▲北京郊外にある労働者向け宿泊所の庭に干されたTシャツ。「青年奮闘」と書かれている。/北京=李伐チャン特派員

 北京郊外の馬駒橋人力(人材)市場から大通り沿いに500メートル歩いていくと、日雇い労働者たちの宿泊所がある「日貰村」が見えてくる。4人部屋で1泊わずか20元(約410円)。就職難の中国で、最近この場所で暮らす若者たちがいる。今月初めに訪れたある宿泊所の庭には、洗濯物を干すロープに「青年奮闘」と書かれたTシャツが掛かっていた。希望の痕跡を見つけたような気がして宿泊所のオーナーに「若者たちにはまだ闘志が残っているようですね」と話し掛けた。すると、返ってきたのは「蜜雪冰城(MIXUE、激安タピオカミルクティーのチェーン店)のアルバイトの制服ですよ」という答えだった。

 中国の経済危機によって最も大きな犠牲を強いられているのは「00後(リンリンホウ、2000年以降に生まれた20代)」ではないだろうか。不動産市場や消費の低迷、地方政府の債務や過剰生産など、問題が複合的に絡み合い、若者たちの未来に暗雲が立ち込めた。経済成長が鈍化した影響で雇用が減少した。その上、中国では今夏、大学卒業生が史上最多となる1179万人に達し、コロナ禍の間に増え続けた失業者たちも就職市場にあふれ、青年失業率は18%(今年8月現在、在学生は除外)を突破した。

 北京で出会った中国の大学生たちは「両親が大切に育ててくれたのに『爛尾娃(就職に失敗して売れ残った子ども)』に転落してしまい申し訳ない」とため息をついた。大都市の若者たちは就職先を求めて中・小都市へと向かい、有能であるにもかかわらず安い賃金で仕事を得ようとする。中国の臨時労働者の50%が25歳以下(昨年11月、求人サイト「智聯招聘」による集計)だという統計も示されている。

 「中国の持続可能な発展のために、特定の世代の犠牲は避けられない」という言葉を最近聞いたことがある。中国の政財界で顔の広い人物の言葉だが、この人物の頭の中で「中国」は5000年生き続ける生き物だった。大局的に見れば、米国による対中圧力への対応と長期的な内部安定のために、目先の経済回復よりも「技術のブレイクスルー」「国家安全保障」に国力を集中させるべきだという論理だ。その論理だと、若者たちの苦しみは、巨大な竜が生き延びるためにもがく過程でできるかすり傷と見なされる。

 中国のSNSでは「若者たちはどんなに殴られても『風平浪静(静かに黙っている)』だ」という自嘲まじりの書き込みも見られる。これについて、北京で出会った20代の大学生は「静かにしている以外に方法がない。ネットでカネを借りて別の借金の返済に充て、親に頼って暮らすしかないから」と話した。監視カメラとインターネットの検閲で常に厳しく監視され、愛国主義教育が十分に行われている国では、反抗すらままならない。

 とはいえ、若者たちが元気を失えば、目先の経済成長だけでなく未来まで担保に取られるという悪循環に陥るのではないだろうか。中国の北京商務中心区、国貿にあるショッピング施設「世貿天階」はかつて若者たちで賑わっていたが、今では多くの店が閉店し、メリーゴーラウンドは撤去された。この寒々しい光景は、若者たちのうめき声とともに冷え込んでいく中国経済を象徴しているようだ。

北京=李伐チャン(イ・ボルチャン)特派員

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