▲イラスト=UTOIMAGE

 南アフリカにある白人所有の農場に、廃棄された食品を拾うために入った黒人女性2人が、農場主と農場管理人に銃で撃たれて死亡する事件が発生した。しかも、農場関係者らが犯行の過程で黒人女性の遺体をブタ小屋に捨てていたことが明らかになり、南アフリカの黒人と白人間における人種間対立にまで広がっている。米誌ニューヨーク・タイムズ(NYT)や英BBCなどが2日(現地時間)に報道した。

 報道によると、8月17日、ヨハネスブルグ北東のリンポポ州ポロクアネ近くのある農場で、マリア・マクガトさん(44)とロカディア・ヌロブさん(35)が銃で撃たれて死亡したとのことだ。

 銃を撃ったのは農場主のザカリア・ヨハネス・オリビエ被告(60)と農場管理人のアンドリアン・ルドルフ・ドゥ・ウェト被告(19)で、共に白人だった。2人は「農場の敷地に入ってきた不法侵入者を銃で撃った」と主張した。マクガトさんの夫も同日、一緒に農場の塀を越えて銃で撃たれたが、逃げて助かった。

 夫からの通報を受けた警察が数日後、その農場を訪れた時、黒人女性2人の遺体はブタ小屋で発見された。遺体は腐敗が進んでいたが、ブタがその一部を食べて損壊された状態だった。 捜査の過程で、この農場に勤める黒人ウィリアム・ムソラ被告(45)が死体遺棄の過程に関与していたことが明らかになり、追加で立件された。

 死亡した黒人女性たちは、賞味期限が切れたり、賞味期限が迫っていたりして廃棄された農産物・乳製品などの中から食べられる物を見つけようと、この農場にひそかに侵入していたことが分かった。南アフリカの農場では、それらをブタのエサとして利用するために集めているが、これを盗んで食べる黒人の貧しい人々も少なくないという。

 今回の事件に南アフリカ社会は憤りを隠せない。人々は裁判所の前でデモを行い、政治家たちは怒りに満ちた声明を発表した。マクガトさんの息子は「母は子どもたちに食べさせられるものを探していただけだ。その命がなぜこのように無惨に断たれたのか、想像もできない」と訴えた。被告らは現在拘束されており、裁判所は保釈審理を11月6日まで延期した。

 NYTは「今回の事件が南アフリカの慢性的な問題である人種と性別に基づいた暴力や、流血事態にもたびたびつながる白人商業農場主と黒人たちの間の対立を巡る論争を招いている」と指摘した。

 1994年まで続いたアパルトヘイト(人種隔離)期間中、多くの黒人は土地の所有権を強制的に奪われ、南アフリカでは依然として大部分の主な商業農場が白人所有のままになっている。

 農村地域で暮らす黒人の多くは依然として貧しい生活を送っており、食べ物を求めて農場のゴミの山をあさらなければならない。その一方で、白人の農業従事者の多くが繰り返し侵入被害を受けており、これによって脅威を感じてきたという反論もある。

 農民保護運動を提唱している黒人運動家ペトルス・シト氏は「南アフリカでの農民の暮らしは100%危険にさらされている」として、政府が特に白人農民保護措置を十分にしていないと指摘した。同氏は、だからといって人々を攻撃したり殺したりしてはならないとした上で、「すべての白人の農民が今回の事件の容疑者と同じではない」と述べた。

キム・ミョンジン記者

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