▲グラフィック=宋允慧(ソン・ユンへ)

 4カ月前、中国の造船所で停泊中に沈没したと推定される潜水艦が、中国の開発していた最新鋭の原子力潜水艦(SSN)であることが確認されたという。米ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)が9月26日に米当局者の話を引用して報じた。米国ワシントンのシンクタンク「ヘリテージ財団」のブレント・サドラー上級研究員は「今回の事故が中国の原潜艦隊拡張計画にブレーキをかけることもあり得る」と語った。SSNは小型の原子炉を動力として動くもので、弾道ミサイル原潜(SSBN)と違って核兵器の搭載はできない。しかし、25ノット(時速およそ46キロ)以上の高速で長時間航行して水中攻撃を展開できるので脅威だ。このSSNは中国が独自に設定した海上防衛線である「第1列島線」を掌握するために開発したものと推定される、と各外信は伝えた。中国が今回の事故について口をつぐんでいる中、中国が構築してきた原潜戦力の実体に対する関心が高まっている。

 WSJ紙によると、中国・武漢市の武昌にある国営造船所で建造されていた潜水艦が今年5月末、出港を前に装備を整えている場面が衛星写真で観察された。しかし沈没事故が起きた直後とみられる6月初めには、大型のクレーン船がこの場所に到着し、潜水艦を引き揚げる場面がキャッチされた。沈没した潜水艦は、中国が米国の原潜戦力に追い付くため開発した最新型SSN「周級」であることが把握されたという。中国海軍は原潜の等級に昔の王朝の名前を付けている。

 沈没した潜水艦は、旧型とは異なり、機動力の向上のために艦尾が「X字」型になっていると推定された。WSJ紙は米当局者の話を引用して「沈没当時、核燃料を積んでいた可能性が高い」と伝えた。米攻防総省は、この報道を確認しつつも、潜水艦が核燃料を積んでいたかどうかについては明らかでないとした。中国政府は、武昌の造船所で潜水艦が沈没したという報道に対して立場を表明していない。

 一部では、沈没した潜水艦が開発中といわれていた隋級と同じモデルである可能性も提起されている。チェ・イル潜水艦研究所長(予備役海軍大領〈大佐に相当〉)は本紙の取材に対し「米情報機関は『沈没した潜水艦は周級』と判断したものとみられるが、根拠は公表されておらず、沈没場所と目される造船所もディーゼル潜水艦を主に建造してきたところ」だとし「(中国のソーシャルメディアなどで一部公開された)隋級の可能性もある」と語った。

 中国は1970年代から原潜開発に参入したが、最近は遠洋戦力の拡張のため原潜開発をスピードアップし、それに伴って事故が発生した可能性もある。中国は北東アジア初の原潜保有国だ。「中国原潜の父」と呼ばれるロシア留学派の原子力専門家・彭士禄が1958年、中国政府の承認を得て原潜プロジェクトを開始した。翌年、毛沢東が指導部の会議で「原潜は1万年かかってもぜひとも作り出せ」と号令をかけた。74年に中国初の原潜「長征1号」(漢級)が海軍に配備された。排水量5500トン級で、2013年に退役するまで事実上、中国の海洋戦力の主軸だった。しかしこの潜水艦は、西側の通常動力潜水艦より騒音が30-40デシベルほど大きい140デシベルに達し、「水中トラクター」という屈辱的な別名を付けられた。04年10月には漢級潜水艦が日本の領海に入って位置が発覚し、米海軍と日本の海上自衛隊によって1カ月間追い回されるという事件まで起きた。

 1980年代まで中国は、原潜の「品ぞろえ」にまずは集中した。87年に中国初のSSBN「夏級」を公開した。潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を搭載できるSSBNは、米国でも「核の3本柱」の一つに挙げられる戦略兵器なので、世界の注目を集めた。しかし夏級は「世界で最も騒々しいSSBN」と評され、原子炉などにも問題があり、最大4隻作られたものの中国の海域を離れることはほぼできなかったという。しかし夏級は中国の原潜開発技術の発展の足場となり、現在の中国の主力SSBN「晋級」が2007年に就役することになった。少なくとも6隻を運用中といわれる晋級は、排水量が夏級より4割多い1万1000トンで、騒音の問題も大幅に改善された。

 2000年代に入ると、米国を緊張させるほどに中国の新型原潜は優れた機能を備えるようになったという。06年に就役した商級SSNは、先の漢級に比べ騒音が大幅に軽減し、開発中の周級は米バージニア級SSNと外形が似ているといわれる。中国軍は、1隻の建造に少なくとも2兆ウォン(約2200億円)ほどかかる原潜の開発に予算を惜しまない。チェ・イル潜水艦研究所長は「中国が絶えず新たなモデルの原潜を開発しているという点に注目すべき」とし「さまざまな開発の試みをする中でミスが発生しているが、原潜の技術水準はもはや恐るべきレベル」と語った。

 最近、インド・太平洋地域で各国が軍備増強に乗り出し、中国がさらに積極的に原潜の確保に乗り出したという見方もある。先に米国・英国と軍事安保同盟「AUKUS」を結成したオーストラリアは昨年、米国からバージニア級SSN5隻を購入することとしたが、オーストラリアが実際に保有することになれば米国とロシア、中国、英国、フランスに続いて6番目の原子力潜水艦保有国になる。昨年、米国防総省の報告書は「中国が台湾を支援する米国などをけん制し、日本・台湾・フィリピンに対抗して海上優位を確保するため、原潜など軍事力の拡大に積極的」だと分析した。米シンクタンク「戦略予算評価センター(CSBA)」は、中国が2030年までに原潜の保有数を少なくとも10隻に増やすと予想した。

北京=李伐飡(イ・ボルチャン)特派員

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