやく下りたぐらいだ。当初今年上半期には古里2号機延長が決まり、来年には再稼動できるとみていたが、それさえも不透明だ」と話した。韓水原は古里2号機は来年6月、古里3・4号機は2026年6月の再稼働を目標にしているが、現状ではさらに遅延するとの見方が有力だ。

■2027年まで5年間に損失5兆ウォン

 正常な原発が次々と停止することで生じる損失は、古里2号機がストップした昨年から2027年までの5年間で5兆ウォンに達する見通しだ。発電単価が安い原発を稼働できない代わりに、高価なLNG発電を行うことで余計にかかる費用を韓水原が試算した結果だ。稼働を中断する原発1基当たり1兆ウォンという計算だ。この数字も韓水原の目標通りに原発を再稼働できることを想定したものであり、実際の損失規模はさらに膨らむという観測が出ている。

 既存の原発の許可延長が遅れ、AI普及に伴う電力需要の拡大にもタイムリーに対応するのは難しいとの懸念が高まっている。現政権の任期中に新ハンウル1・2号機、セウル3・4号機(旧新古里5・6号機)という新型原発4基(5600メガワット)が稼働を開始するが、同じ期間に停止する6基(5150メガワット)のうち1基も延長許可を受けられなければ、発電容量の純増分は450メガワットにとどまる。

 檀国大のムン・ジュヒョン教授は「許可を出す原子力安全委員会や事業者である韓国水力原子力がもっと積極的に問題解決に取り組むべきだ。互いに責任を転嫁しており、タイムリーな許可延長がにできなかった際には、電力需給などに及ぼす悪影響は予想より大きいだろう」と話した。

趙宰希(チョ・ジェヒ)記者

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